308ってどうよ?

308
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さて、一晩明けて巷のファーストインプレッションもあらかた出揃ったようなので冷静になって考えてみようか。


■308がアピールしたいことって何なのさ?
今回の308が一番強調したいのは、307からあらゆる面での質感の向上。
これは、200万km以上の実車走行試験なんていう、あんましお目に掛からないアピールポイントからもわかる通り、走らせるクルマとして時間をかけて熟成させてきたことの表れだろう。
クルマの開発において設計に時間をかけるのは当然として、この走行実験にどれだけ時間を掛けたかはクルマの完成度に如実に現れる。
その意味で、308は間違いなく“走らせるクルマとしての完成度は高い”はずだ。

307のベースグレードから30万円もコストがアップしていることについては、質感とのトレードオフと考えればいい。
(装備的には299万の307Griffeと同等なわけだし)

価格を抑えつつ質感を向上させる魔法なんていうものは存在しない。
十分満足いく質感を実現するために必要だったというプジョーの理屈であれば、そう解釈すればいい。
それが受け入れられるかどうかはまた別問題だが。


■価格戦略
ユーロ高に対する恨み言は言うまい。
本国との価格差についてもここでは触れないことにしよう。
純粋に付けられている価格に注目してみよう。

内外を問わず、どんなクルマも廉価グレードというのを大抵用意するもんだ。
たとえその廉価グレードが売れなくても、「最低○○○万円から買えます」というのは宣伝上重要な意味を持つからだ。
「廉価グレードは安いけど、やっぱり装備の充実したグレードが欲しいよね」ってことでミドルグレードを選ぶのが一般的な消費者の行動心理であり、そこには廉価グレードより少しいい買い物をしたという心理的な満足感というものが付随してくる。
高い買い物だからこそ、そういった消費者心理をうまく使って、少しでも高いグレードに誘導すること。これが廉価グレードに与えられた使命になる。
(もちろん、予算の都合で廉価グレードを選ばれても、他車に逃げられるよりは百倍マシだ)

そんなわけだが、308には廉価グレードが存在しない。
ミドルグレードに相当する308Premiumは299万円で、日本においてはこの価格がスタートラインになる。
価格戦略としてみれば、明らかな失敗だ。
例えば、英国のラインナップを例に取ると、308Premiumは英国の308SportとSEというグレードの中間に相当する。
これに対して、搭載エンジンの異なる廉価グレードに308Sというグレードがあり、1.4Lの5ドア&MTであれば約40万円も安くなる。
このSというグレードを日本に持ってくれば、単純計算でも約250万の廉価グレードを設定することができる。
廉価グレードはATである必要はない。
その選択肢があるということだけで十分だ。
(GTiまで必要としないMT志向の消費者には十分リーチできるだろう)

欧州でもライバル関係にあるVWゴルフにおいても、同等の価格戦略を取っている。
なんたって、ゴルフEは6ATであるにも関わらず242万円で買える。
308Premiumの実質的な競合になるのはTSI+DSGモデルであるTSIコンフォートライン(289万)であり、308Premiumの299万は本当の意味での競合とはそれほど大きな価格差があるわけではない。
しかし、それでも廉価グレードがないという事実は、消費者にとって心理的に高いという先入観を植え付け、きちんとした比較のテーブルに載せられる前に選択肢として切り捨てられることになる。

たとえ廉価グレードがあったとしても実際にはほとんどが308Premiumを選ぶであろうから、無駄なグレードを用意するのはやめようという判断であれば、それは大きな間違いであると指摘しておきたい。


■世界の潮流
308が走らせるクルマとして優れていても、それが必ずしも消費者の支持を得られるわけではない。
自動車産業には世界の情勢とリンクした潮流と言うものが存在し、その流れに適したラインナップを揃える事が必要とされている。
もちろんエコロジーと低燃費という潮流のことだ。
PSAはその答えとしてディーゼルエンジンに力を入れた。
その評価は欧州では非常に高いものがあるが、それを日本に導入はしていない。
導入されていないものは、無いのと同じだ。
日本市場に対しては、207にも搭載されているBMWと共同開発した1.6Lガソリンエンジンを目玉としたいようだ。
確かに素性の良いエンジンではある。
しかし、燃費(10.8km/L)は特筆すべきものではない。
4速ATとのマッチングが良くないことは、207のAL4のデキを見ても容易に推測できる。
プジョーも6速の2ペダルMTを用意してはいるものの、これはディーゼルモデルのみ採用とちぐはぐ感が否めない。
同程度の金額でも、VWのゴルフはTSIとDSGという燃費にもドライビングプレジャーにも有効な機構を搭載している。
今回の308発表で多く聞かれる「高い」という声には、こうした潮流に対して明確な提案が感じられないからこそ湧き上がっているものだと解釈するべきだろう。
同時にディーゼルのラインナップがあったとしたら、このイメージはまた違うものになっていたはずだ。


■費用対効果
諸費用を入れたら350万だ。
307のウィークポイントをつぶして、昇華させた結果が308だと解釈できるオーナーにとっては、それでも308という選択肢はアリなのかもしれない。
しかし、従来の307の顧客層であった、国産車+α程度の出費で手が届く輸入車という抜群の費用対効果というポジションからは遠い存在になってしまった。

308が新規の顧客を取り込むだけの魅力があるかどうかは、おいらにはわからない。
ただ、307乗り換え組みが次の選択をどうするか、非常に気になるところだ。
  
  

この記事へのコメント

  • ゴルフのDSG+TSIが14.2km/Lっていう燃費をたたき出している以上、後発組はこれに迫るぐらいの燃費を実現しないと説得力ないよなぁ。
    プジョーはディーゼル偏重しすぎなんじゃないのかと。
    2008年05月11日 07:24
  • 夏色

    幅の問題がクローズアップされてますが、やっぱり1820mmっていうのはいくらなんでも大きすぎです。
    撤退しちゃった欧州フォードのフォーカスが同じく1840mmでまったく売れなかったのと同じ道を歩む懸念がありますね。
    あんまりネガティブなこと言いたくはないですが、日本市場には適していないプロダクトだと思います。

    2008年05月12日 18:03

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