結論から先に書いておきますが、今回のエントリーに関しては現時点では当方の判断は保留。
ただし、オーナーが安心して乗れることが最優先されるべきであることは言うまでもありません。
昨日、埼玉でフィアット系車種のメンテナンスを得意とする有限会社カルトのtwitterでギョっとする情報が発信されました。
本日只今より
— カルト山口 (@cult1995)2018年4月11日
FIAT・ALFAROMEOに関する
一切の営業を
撤退することにしました
今後一切お受け致しませんので
別店舗・ディーラーへ
ご依頼下さい
Fiat500に採用されているセミオートマチックトランスミッション(2ペダルMT)であるところの『DUALOGIC(デュアロジック)』は色々とクセと呼ぶには危険すぎる症状が出るとか聞いたことはありますが、死亡事故とか穏やかじゃないですね。
ツイートを遡ると2月より今回の件を匂わせる発言をされております。
とりあえず、DUALOGICのメンテナンスを停止しました。
— カルト山口 (@cult1995)2018年2月1日
FCA何言ってるか分かんないのでw
他のツイートでは俄かには信じ難いような情報も含まれておりますが、当方が一番引っかかっているのがこちらのツイートです。
とうとう死亡事故まで国交省とグルになってセルジオ・マルキオンネ氏他は隠そうとしてます
— カルト山口 (@cult1995)2018年4月5日
同じトラブルで、同じような事故で、113人も亡くなってるなんてあり得ないです
提出した書類は知ったかぶりの盗作なので、また死亡事故が増えるね…#国土交通省 #サガミ #隠蔽 #亡くなった人も遺族も気の毒
現時点で事の真偽がハッキリしない以上全面的に信用するわけにもいきませんが、トランスミッションに起因するトラブルで死者が113名というのはどうなんでしょうか・・・?
信じられないというより、信じたくないという気持ちの方が強いですね。
一応客観的なデータとして取れるものを取り急ぎざっと提示しておきます。
FCAJとして展開しているFiat/Abarth/AlfaRomeo/JEEPのここ10年(2008-2017)の販売台数は
Fiat 58,482
Abarth 5,971
AlfaRomeo 24,354
JEEP 51,607
となっているものの、今回の件で指摘されているトランスミッションに関しては主にトルコンATを採用しているJEEPはほぼ除外できるので、母数として約9万台が市場に出ている計算になります。
で、国内における交通事故死亡者数は年々減少しているものの、同じくこの10年間での合計は
44,481人
となっております。
カルトの山口氏が指摘する113人というのがどれぐらいの期間を指しているかはわかりませんし、この10年より前に販売されたフィアット車での事故の可能性もありますからこの数字だけ抜き出してもハッキリしたことはわかりませんが、日本の自動車市場において輸入車のシェアは1割であり、さらにその中でもフィアットグループ4ブランド合計のシェアは7%に満たない状況において、この死者数というのは非常に多いという印象を受けます。
“イタフラ車は故障してなんぼ”みたいに語られ故障の代名詞とも言われたフィアット車ですが、販売台数がそれほど多くなかった頃は多少の故障はオーナーの知恵と寛容な心で大目に見られていた面があったと思います。
しかし現行Fiat500の爆発的なヒット(累計4万台を突破)して以降、あまりクルマに詳しくない層にも注目されるようになったことで、不具合の影響が広範囲に及ぶようになってしまったという面があるかもしれません。
セミオートマチックトランスミッション(2ペダルMT)を採用している輸入車は日本市場においては総じて相性が悪く、フィアットに限らずプジョーさんでも古くは1007/207、そして初期208や2008で採用されたETG5の評価は芳しいものではありませんでしたし、VWのup!はあらゆるテコ入れを受けても販売は低調だったりしますし。
では、フィアット車で具体的にどのようなトラブルが出ているのでしょうか?
客観的に得られる情報として、国土交通省が開設している不具合報告検索でフィアット車の動力伝達に関する不具合報告を検索してみると、50件ほどヒットします。
▲クリックで拡大
特にここ数年ではFiat500のDUALOGICに関するトラブル報告が異様に多いのが気になります。
販売台数が多くなれば不具合報告も増える傾向がありますが、やはりここ数年の報告が増えているのは気になるところですね。
で、具体的な症状についてカルトの山口氏はこう指摘されております。
走行中に想定外のギアに勝手に入ってしまうという事例が頻発しているとすると、これは非常に危険な状態と言えます。
製品の構造的な問題であればリコールに相当する話ですが、定期的な整備を怠っていたことに起因するトラブルであれば一概にメーカーに問題があるとも言えず、原因ならびに対処の方法を巡ってFCAJの見解の相違があったことが、今回のカルト山口氏の告発とも取れる発信に繋がったものと推測されます。
トランスミッションの不具合といえば、VWで広く採用されていた乾式DSGのトラブル事例が思い返されますが、あれも結局のところ有耶無耶な形で終息してしまった感があります。
工業製品においては構造上やむを得ず「これが仕様です」と強弁しなきゃならないような事情があることは重々承知してはいますが、こと人命に関わる部分でこのような態度が許容されてはいけないというのが当方の考え方です。
今回のカルトの山口氏の告発が単なるインポーターとのいざこざなのか勇気ある告発なのかは、(後者だとは思いたいですが)やはりもう少し客観的に検証可能な情報が出てくるまでは判断を保留せざるを得ません。
カルトの山口氏におかれましては、その主張が真であるとするなら、より客観的な情報開示をいただくことでその主張の根拠とされることを願います。
FCAJとしても多数寄せられている不具合が事実であり、その対処方法が確立されているのであればオーナーが安心して乗り続けられるよう真摯な対応が必要なのではないでしょうか。
それがせっかく高まってきたブランド価値を毀損しない唯一の方法な気がします。
いずれにしても、今後の推移を注視する必要がありそうですね。
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