商品に価値をつけることがマーケティングの役割であるわけで、そのための努力について(よほどのピンボケでない限り)どうこう言うのは野暮ってものではありますが…。
こんな発表があったんですよ。
グッドデザイン2018・ロングライフデザイン賞 乗用車 [キューブ]
日産キューブは2008年に現行モデルが発売されてからもう10年も経過したロングセラー…と言えば聞こえはいいですが、実質的に小手先の商品改良で無理矢理延命を図られている状態にあります。
キューブとしての後継モデルの開発は行われず、三菱との共同開発による同ポジションの穴埋め車種が検討されてはいますが、単なるミニセレナの域を出ないものになりそうです。
そんな古めかしい商品に何か箔を付ける方法はないか?
そこで槍玉に挙がったのがロングライフデザイン賞であったわけですね。
モデルチェンジしないことを逆手にとってのプロモーション。
一休さんレベルのとんちを見せられてるようで、もはや呆れるを通り越して乾いた笑いしか出てきません。
グッドデザイン賞受賞というと、なんだかその価値を第三者から認められたみたいな印象を受けますが、グッドデザイン賞っていうのはそもそもエントリーが自薦なんですよ。
2018年度グッドデザイン賞応募ガイド 応募の手順
https://www.g-mark.org/guide/2018/guide3.html
https://www.g-mark.org/guide/2018/guide3.html
しかも審査には結構な金額が必要であったりします。
2018年度グッドデザイン賞応募ガイド 日程と費用
https://www.g-mark.org/guide/2018/guide2.html
https://www.g-mark.org/guide/2018/guide2.html
一次審査料 10,800円
二次審査料 57,240円
受賞パッケージ料 156,600円
二次審査料 57,240円
受賞パッケージ料 156,600円
と、最低でも22万円以上掛かるわけです。
更に受賞したらGマークを1年間使用する権利として、
使用料 540,000円(販売価格が50万円以上500万円未満の場合)
が別途掛かります。
もちろん申請後に一次、二次と審査があるわけですが、大賞を狙うのでもない限り基本的に払うべきお金を払っておけば受賞を得ることは可能です。
結果として「グッドデザイン賞という箔を付ける権利を100万円程度で買う」というビジネスモデルが回っているのと同等であって、この辺りがモンドセレクション同様と指摘を受ける理由でもあったりします。
実は以前の会社で開発したソフトでグッドデザイン賞に応募しないか?みたいな話があったので一次審査まで応募しましたが、二次審査料とは別に
「●●万円積めば賞取れるかもだけど、どうする?」
みたいな打診があって、バカバカしいので辞退したなんて経験がありましてね。
あれからグッドデザイン賞ってお金積めば買えるのね~ぐらいに思っております。
話が逸れました。
キューブの件ですね。
古くなったとはいえ現行キューブのコンセプトは素晴らしく、一時期は欧州への輸出も行っていたことで(販売は低調でしたが)あちらのデザインにもかなりの影響を与えました。
シロトエンC3ピカソなんてその典型でしたね。
戦力が限られた中で日産らしさのあるクルマを追求する…そんな姿勢の中から現れた、名車と呼ぶのに相応しいクルマだと思います。
スカイライン、ティーダ、マーチ、エルグランド…
どれもドル箱車種として他社にはない個性を持ちながら、海外車種との統合生産地移転、中国専売といった主に日産側の都合によるモデルチェンジで魅力を失って販売失速した車種が山のようにあったりするわけです。
キューブもまた、こうした日産の都合によって消えていく名車に名を連ねることになるのでしょう。
その前の最後の花道として、とりあえず話題作りのために受賞で箔を付けた…なんて事情が垣間見えるところがなんとも虚しい気がします。
しかもこれ、日産自身は本気でロングライフ賞の価値があるともギャグでやってるとも思ってなくて、
「こういう箔を付けておけば少しは売れるんじゃね?」
ぐらいにしか考えてないところが透けて見えるんですよ。
もちろん、10年間同じモデルを販売し続けることが必ずしも悪いとは言いませんし、実際ジムニーのように超ロングランのモデルもあったりしたわけです。
(ジムニーは新型でグッドデザイン賞を取りましたがw)
(ジムニーは新型でグッドデザイン賞を取りましたがw)
ジムニーとキューブの違いは、メーカーがその車に対して「愛情はあるか?」みたいな部分に集約されます。
そもそもキューブのコンセプトに自信があるのであれば、現行モデルをさらにブラッシュアップして次世代のキューブでその真価を問えばいい話です。
しかし国内販売は長らく放置されてきた影響で鮮度を失って低迷状態が続いています。
販売が低調になってくると装備の質感を下げたり仕様を絞ったりと、売れるための商品力向上ではなく収益改善のためのコストダウンに走るようになり、さらに商品力を下げるのが日産のお家芸とも言えます。
ノート、セレナ、エクストレイルの3つしかまとも売れる車種が存在せず、なんとかしてくれというディーラーの悲鳴は無視して、小手先のマーケティングでその場をしのぐ手法がそう長くも続くとは思えません。
トヨタがドラスティックに事業を転換しようとしている中、日産は三菱を子会社化するなどの姿勢を見せているものの、基本的に日本市場を切り捨てる方向で動いていると判断せざるを得ません。
車種の削減がひと段落し、海外生産が増えるようになったらそれこそ軽自動車を除いて普通車の大半は海外生産に踏み切るぐらいのことはやりかねません。
日本に本社を置きつつも外資系企業である日産は、日本のサプライチェーンや雇用を守る義務などない、ぐらいのことは平気で考えてそうですので。
そんなわけで、不遇な環境に置かれたキューブではありますが、クルマに罪はありませんので程度のいい中古とか条件が合うようであれば是非乗ってみてほしいクルマではあります。
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