雑誌が危機的状況にあることは周知の事実でありますが、その中でも自動車関連媒体は大きな岐路に立たされていると言えます。
大半の自動車雑誌が速報性においてWEBメディアに対抗できず、また本来得意であったはずの徹底した検証記事というフィールドすらメーカーから提供された情報を元に構成するなどお金を払って読む価値を提供できているのか?が問われ、その答えが今の販売部数の低迷に繋がってきている気がしてなりません。
アメリカの『Comsumer Reports』のように消費者視点に立ったレビューを提供する媒体はもはや皆無と言ってよく、辛うじてその中でも長い歴史を持つ『CG(Car Graphic)』や、新車スクープが減った代わりに自動車にまつわる社会問題を中心に扱う(皮肉です)『ニューモデル マガジンX』あたりが存在感を発揮している程度でしょうか。
そんな危機的な自動車雑誌においてNo.1に君臨しているのが発行部数23万部を誇る『ベストカー』であります。
当BLOGでは以前から言及していましたので今更隠すことはしませんが、当方はベストカーという雑誌の低俗さが嫌いです。
週刊誌的なノリの編集方針にも一定の支持があることは当然理解してますし、その存在意義を否定するつもりはまったくありません。
単に当方がそういうのが嫌いなだけです。
とはいえ、ベストカーのそうした編集方針を支持する読者がどういった層か?というのは容易に想像がつきましょう。
そんな業界No.1のベストカーですが、発行が講談社ということもあって実は大きな変革に打って出ています。
この動きは昨年9月に当方も感じるようになりました。
誌面のほうは相変わらずですが、昨年9月に本格稼動した『ベストカーWeb』のクオリティが飛躍的に向上しています。
あまりに低俗で免許を持てない年齢が主な読者層とも揶揄されるベストカーですが、その主要因を担ってる感のある国沢氏をいつまで起用するんだろう?っていうのが現在もっぱらの興味でありまして。最近編集者?にものすげーキレる人入って間違いなくクオリティ上がってるのでそろそろかな、とも。
— 海鮮丼太郎 the Junker (@kaisendon) 2017年9月14日
自動車関連サイトとしては後発で、なおかつあまり有益な情報を提供できていなかったベストカーが、時事ネタに反応してクオリティの高い情報発信をするようになりました。
明らかにこれはソーシャルメディア慣れしてる編集者に違いないと思ってましたが、その正体が某有名な犬アカウントであることを自らネタバレするようになりました。
どうりで…w
ってことで、たられば氏の所属するベストカーにおいて、昨年末にもう一つ大きな動きがありました。
以前から編集部や取材現場に同行したりしてその内容をSNSで発信する読者を募った「ベストカーアンバサダー」制度を運営していましたが、それを11月末に終了し、2018年にまったく新しいコミュニティサービスを始めるとの告知がありました。
ベストカーがあんまし機能しているとは思えなかったアンバサダー制度を廃止して1月からWebサイト上でどうやら独自のSNSを構築するらしい。読者を囲い込むには今ぐらいがリミットだろうからわからんでもない。本誌は読んでないから知らんけどWebの方は割と質が上がって来てるので少し期待してる。
— 海鮮丼太郎 the Junker (@kaisendon) 2017年12月1日
その詳細が明らかにされております。
ベストカーClub
「車のことなら“あの人”に聞こう」の、“あの人”が集まる場所
車には歴史があり、技術があり、価値があり、楽しさがあり、歓びがあります。それはまさに「文化」であり、仲間と共有することで何倍も豊かにできるものです。このコミュニティでは、車の楽しさ、面白さ、そして奥が深くて「ためになる」ところを発見し、教え合い、語り合い、自分自身がコミットすることで、車にまつわるライフスタイルを豊かにしてゆくことが目的となります。
正直な感想を言わせていただくと、
それをお前が言うか!
