今年はルノーがプジョーさんより売れるかもしれないという話(1)

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【今北産業】(今来た人に3行で要約)
 ・輸入車市場が好調で20年ぶりに年間30万台突破か
 ・裾野の広がる大衆ブランド
 ・注目すべきAセグメントの動き


輸入車市場が全般的に好調です。
メルセデスの勢いが止まらないというのはニュースなどで目にされている方も多いかと思います。

しかし他のブランドも総じて前年対比で昨年を上回る実績を上げており、上位20の主要ブランドで5月末時点で前年割れしているのは

Audi96.4%
Fiat89.5%
Land Rover92.7%
Alfa Romeo74.8%
DS87.1%
 
だけとなっており、ディーゼルゲート事件で大きく後退を余儀なくされたVWでさえも前年を上回る台数が売れているわけです。

2016年の年間輸入車登録台数は294,063台であり、前年比+2.1%の推移で伸びていけば念願の30万台到達が見えてきました。

奇しくも前回の年間30万台越えは1997年でしたので、実に20年ぶりの活況ということになるわけです。
あまり先の話をしてもしょうがありませんが、関係者の鼻息が荒くなるのもわからなくはありません。

ですが、この年間30万台という目標は達成するだろうと個人的には予測しています。

その根拠となるのが今回のエントリーで話題にするルノーの好調です。


■今の輸入車市場のトレンド
一般的に輸入車に対するイメージは高級車といったイメージを持たれるかと思います。
数字の面で行っても、確かにそれはある面においては事実です。

例えば2016年の実績を例にドイツ勢の高級ブランドであるメルセデス、BMW、アウディの実績を見てみましょう。

1位 Mercedes-Benz67,378台
2位 BMW50,571台
4位 Audi28,502台
3ブランド合計146,451台

2016年の輸入車全体の合計は294,063台でしたので、この3ブランドで全体の半分となる49.8%を占めています。

一方でVW、BMW MINI、Volvoを始めとした大衆ブランドも約12.5万台ほどの市場を形成しています。
(定義が難しいのですが上限としてBMW MINI、Abarth、DSまでは大衆ブランド派生とカテゴライズしました)

大衆ブランドは全般的に高級ブランドに比べると価格も車格も低く抑えられており、その分台数が多く売れる傾向があります。
もちろん顧客のニーズが合致すれば、の話ですが。

特に輸入車が獲得を狙っている国産車からの乗り換えについては燃費や先進装備面、価格面でもそれほど大きな差はなくなってきているので、顧客獲得のチャンスが到来していると言えます。

各メーカーの努力により輸入車の選択肢が広がったことで高級ブランドだけでなく大衆ブランドまで需要のすそ野が拡大していることが、昨今の輸入車市場の好調を支えていると言えます。



■Aセグメントの位置付け
Aセグメントは主に全長が3750mm以下の車種の分類となります。
日本で言うと軽自動車やトヨタ『PASSO』などの小型車に相当します。

ちなみに欧州車の最大のボリュームゾーンであるB/C/Dセグメントの目安は以下の通りとなります。

Bセグメント 全長4,200mm以下
Cセグメント 全長4,500mm以下
Dセグメント 全長4,800mm以下


日本という特殊性の高い市場で輸入車が勝負しようとするならば、まずは一番ニーズの厚い層のラインナップを強化するのが必然です。

そのため高級ブランドが強い日本では輸入車はC~Dセグメントがボリュームゾーンとなります。

それに続くのがBセグメントとなり、この辺りはどのメーカーも積極的にラインナップを充実させています。

それに対してAセグメントは本国でラインナップしていながら国内市場への投入に消極的な姿勢が目立ちます。

理由は様々ですが、一般的にAセグメントは単価が安くその割に台数があまり見込めないため利益を出すのが難しいという要因が大きかったと言えます。

BMWに買収される前の『クラシックMINI』やルノー『Twingo』、スマートの『fortwo』といった限定的なヒットがあったものの、マニア向けの域を出ず市場の形成までには至りませんでした。

その流れが大きく変わったのが2008年にFiatが販売を開始した新型の『500』シリーズでした。
(2002年に『BMW MINI』が発売されるがクラシックMINIより巨大化しBセグメントへ移行)

構造こそ違うものの往年のチンクェチェントを彷彿とさせるデザインによってポップアインのポジションを獲得し、唯一無二の存在感を発揮してきました。

500の成功を受けてフィアットはアバルト仕様の追加や細かい限定仕様を次々と投入することで国内市場で大きく存在感を発揮するようになりましたが、これに追従する動きはあまり見られませんでした。

2012年にVWが日本市場への取り組み強化を狙い、世界戦略車である『up!』の国内導入に踏み切りました。

VWは遡ること2001年から最少クラスである『LUPO』を販売していましたが、セールス不調により2006年で販売を終息しており、6年ぶりのAセグメント参入となりました。

up!については国産車からの乗り換えを促すために158万円~という戦略価格とこのクラスとしては珍しかった自動ブレーキを標準装備し、CMには久保田利伸を起用するなど、並々ならぬ力の入れようでした。

その取り組みは当BLOGでも下記のエントリーで触れていたりします。


up!の戦略に見るブランド忠誠度とグッズの関係について


しかし当初軽自動車と同じぐらいの値段で買えるということで大いに注目されたものの、up!が採用したシングルクラッチトランスミッション(ASG)の独特のクセが敬遠され、VWが当初目論んでいたほどの実績を上げることができませんでした。
(ATの構造的はFiat500と同様なのですが、VWというブランドに消費者が求めるものは違っていたという厳しい現実となりました)

またFiat500が君臨するおしゃれなポップアイコンの座も射落とすことはできず、なかなか厳しい戦いを強いられています。

そうした流れの中で次に放たれた矢がスマート&ルノーの共同開発となった『新型smart/Twingo』でした。



なんと本題に触れることもなく後編につづく。


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