さて、グループPSAの中でラグジュアリーブランドとしての定着を図るための戦略的旗艦店の役割を担ったDS STORE 東京が南青山にオープンして、ようやくブランドアピールするのに恥ずかしくない体制が整いました。
ここで「プレミアムブランド」と「ラグジュアリーブランド」の言葉の定義を整理してみましょう。
日経ビジネスのこちらの解説がわかりやすいので引用させて頂きます。
■プレミアムブランド
基本的に従来のマーケティングの考え方、すなわちSTP(セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング)がブランド戦略の中心にある。
セグメンテーションとターゲッティングは文字通りどのように市場を細分化しどのセグメントを狙うか、そして、ポジショニングとは競合に対してどのように差別化するかである。
そのためのHow to が一般的に世の中で語られているマーケティング理論である。
■ラグジュアリーブランド
ブランドの根幹は、あくまでデザイナーやメゾンの世界観であり、極論を言えば顧客も競合もブランドの根っこの部分では意識していない。
ラグジュアリーブランドの立ち上げにおいては、そのブランドでしか味わえないオンリーワンの世界観を築くこと、作り手の主観を徹底的に磨き上げることが何よりも重要なのだ。
プジョーが目座すプレミアムブランドと、DSが目指すラグジュアリーブランドは明確なコンセプトの違いがあるわけです。
DSという世界観への理解が進むことが、DSの目指すゴールであるということなわけです。
だからこそ、台数を追うのではなく気に入った人だけが買ってくれればいいというスタンスで、値引き販売も極力控える方向で販売施策を進めているわけですね。
では、そのDSというブランドについて少し振り返ってみましょう。
■DSの歴史
いわゆるオールドDSについてはここでは触れません。
『Back in The Race』と名付けた事業戦略により経営危機からの再建をひと段落つけたグループPSAが、『PUSH TO PASS』という事業戦略を掲げて主に利益率向上の取り組みを強化しております。
そんな中でプジョー、シトロエン、DSという3ブランドに関するポジショニングを再定義しました。
DS | ラグジュアリーブランド |
プジョー | プレミアムブランド |
シトロエン | 大衆(実用)ブランド |
元々プジョーとシトロエンは大衆(実用)ブランドとして長らく展開してきた歴史があります。
ただし、同じ顧客層を対象しながら、
プジョー = コンサヴァティヴ(保守的)
シトロエン = アヴァンギャルド(前衛的)
シトロエン = アヴァンギャルド(前衛的)
といった異なる属性を相手にビジネスを展開してきました。
一般的にアヴァンギャルドを好む層は熱量も高く、シトロエンオーナーの存在感がその実数に対して目立つのはそうした性格を反映したものと言えます。
対してプジョーオーナーがその総数に対して目立ちにくいのは、保守的ゆえと言えるのかもしれません。
で、2010年当時のPSAが新たな戦略として打ち出したのが、シトロエン内に新たなブランドライン『DS Line』を立ち上げました。
シトロエンとは異なる少しプレミアムなラインナップという位置付けでスタートし、DS3を筆頭にDS4、DS5とラインナップを強化していきました。
そして2014年に元ルノーでCOOを務め、カルロスゴーンと喧嘩して飛び出したカルロス・タバレスがPSAのCEOに就任しました。
『DS Line』をシトロエンから独立したラグジュアリーブランドとして展開する話は、2014年に就任したカルロス・タバレスが宣言したことから始まりました。
独立したブランドにするということは、従来のようにシトロエンディーラーで併売する形ではなく、DS専門店を立ち上げる必要が出てきます。
欧州ならびに中国ではDS専門店を開設する動きがありましたが、それでも全世界販売は2012年の13万台程度をピークにここ数年ずっと減少傾向にあります。
その大きな理由として2009年に発売されたDS3を筆頭にラインナップの鮮度が落ちたこと、そして新型車の投入が遅々として進まなかったことがあります。
しかしグループPSAとしては、ラグジュアリーブランドを立ち上げるには時間が掛かるとして、DS専門店の拡充という先行投資に加え、値引などで無理に販売台数を増やす施策は(あまり)やらない方針でコツコツと取り組んできました。
2014年より世界的にDS専門店の開設が進んでいましたが、こと日本においてはその販売ボリュームのあまりの少なさゆえ、採算性の観点からDS専門店の開設は難航を極めました。
「後々DSの車種はDS専門店でのみ販売する」
という方針が示されてはいたものの、肝心の専門店がオープンしないギャグのような状況がしばらく続いていました。
ラグジュアリーブランドである以上、その情報発信拠点として東京に旗艦店を開設するというのはブランド戦略として最優先で取り組むべき課題です。
もちろんプジョー・シトロエン・ジャポン(PCJ)としてもその方針で色々と検討を重ねてはいましたが、ご存知の通り東京の、しかもラグジュアリーブランドに相応しいエリアの地価は異様に高いわけです。
とりあえず直営としてシトロエン中央の店内に併設された『DS URBAN TOKYO』という展示コーナーという暫定対応が続きました。
2017年3月に『DS STORE 滋賀』を皮切りに名古屋、彦根という東海エリアに偏った出店が続いたのは、DS専門店を引き受ける地場資本がなかなか現れなかったという事情が透けて見えます。
そして先日のエントリーでも触れたとおり、DS STORE 東京のオープンにこぎつけたわけです。
今後DSがラグジュアリーブランドとして成功するかどうかは、そのラインナップの充実と、ラグジュアリーブランドとしての体験をどこまで訴求できるかに掛かっています。
販売を開始したDS7 Crossbackは、従来のPSAの車種から比べると上質感の演出は格段に良くなってはいますが、ラグジュアリーブランドとしてDSが何を訴求したいのかという点がまだまだ伝わりにくい部分もあります。
DS4/DS5はカタログ落ちし、今後国内導入が予定されてるDS3 Crossbackからその辺りのぶらんどプロモーションが本格化するのでしょうが、そうはいっても2車種しかない状況でどれだけ存在感を発揮できるのか。
プレミアムブランドを目指すプジョーとともに、PCJのプロモーションの手腕が問われることになります。
この記事へのコメント
親分
福岡のDSストアは国産車ディーラー並の建物を三分割して作った苦渋の決断みたいな代物です。
その筋では無茶やらかして福岡から逃げ出したGSTが恥知らずにも戻って来たぞという、一部では語られるディーラーですし、
客に3000キロでオイル交換して下さいと、厚顔無恥にも言い放つ辺りに、予想以上に売れないんだろうなぁと、GSTで大量に並べられた登録済未走行車のDS7の群れを見ていると、
売る車が無いDSストアをどうやって、維持して行けるのか?と、思ってしまうのです。
そうすると、登録台数の推移から見れば、やはり、プジョー・シトロエン・DSは消えて行かざるを得ないのかなぁ、、、