日産のゴーン会長逮捕の件


既に広く報道されていますが、現時点で出ている情報がどういった意図によるものか、ってところから考えていく必要がありますね。

日産のクーデターという見方がありますが、ルノーを相手にそれだけの行動を起こすには後ろ盾が必要なわけで、よほどの勝算が無ければここまで用意周到に動くことはできないもんです。

じゃあその後ろ盾は誰なのか?
背後に経産省の意向が取り沙汰されておりますが、プレイヤーはまだ他にもいそうですね。


で、緊急記者会見においてどんな質問にも丁寧に答えたり、プレスリリースを即時に出したし、欧州でトップニュースに出る時間帯に発表を行ったりといったメディア対応が賞賛されてますが、これはもう単純に敵を作らない(自分たちを好意的に見てもらう)ためにはどうしたらいいか?というメディアコントロールに最大限の配慮をした結果だと思いますね。

ゴーン氏の長い支配体制が諸悪の根源であって、日産が苦しい状況におかえているのはゴーン氏の責任だ、というイメージを植え付ける演出に徹していたように感じられます。「我々(日産)は、被害者だ」と。

ある意味、技術は大したことないのにマーケティングだけはずば抜けて上手な昨今の日産を象徴するような動きに見えました。

そんな戦略が功を奏したからか、ルノーが日産に行ってきた不当な扱い(利益を吸い上げ、開発投資を絞る等々)を快く思わないメディアがゴーン氏ならびに親会社のルノーをバッシングする方向に動いています。

中にはゴーン氏の実績を全否定する動きすらありますが、当時の日産が企業として立ち行かなくなり、外資主導によるリストラという大鉈を振るわなければ立ち直る事すらままならなかったであろうことを考えると、この手の主張には賛同しかねます。

ゴーン氏の功績と呼べる点で評価できるのは、「コストカッターという役割を演じた」点にありますが、その後のEV偏重による投資の失敗、無茶なコミットメント主義などどちらかと言えば失敗続きと言えなくもありません。

特に国内施策においては他社との提携により軽自動車ラインナップを増やしたはいいものの、自社開発の登録車に関してはモデルチェンジといった抜本的な対策を採らず小手先の対応に終始しています。

いわゆるマーケティング主導の売り方が顕著になっていきますが、この方針に関しては販売戦略を取り仕切る星野朝子女史の意向によるものが大きいわけです。

星野女史といえば、以下の記事を読んでいただければどんな方かは容易に理解できましょう。

このギラギラとした成功への飽くなき欲求は、いかにもゴーン体制での相性の良さが感じられます。

実行が伴っている分には全然構わないのですが、国内の状況を見て「日産が勝っている」というのはどんな場面でしょうか?

登録車の月間ランキングに顔を見せるのは「ノート」「セレナ」「エクストレイル」そしてかなり離れてピュアEVの「リーフ」ぐらいのものです。

日産規模のメーカーで売れる車種が4つしかない。
いや、むしろその4車種だけが売れれば余計な開発投資や販売管理費を掛けずに済むという発想もあるのでしょうか。

総合ランキングでトップの実績を上げられないから、「SUVカテゴリNo.1」いった謎アピールを始めるなど、とんちや屁理屈レベルの宣伝文句を使うなど、主戦場で勝てないなら戦場を変えて勝った勝ったと騒いでいる、当方にはそのように見えて仕方がありません。

販売の最前線であるディーラーは売るものが無い状況が長く続いており、リコール対応で疲弊の極みにあります。

熱心な日産ファンほど、諸悪の根源は星野女史であると考えているようで、彼女の今後の去就が国内の日産の再生を左右することになるような気がしないでもありません。


このような状況を長らく続けてきた責任は、ゴーン氏だけが被る話ではなくむしろ今の体制を良しとした経営陣にもあるわけで、記者会見で西川社長が演じてみせた、「我々は被害者だ」というイメージをそのまま受け入れるのは非常に危険だと思う次第です。

今回のクーデターでゴーン氏を日産の会長職から追放することは可能でしょうが、その後のルノー、日産、三菱のアライアンスをグローバルでうまくハンドリングできる人材は国内にはおりません。

当然親会社であるルノー主導での立て直しが図られるのでしょうが、ルノーの株主でもあるフランス政府が自国の雇用維持のためにルノーが日産を完全に吸収してしまう事態を招きかねないのですが、そういう政治の絡んだ動きに翻弄され「こんなはずじゃなかった」なんて言わないで下さいよ。

今回黒幕として名前の上がっている経産省にまんまと乗せられて、日本から自動車メーカーが2つ消えるなんて結末を迎えることの無いよう願いたいものです。

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