CMコピーで浮き沈み

MJI-style.gif
▲嗚呼、悲喜こもごものMJI-style


そういえば。
昨日のBLOGで話題にした日産ウィングロードだが、CMのキャッチコピーで浮き沈みを経験した珍しい車種だ。
その輝かしき記録を晒し振り返ってみよう。

まず、クルマ全般のモデルサイクルをここで簡単に説明しておこう。
通常、基幹車種(そのメーカーの戦略的位置づけの車種。カローラとかね)は、おおよそ4年~6年ぐらいでフルモデルチェンジ(FMC)を行う。
クルマの進化は早いので、そのぐらいのサイクルで新しいクルマをリリースしていかないと市場性を保てないというのが大きな理由になっている。
その4~6年の間、同じモデルを出し続けていくと飽きられるということもあり、大体半分ぐらいの期間を経過すると、マイナーチェンジ(MC)と呼ばれる改良を施す。
これは車両の骨格や主な外観はそのままに、フロントマスクやリアエンドのデザインを刷新したり、内装の質感をアップしたりすることで欠点を是正したり商品力を高めることを目的としている。(もちろん、密かにコストダウンを行って利益が出やすい構造に変えるケースもある)

で、このウィングロードという車種。
1999年にFMCして登場した2代目ウィングロード(前期型)は、CMのコピーに

無理しない・自分らしく・いま遊びたい

の頭文字をとって、

MJI-style



というキャッチコピーで広告展開をしていた。
MJI-styleのコピーで登場した前期型

これは、クルマのターゲットをアクティブに活動する若い世代向けに設定してアピールすることを目的にしていたのだが、どうもこれが不発に終わった。
今でこそ、X-TRAILでX-sportsなどとコラボレーションをうまく展開している日産だが、この頃はとにかく何をやってもダメな状況だった。
(ちょうどこの年にルノーよりカルロス・ゴーンが日産にやってきた)

で、実売もあまり伸びずに、このまま市場から消えていくと思われていた前期型ウィングロードだったのだが、車種のリストラと財務体質の改善を行うゴーン体制の中で、なんとか商品力をアップさせるための努力がされていた。
そして、2年後の2001年秋にMCとして発表されたのが、後期型のウィングロードだ。
The Metal Toy.(メタルのオモチャ)のコピーを採用した後期型

このMCのコンセプトは、全体をメタル調にすることで、質感を高めて高級なイメージを与えることに成功した。
ここでポイントになるのは、メッキではなくて削り出しのメタル調といった質感にしたこと。
ちょうどこの頃のデザイントレンドとして、メタルの質感というのが流行していたというのはあるが、それを低コストでうまく実現したお手並みは見事という他なかった。
また、CMのキャッチコピーに

メタルのオモチャ



という表現を与えたのも秀逸だった。

メタルという高級イメージのあるワードに対して、オモチャというちょっと幼児性を含んだワードを組み合わせることで、当初から狙っていた若い層に見事にアピールすることが出来た。
結果として、ステーションワゴンという衰退するカテゴリにおいて、一人勝ちのカローラワゴンと並んでベストセラーワゴンの座を確保することに成功した。

クルマのメカニズム的には、前期型から大して進化はしておらず、むしろライバル車種に対して劣っている部分が多かった。
しかし、それでも立派なセールスを残したことからも、クルマの売れ行きは単に技術の先進性だけではなく、消費者の嗜好に合わせたアピールの仕方によって簡単に左右されるものでもあることが実証されたわけだ。
これはマーケティング主導によるクルマづくりの成功例と言えるが、やり過ぎると諸刃の剣になるところが恐ろしい。

今の日産のクルマは、全般的にセンスが良く、人気のカテゴリに選択肢がいっぱいある、良くも悪くもトヨタの対抗車としてのイメージが強くなっている。
逆に、シルビアやスカイラインなど旧来の技術の日産のイメージを持つ者は、選択肢がないという理由で他社に流れるケースが多い。
その需要を受け止めているのは、マツダやスバルだったりするわけだ。

クルマが大衆化することでマーケティングもクルマの技術力も重要になってきているが、どこにバランスポイントを設定するかで、会社の将来を左右することにもなりかねない。

財務体質を改善し、世界的な販売を回復させた日産には、過去のユーザを取り戻す努力も平行して行ってもらいたい。
具体的には、走らせて楽しいコンパクトクラスのクルマを復活させること。シルビアとかパルサーといった感じのね。

さて、長々と書いてきたウィングロードのCMコピーだが、新型ウィングロードのコピーは一連の日産のコピーポリシーである「SHIFT_...」に則り

SHIFT_FUNction (The FUNctional WGN)



という表現を用いている。CMを見ると、先代の前期型と同じように、まずは使い方の提案から入ってきたコピーというイメージを受ける。
ちょっとだけだが実車を見てきたところでは、間違いなく良く出来ているクルマだ。
果たして、このコンセプトのCMで客はどこまでついてくるのか?その成否を見守りたい。


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