新型デミオをどう解釈するのか?(3)

demio_color.jpg

目の前に新型のデミオと呼ばれているクルマがある。
旧来のデミオに対して、コンセプトをガラっと変えての登場だ。
CM戦略ひとつとっても、『NEW TARGET New DEMIO』といったコピーで明確に新しい消費者層に対するアピールを鮮明にしている。
ここから窺えるのは、マツダの考えるデミオというブランドは、“新しいカテゴリを提案すること”にあるのではないか?ということだ。

前回までのエントリーで、おいらはデミオについて、“積載性に優れたコンパクトワゴン”というすばらしい初代のコンセプトにこだわった見方をしてきた。
二代目は、そこにZoomZoomという走りのエッセンスを加えたが、やはり基本は初代の踏襲だった。
三代目の開発にあたり、マツダ社内で今回のコンセプトにする事にあまり異論は出なかったらしい。
その意味でも、マツダはデミオという車種に“コンパクトカーとして新しい提案を行う”というポジションを与えているのかもしれない。


ということで、“デミオ=新しいカテゴリの提案”という観点から新型デミオを見てみると、いくつか見えてくる部分がある。

 (1)スタイリッシュであること
 (2)コンパクトであること
 (3)軽快に走れること

この3点へのこだわりが強く感じられる。

(1)スタイリッシュであること
背を低くすることと、CX-7などのテイスト感溢れる流線型のスタイルは、いわゆるカッコいいを地で行くようなデザインだ。

もうひとつ、スタイリッシュと思わせる要素のひとつに、多彩なカラーリングが上げられる。
全11色のカラーを用意し、その中でもブルーやグリーン、イエローといった原色に近いカラーを用意しているのは、“元気”、“躍動感”、“自己主張”といった要素を打ち出したいからだろう。
また、その要素に過敏に反応するのは女性層だ。
マーケティング的にも女性層の取り込みは重要な戦略であり、従来の日産マーチなどに見られる女性層=カワイイという路線とは違ったアプローチであるところが注目される。


(2)コンパクトであること
先のエントリーで2代目デミオに乗ってる人がコメントを付けてくれたが、実はコンパクトで積載性が高い旧来のデミオも、実はその積載性を活かす機会はそれほど多くないのではないか?という現実。

初代の頃はRV&アウトドアブームということもありその積載性が脚光を浴びたが、よりアクティブなオーナーはもっと積載できるミニバン等に移行し、コンパクトカーで積載性を求めるというニーズは、実は思ったほど高くないのかもしれない。
また、競合車が多く出てきた状況では、同じフィールドで勝負するよりも新たな方向性を打ち出したほうがいいという判断か。

そんな中で、マツダは社をあげてZoomZoomという走りを重要視したクルマ作りに特化し始めた。
コンパクトカーとしてマツダならではの魅力を打ち出したクルマをどうやって作り上げるのか。
市場のニーズの変化と、マツダのクルマ作りの方向性の変化、その行き着く先として三代目デミオのコンセプトが生まれたのだとしたら、それはそれで理解することができる気がする。


(3)軽快に走れること
三代目デミオの最も特徴的な要素として、ダウンサイジングと軽量化が上げられる。
両要素とも、コンパクトカーとして軽快に走れるために何が必要かという観点から取り組みで、その結果として5人乗りで990kgというのは、衝突安全性を高めるために重く大きく、という世界的なトレンドにおいて驚異的な軽さだと言うことができる。
(トヨタが本気を出して作ったヴィッツでさえ、同じような装備で比較すると100kgも重かったりする)
また、積載性を捨て去ることで背を低く流線型のフォルムにしたことで重心が低くなり、軽快な走りが期待できる。



革新的な初代。
キープコンセプトの二代目。
まったく刷新しさらなる革新の三代目。

このパターンは、実はホンダがよくやる手法だ。
オデッセイ然り、ステップワゴン然り。
そして、その三代目は賛否両論はありながらも良く出来たクルマに仕上げている。

この秋にホンダのフィットは二代目にバトンタッチするが、上記パターンに則りキープコンセプトでの登場になる。
元々よく出来たクルマだったこともあり、その方向性は間違ってはいないと思う。

それに対してマツダは、フィットと同じ戦場で戦うに際し、三代目のコンセプトによって走りを楽しむ消費者を広く取り込んでしまうつもりのようだ。
二代目フィットの売れ行きがもし芳しくなかったりすると、マツダの読みが正しかったことが証明されるのかもしれない。
もしくは、その狙いとは裏腹に、やっぱりコンパクトでもあれこれ積めた方がいいという理由でフィットがまたバカ売れするのかもしれない。

クルマ離れの進む消費者心理において、じゃあどういうクルマだったら買ってもいいと思っているのか?
各社の社運を賭けた壮大な戦いが始まろうとしている。

 

関連記事
新型デミオをどう解釈するのか?(1)
新型デミオをどう解釈するのか?(2)
新型デミオをどう解釈するか?(番外編)
 

この記事へのコメント

  • ノ~○ロムゲスト

    実際マツダ車の購入も考えた時、悩むんだなこれが…。以前私が選んだ時、値段的にはスズキ、質感だったらトヨタ、見かけなら日産、燃費はホンダという感じになった。スイフト、イスト、ビッツ、マーチ、キューブ、フィットと考えていたんだが、その中でデミオが入り込む余地があるようでなかった。大して評判がある訳でもなく、マツダ自信がデミオを強く押してるようにも見えない感じもした。もっと特徴が解りやすく宣伝すれば良いと思うのですが。欲をいえば買い換えの時も高く下取りしてくれる車種とか、買う前に買った後々の安心感が出てくるならば、優柔不断なユーザー(私?)も買い易くなると思います。
    2007年08月07日 12:39

この記事へのトラックバック