逆走防止をいかに実現するか?



ってことで散々な言われようの東京モーターショー(TMS2017)ですが、TMS2017を楽しめるかどうかは来場者が何に注目するかにもよります。

個人的に自動車メーカーの出展よりその技術を支えるサプライヤーなどの方に見どころがあるように思いまして、どちらかというとそうした視点で会場を見て回ってましたが、まさか5時間で時間が足りなくなるとは思いもしませんでした。

いろいろ発見もありまして。

たとえば国交省とNEXCOが高速逆走防止技術の公募をしており、その選定に残った28社が現在実証実験をしていたりします。


用品メーカーのカーメイトはBluetoothを使って逆走検知を行うソリューションで選定を受け、現在小田原厚木道路で実験をやってるんだとか。

carmate_panel.jpg

仕組みとしては、クルマに搭載されているBluetoothの電波であればなんでも良くて、それを時差を付けて検知することでどちらの方向に移動しているかを判別し、それをセンターに警告として送信するという仕組みだそうです。

この方式の利点は、最近の純正オーディオの大半はBluetoothの機能を標準で備えており、他にもスマートフォンなどBluetoothデバイスの電波を使っているケースがかなり多く、クルマ側に何の追加装備も必要とせずにかなりの台数に対応させることができる点にあります。

とはいえ問題もあります。

Bluetooth機能を有していても、それがONになってなければ電波を拾うことができません。

またBluetooth非搭載の車がどれだけあるのか現時点では全く想像しようがないため、日本に存在する車両のどれぐらいの率をカバーできるか見当がつかない、という現状もあります。

そこを実証実験でどれぐらいデータが取れるかを調べているのでしょう。

地味なパネル一枚の展示だけでしたけど、こんな感じでふと目について話を聞いてみたら勉強になることも多かったわけです。

こういうところに注目するとそれはそれで楽しいですよ。

とは言いつつ、このカーメイトの事例以外に選定された28案全部に目を通してみて感じたことですが…

どれもアイディアと効果という面でイマイチ

と申し上げざるを得ません。

高速道路の逆走に関してはうっかりミスによる侵入は一定の確率で存在しますが、故意や認知障害により自分が逆走していることを理解できない人もそれなりに存在します。

逆走に関してはこちらが割とよくまとまってました。



国土交通省の公募要件は「逆走の認知」と「警告」に主眼が置かれていますが、そもそも故意や認知障害のドライバーにはいくら警告をしてもそれに気付かないケースがかなりあるわけです。

特に認知障害の場合は自分が悪い事をしているという自覚そのものが無かったりするわけですから。

そうした車両による事故を防ぐためには、物理的に走行不可の状態にすることしか有効な手段はありません。
極論のようですが、当該車両と正面衝突という二次被害は絶対に防がなければなりません。
有効策とは、二次被害を絶対に防ぐという大前提が必要だというのが当方の考え方です。

現在世の中に存在する逆走防止技術の中で、こうした視点で最も効果が見込まれるのは逆走すると強制パンクさせるトラフィックスパイク(TRAFFIC SPIKES) の設置以外に方法はありません。

trafficspike.jpg

トラフィックスパイクはいろんな種類があります。


NEXCOではトラフィックスパイクほどの効果はありませんが、逆走すると衝撃を与えることで注意を促すウェッジハンプと呼ばれる装置の導入を進めています。

wedgehump.jpg

衝撃を与えるだけで物理的に走行不可にするわけではないため、これで異常を感じて逆走を防げるケースがどれぐらいあるかは未知数ですが、とりあえず何も無いよりはマシかもしれません。


これらに対して公募を通った28案を見ると、どれも効果が見込めないばかりか、ETC2.0ユニットを製造販売するパナソニックなどはETC2.0を使ったソリューションなど自社(およびETC2.0を推進したい国土交通省)への利益誘導以外何物でもない、みたいな案まで存在します。

TMS2017に出展していたカーメイトも志があることは否定しませんが、やはり自社に有利な規格策定を目指しているわけです。

国土交通省は2020年までに逆走防止ゼロを目指すと宣言していますが、正直言って実証実験でこのレベルだとすると単に逆走防止を名目とした新たな利権構造が生まれるだけじゃねーの?と穿った見方をしてしまったりもします。


実現すべきことは何か?
──正しく運転しているドライバーの命を守ること。


この当然のことを実現することを出発点としながら、実態は妙な方向に行きつつある、ということを知ることができただけでも、TMS2017へ行った甲斐はありました。

この件については今後も継続してうぉちしていこうかと思います。



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