戦慄のゲンロンカフェ@VOLVO STUDIO AOYAMA

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青山通りの表参道から赤坂辺りは輸入車、特にプレミアムからラグジュアリーセグメントのショウルームが軒を連ねる、高級輸入車銀座とも呼べるエリアであります。

このエリアにショウルームを構えることは輸入車ブランドの勢いを誇示する意味でも非常に重要な意味を持ちますが、当然賃料も高くそう簡単に実現できるものでもありません。

高級車であればブランド価値向上の投資の意味合いで出店することも可能でしょうが、大衆セグメントで店を構えるのはかなりハードルが高いと言えます。

かつて勢いのあった頃のシトロエンは南青山にショウルームを構えておりましたがすでに撤退。

2008年には外苑前にフィアットがショウルームと情報発信拠点を兼ね備えた「フィアットカフェ」をオープンし、フィアットの普及に多大な貢献をしましたが、2014年9月に『実写版ルパン三世』のコラボで「ルパンに盗まれた!」という体で閉店。映画の内容とも相まってなんともグダグダな感じの撤退になってしまいました。

フィアットカフェ、ルパンに盗まれてオチもなく閉店


それ以降、(一時期DSのブランド独立に際して一号店をこの界隈に…みたいな話もあったようですが)大衆ブランドのショウルームの動きは見られませんでした。

ところが今年の5月にボルボが青山ショウルームをオープンするという予告看板が掲示されました。
大衆ブランドからプレミアムブランドへと移行を進めているボルボなのでこの動きは理に適っているとは思うのですが、テナントスペースがそれほど大きなものではないことからどういう施設として展開するのだろう?という疑問がこの掲示を見た時に一番最初に感じたことでありました。

で、8月になるといつの間にやら看板の表記が差し替えられておりました。
ボルボを取り巻く環境は特に大きく変化したとも思えませんでしたし、何よりもうテナントは確保済みであったため、なぜ延期になるのかわけがわかりませんでした。

その理由が、こういうことだったとは…

正直言うと驚いたのと同時に「大丈夫?」という心配の念が浮かびました。


昨今のボルボはプレミアム路線を強化していて、それに相応しい客層を獲得しようというプロモーション展開をしているのは既知の通りです。

“VOLVO×ART”

のスローガンを元に諸橋近代美術館でイベントを開催してたりしましたね。

つい先日も公益財団法人日本文学振興会の「人生に、文学を」プロジェクトに参画し、小説による商品紹介というコンセプトである「小説家が書いたカタログ」を展開していたりします。
(この件で言いたいことが山ほどありますがそれはまた別の機会に)


こんな感じで昨今のボルボは「なんとなくプレミアムな輸入車に興味がある層」から、「アートや文学といった芸術に自身の価値観をしっかり持った層」に客層をシフトさせたがっているようであります。

逆に言えば、「ボルボに乗る者は本物を見極める目を持っていることを要求されている」とも言えます。


「誰でもいいから買ってくれ」

という台数を追い求めるスタンスから

「ボルボの価値を見極められる人だけ買ってくれればいい」

という一人一人の顧客ロイヤリティを高める方針への変化と言っていいでしょう。

大意では「選択と集中」ではありますが、要は客の選別であるわけです。

こういうのって結構息苦しかったりもするもんですが、販売現場がそれで困らないのであれば戦略としては意義のある取り組みだと思います。

何度も引き合いに出して恐縮ですが、「せつないボルボさん:その1その2その3」な頃に比べればなんと筋が通っており、かつ自信に満ちた態度なのでしょう!

で、話はこれで終わりません。

10月17日にオープンするボルボスタジオ青山ですが、情報発信拠点としての役割を持たせることは大賛成なのですが、よりによって組んだ相手が東浩紀氏率いる『ゲンロン』軍団であります。

『ギートステイト』という作品で一時期仕事をご一緒させて頂いた縁もあり、東さんがどういう方かは多少なりとも存じ上げており、(仕事の案件は飛びましたが)個人的に東氏に対する悪印象は特にありません。

そのスタンスで申し上げても、東氏は良くも悪くも劇薬です。

それは度々twitterで騒動になっているやり取りを見て頂ければご理解いただけると思います。
(可燃性が高いのでtogetterまとめ辺りを見て頂くのが一番かと)

ただしこの騒動の原因の大半は批評家、哲学者としての東氏の膨大な思考のアウトプットに依るものであり、その一部を切り取られての炎上であるわけです。

その発言内容の是非についてここで触れるつもりはありませんが、とにかく受け止める側にも思考を強要するスタイルである、と言えます。

本来の東氏の活動は“会いに行ける哲学”がコンセプトのイベントスペースである『ゲンロンカフェ』 での活動と、東氏の思考のアウトプットである『批評紙ゲンロン』 といったものがあります。

これらを目に通された方であれば感じられるであろう、ものすげー情報量と多層的な思考プロセスは、ある意味人を選びます。

イベント終了後やゲンロン読後は充実感はもちろんありますが、それ以上にものすげー頭が疲れるんですよ。

もちろん東氏も対象がボルボオーナーおよび潜在顧客層であることは理解した上での運営を心がけるでしょうが、第一回のテーマが「『観光客の哲学』から考える都市文化」ですから、もう最初からゲンロンカフェのノリをそのまま持ってくる気マンマンです。

しかもこのテーマ、ゲンロン0で語られている内容をある程度押さえておいた上で参加しないと、恐らく話のペースにまるでついていけないと思います。

まさに一見さん殺しであります。


もちろんこれをきっかけにゲンロンに興味を持つボルボオーナーおよび潜在顧客が生まれることを何ら否定するつもりはありませんし、むしろそうであって欲しいと思います。

しかし、東浩紀というアクが強すぎるキャラクターゆえに逆の意味で客の選別が進んでしまいそうな諸刃の剣にならんかねぇ?などといらぬ心配もしてしまうのでした。

ボルボスタジオ青山ではゲンロン含めて4つのカルチャープログラムを週替わり月一回のペースで展開するそうです。

サザンのベーシスト関口和之のライブ、美術手帖のアートトークイベント、スウェーデンにちなんだワークショップといったプログラムが予定されておりバランスを取っているように見えますが、ゲンロンだけが突出して熱量が高い気がしますw

とはいえ当方にとっては五反田に比べりゃ会社帰りに気軽に寄れそうなのでちょっと覗いてみたい気にもなります。

それにしても、フィアットカフェの撤退から3年。

青山界隈にクルマ関係の情報発信基地が出来るのはそれはそれでちょっと楽しみであります。

本来ゲンロンとは言わないまでも、外苑前のレクサスがこういう取り組みを積極的にやるべきだと思うんですけど、未だに車を並べるだけの単なるショウスペースでしかないのは、いったいアレで何を訴求したいんでしょうね?

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