というのが第一印象です。
編集部から第1期クラブ員募集について長く自動車専門誌のナンバーワンとして先頭を走り続けてきた『ベストカー』は、いま岐路に立っています。それは雑誌不況、若者の車離れという社会全体の変革要素だけでなく、『ベストカー』という媒体はこれまでもいろいろな意味で変わり続けてきており、今度はどう変わるかが問われているからです。インターネットという手段を得て、車と、車情報と、車好きと、車社会との距離感はどうなっていくのか。このコミュニティは、その提案のひとつです。今回、ベストカーClubの創設のため、一緒にこのクラブで楽しみ、盛り上げてくれる創設メンバーを募集させていただきます。受け身で楽しむ場所ではなく、積極的に交流し、「ベストカーClub」という新しい場所を一緒に作り上げることにコミットしてくれるメンバーを募集いたします。皆さんと一緒に『ベストカー』という体験を創っていければと思います。ベストカーWeb編集部
自動車雑誌としての岐路にある自覚と、なんとしても変化に対応しなきゃという強い思いは非常によくわかりますし共感もします。
このメッセージが受身ではなく自発的なメンバーを集めたいという檄であることも充分理解しています。
あえてベストカーの名前を使っているのですから、熱心な信者を囲い込みたい意図であることも明白です。
で、それが
5,000円(税込)/月額
ってのはなんなんでしょうか?
ベストカー読者層とはおもいっきりアンマッチな設定じゃありません?
ベストカーClubの提供するバリューは以下の通りとなります。
・雑誌「ベストカー」の定期配送
・会員限定記事&動画閲覧
・会員同士のオンライン&リアル交流
・限定イベントへの参加権利
・ほか特典多数
(具体的な特典・イベント内容は当サイトにて順次公表していきます)
この内容で月額5000円っていうのはかなり高いハードルと言わざるを得ません。
同様に読者向けの有料コミュニティとしては、CG(Car Graphic)の運営する『CG CLUB』があります。
こちらの活動内容は詳細には存じませんが、少なくともCG読者に+αのバリューを提供することを目的としているのは間違いありません。
このCG CLUBの会費は
3,600円/年額
※初回のみ事務手数料として+500円
であります。
CG本誌の代金は含まれず、また読者サービスの一環としてある種ボランティアで運営されているという背景があったりしますが、CGでさえこの程度で運営されています。
CGであれば今までの実績からイベントのクオリティなどに期待を持てますが、ベストカーClubに担保できるクオリティって現時点でどんなことがありますかね?
紹介文によると、従来のアンバサダー会員数は600名ほどだったそうです。
当方もその一人ではありましたが、正直言って興味本位で登録していたにすぎず、月額5000円も出してクルマ関係の情報しか得られないサービスに入会しようという気はあまり起きません。
月額5000円という金額設定は、ファンクラブというよりは有料サロンに近い発想です。
第一期会員応募の登録フォームに本名はおろかお勤め先の登録が必須になっており、会員属性を本気でコントロールしたいんだろうな、と感じました。
昨今の有料サロンって結局のところ同好の士が集うというより、そこに出入りする人とビジネス上の繋がり(≒コネ)を作ることに執着するような怪しい人が一定数紛れ込むんですよね。
そこから怪しいお金儲けの話に発展して…みたいなのを目の前で見てきたから俺は詳しいんだ!
まぁここまで極端な話にはならないでしょうが、大衆食堂がいきなり高級料亭をオープンしたようななんとも言えない違和感を感じるのは当方だけではないと思います。
昨年末から第一期会員として80名を募集していますが、今のところ応募が殺到しているわけでもなさそうですし、大変失礼な言い方ですが現在のベストカー読者層にそれほど忠誠度の高い読者が沢山いるとも思えないんですが…
今はベストカーClubのブランドを担保できる金を持ってて忠誠度の高い会員を意図的に集めようという目的なのかもしれませんし、本格運営を開始したら月額を低くした一般ランクの会員募集を行う…みたいなプランが控えているのかもしれません。
どうなるかはわかりませんが、とりあえず当方は様子を見させていただきます。
5000円あったら娘さんを体操教室に通わせることもできるので、もっと有意義にお金を使いたいと思います。
ちなみに。
似たような取り組みとしてコンピュータ界隈では紙媒体を止めて電子版限定に移行した週刊アスキーが、更なるプレミアム会員向けサービスとして月額1080円でスタートした『ASCII倶楽部』っていうのがあるんですけど、こちらも会員数はあまり芳しくないと風の噂で聞きました。
ブランドの忠誠心に依存する商売は意外と難しいな、と思いましたとさ。
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