不遇な体感ゲーム

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80年代後半のアーケードゲーム全盛時代にあって、どれだけ客を驚かせるかということのみを追求して各社が体感ゲームと呼ばれる大型筐体のゲームを次々とリリースした時期があった。
その中でもセガは積極的に作品を投入し、絶大な支持を集めたものだった。
スペースハリアーから始まる一連のシリーズは、おいらも弁当代と定期代を削ってコインを投入しまくったもんだ。
しかし、次々と作品をリリースしていると、中にはあんまりヒットしない作品(キツい言い方すれば面白くない作品)というのも存在する。
そんなイマイチな評価のゲーム代表格としてセガの『サンダーブレード』っていうゲームがあった。

おいらはサンダーブレードというゲームが好きだった。
体感ゲームとしては派手な演出は少なかったものの、自重を利用して操縦桿レスポンスに抵抗を持たせるといった工夫を凝らした操作体系と、2D&3D視点が切り替わるっていうのはなかなか面白かった。
それにも増して、もうひとつ魅力的な要素として、リズムとベースを主体としたゲームミュージックの秀逸さがあった。

セガサウンドチーム(後のS.S.T.BAND)が作り出すゲームミュージックは、わかりやすいメロディや派手なサンプリング(アンプ回路が悪かったためか音質は他社に比べて極端に悪かった) で、多くのゲームファンが熱狂した。
その最高潮がアフターバーナーであり、同時に初期ゲームミュージックのムーブメントが最高潮に達したのもこの時期だった。

今でも伝説的なゲームミュージックのイベントとして語られることのある、1987年の池袋サンシャイン噴水広場で開催された『アフターバーナーパニック』というイベントにおいて、アフターバーナー各曲のライブ演奏に加えて、新作として披露されたのがサンダーブレードの曲だった。
ただし、MIDI関連のトラブルのため、リズムトラックしか流れなかったこともあり、サンダーブレードの曲はもっと派手でメロディもいっぱい鳴るに違いない、と会場に来ていた連中は思ったに違いない。
しかし、リリースされたサンダーブレードは、上記の通りテンション系のリズムとベースを主体としたサウンドであり、従来のセガらしいメロディ路線とは一線を画していた。
ドラムマシンだけが虚しく響いたサンシャイン噴水広場のイメージから、実はそれほど大きくは変わってなかったということやね。


そのサウンドに対する評価は真っ二つにわかれていたが、実はおいらはセガ系の中ではかなり好きなサウンドだったりする。
というのも、当時FM音源+PCMという音作りの中で、どれもメロディを前面に出したような曲が多くそれに辟易していたのだが、サンダーブレードは打ち込みながらもドラムやベースを極力生演奏っぽく仕上げられていたからだ。

ドラムを叩いた経験のある人なら当然の知識ではあるが、スティックの強弱とタイミングによってグルーヴが生まれるわけで、そこにチョッパー(打弦)奏法によるベースソロを被せるといった作りは、当時カシオペアを筆頭とするフュージョンブームだったこともあり、純粋にカッコイイ曲として今聴いてもよく出来てるなぁと思う。
FM音源はバックでコードを補強するぐらい役割しかないので、むしろFM音源の弱さを露呈することも無い、PCM、FMがそれぞれの得意な役割を受け持つという好例と言える。

で、前置きが長くなりましたが、そんな名曲ぞろいのサンダーブレードが、2007年に復活ですよ!
ただしサントラだけで。orz …
しかもギャラクシーフォースのサントラのオマケとして。 ovz …

「ギャラクシーフォースII&サンダーブレード オリジナルサウンドトラック」

SEGA AGESシリーズで復刻したPS2版ギャラクシーフォースの発売にあたり、過去の移植モノのサウンドを寄せ集めたサントラが発売になったのだが、そこにおまけ扱いとしてサンダーブレードは収録されている。
ゲームとして復活の兆しはまったくない。

ウケなかったゲームというのは、時代が変わってもやはり不遇な状況は続くのだな…
しかし、リマスターされた形できちんと曲が聴けるようになったこと、そしてテイクの違う曲もそれぞれ入っているなど、つくりに関しては妥協が無い。
その意味では買って良かったと思えるサントラだったりする。

今でもゲームミュージックが好きな連中が楽器持ってスタジオに集まると、セッションのような形でサンダーブレードの曲を演奏しているなんて話を聞いたりする。
また、あのチョッパーベースのソロが弾けるというのは今でも一目置かれるぐらいの高等テクニックだったりする。

そんなわけで、ベースとドラムが主役ともいえるサンダーブレードの曲は、地味ながらも熱烈なファンがいるんですよ、なんてことが言いたいだけで、リメイクでも復刻でもなんでもいいから家庭で楽しめるようにしてください、なんてことをこっそり言ってみるテスト。
エンデューロレーサーとか、地味地味シリーズまとめて復刻とかでも構わんからさ。
 

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