高い輸入車が売れるようになった理由

以前エントリーを書いたような気がしたけど見つからないのでとりあえず新規のネタとして上げておきます。

日本の輸入車市場が20年ぶりに年間30万台規模に回復した、なんて話は過去のエントリーでも触れましたが、ではどの価格帯が売れてるんだろう?みたいなデータをアップデートしましたので掲載しておきます。

ここで注目したいのが価格帯別のシェアとなります。

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かつての日本の輸入車市場のボリュームゾーンは「200~299万」までが圧倒的でありました。

このゾーンは各メーカーのB/Cセグメントの主力ラインナップが揃っており、単身者から家族持ちのファミリーニーズまで幅広い客層に対応していたという事情があります。

300万円以下というのは一般的な日本人がクルマに対する支出できる一つのラインとして機能してきた感があります。

事実、今回のソースとなるJAIAが統計を取り始めた2003年以来、この「200~299万」のゾーンが輸入車の価格帯において最も高いシェアを占めていました。2015年までは。

この状況が2016年に変化しました。

代わりに最も売れる価格帯としてトップシェアになったのは、その1つ上のレンジとなる「300~399万」です。

それより上の価格レンジも全体的に伸長しているのに対し、「200~299万」のシェアは最盛期だった2010年の38.8%に比べると2017年では19.2%と半減しています。

一体何が起こったのでしょうか?

簡単に言えば“高い輸入車が売れるようになった”ということです。

景気回復に伴って消費意欲が旺盛となり、メルセデスやBMWといった高級ブランドの車種が売れているというのは報道でご存知の方も多いと思います。

大衆ブランドにおいても廉価グレードと上位グレードでは、上位グレードの方を選ぶ消費者が増えています。

例えばプジョーさんの308HBで言うと、

 308 Allure 279.9万
 308 Allure SE 294.9万
 308 Allure BlueHDi 299.9万
 308 Allure BlueHDi SE 314.9万
 308 GT Line 317.0万
 308 GT BlueHDi 359.0万

となっており、廉価グレードこそ300万以下を実現しているものの、主力はほぼ300万オーバーとなるわけです。

昨今のADAS(Advanced driver-assistance systems:先進運転支援システム)やテレマティクス機能は上位グレードに搭載されているケースが多く、例えば上記308HBの例で言えばACC(前車追従型クルーズコントロール)は最上位グレードのGT BlueHDiにしか搭載されていません。

せっかく輸入車を選ぶならこうした先進装備も堪能したいという消費者心理から、より高いグレードを契約する流れができている、ということですね。

こうした先進装備は販売価格を押し上げ利益に貢献してくれるので、メーカーとしても出来るだけ上位グレードを買ってもらう仕掛けてくるわけです。

こうした背景も重なって、輸入車の売れ筋トレンドが大きく変化したのがここ数年の出来事と言えるでしょう。

欧州車はシンプルな廉価グレードこそ最も魅力がある、なんて語られることもありますが、日本においてはこれが現実であり、実際廉価グレードはさして売れていないわけです。
今後PHEVやEVなどより高付加価値のついたクルマが増えていくこともあり、この傾向は更に強まることになると思われます。

個人的に先進安全装備のうち役に立つのはブレーキアシストとACCぐらいだと思っているので、そのうち廉価グレードにこの2つが標準搭載される頃に天邪鬼的な消費行動を取ってみようかと考える次第であります。


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