VWはどうやってシェアを拡大するつもりだろう?



今回は2013年5月頃に書きかけだったお話。


VWは日本での販売台数を、現在の年間約5.6万台から2018年には倍増の11万台を目指すとしている。
独VW、日本で販売倍増 18年までに11万台
独フォルクスワーゲン(VW)は2018年までに日本国内の年間販売台数を11年比2倍超の約11万台に引き上げる。10月に排気量が約1000ccの小型ガソリン車「up!(アップ)」を発売するほか、14年にもディーゼル車の国内販売を再開する。販売店の数も現状比1.3倍以上に増やす。ユーロ安で日本市場での収益性が高まっていることもあり、事業強化を急ぐ。
昨年9月にup!の国内導入を皮切りに、国内での販売を強化するという報道があったわけだが、現在の日本の輸入車市場がピーク時に約25万台を記録してからなかなか市場の拡大は進まない。
その中でVWは徐々に販売台数を増やしていて、上記のとおり2012年は5.6万台と約23%ほどを占めている。

これを倍増させるためには、大きく分けて2つの戦略が考えられる。

 (1)国産車から顧客を奪う拡大路線
 (2)限られた輸入車市場の顧客を奪うパイの奪い合い路線

日本の輸入車市場は多様化が進んでおり、好きでそのブランドに乗り続けているオーナーが多く、身内で食い合ってシェアを倍増させるには限度があるので、(2)の路線は主軸にすることは考えにくい。
(特徴の無い某フランス勢からVW&アウディに流れる話はよく聞くが…)

ってことで必然的に市場全体の95%を占める国産車の顧客をどう奪取していくか?という戦略になろうかと思うわけだ。

最初の一手となったのは、エントリークラスのup!の導入。
149万円~というインパクトのある価格設定で、輸入車でも手が届くということで注目を集めることに成功した。

そして新型ゴルフVIIの先行受注を発表した。

新型ゴルフ導入記念限定車「ゴルフ デア・エアステ」先行受注開始(PDF)
普通に考えれば、低価格車、そして大黒柱となる車種を主軸として一気に攻めてくるものと思われたが、どうも様子がおかしい。

国産車の顧客を奪うために必要な戦略は、

(a)国産車に負けない価格で攻める
(b)国産車に負けない商品力で攻める
(c)国産車に負けないラインナップで攻める
(d)徹底的な宣伝でブランド力を高める

このあたりになるだろう。
少なくとも、輸入車は割高だという事実に対する回答として、同等装備で国産車と差が無いぐらいの価格を実現しなければ、インパクトを与えることは難しい。

「up!がその答えだ」ということもできるが、あれはその割に次の一手ゴルフVIIの先行受注車の価格が思ったほどインパクトが無かった。

そして、たて続けにこんなプレスリリースが出された。


猛烈な円高の時はちっとも値下げしないのに、円安が始まるとあっという間に値上げかよ!

といったツッコミが溢れているが、実際のところ値上げによってVWの国内戦略が修正されたのではないか?という疑念を持った。

少なくとも(a)の戦略については一歩後退したことになる。

ゴルフVIIは先行受注車の後にも多彩な仕様を投入してくることは明白であり、その中にはエントリーグレードとして最も簡素な仕様で低価格を前面に押し出したグレードも投入されると思われるが、少なくとも先行受注車の価格設定から見ると、いわゆるかつてない戦略的な価格設定というのは期待できなさそうだ。

そこで想定されるのが(b)と(c)だ。
国産車も安全装備などのオプションを追加して行くと、総額としてはけっこうな額になる。
VWは逆に、標準仕様にも各種オプションを最初から贅沢に搭載することで、相対的な価格競争力を演出しようとしているのではないかと思われる。

また、既定路線ではあるがディーゼル仕様や場合によってはMTの導入など、細かなニーズを満たすラインナップを充実すれば、それだけでも国産車と互角に戦えるようになる。

これであれば、消費者にとっての選択肢が広がることになるので歓迎だ。

しかし、もしVWが(d)を考えていたりすると厄介だ。

フォルクスワーゲン報道官のCMのように、国産車と同等のマーケティングを仕掛けてくるならまだいいのだが、宣伝によって高いものでさえ魅力的な商品と認知させることに成功したら、国産車から乗り換えという需要がどこまで伸ばせるのか未知数になる。

もちろん高くてもたくさん売れるのが理想ではあるが、世の中そう簡単にいくものでもない。

VWが今後どう攻めていくつもりなのか、引き続きうぉちしていくことにしよう。

今こうして読み返してみると、かなりの脱力感を抱くエントリーではありますが、背伸びし過ぎて自滅してしまったというところでしょうかね。

失われたブランドイメージを回復させつつ日本市場で年間11万台を本気で狙うとしたら、販売店を国内500店舗(現在の2倍)程度まで増やす必要があるでしょうし、商品価格も国産車と同等に設定しないと苦しいと思います。

VWのミッションは「輸入車」「国産車」という垣根をなくし、選択肢として国産車と同じテーブルに載せてもらえるようにすることなわけですから、知らない間にジリジリと値上げするようなセコいことはせずに正々堂々と国産車に戦いを挑むべきではないでしょうかね。

そのためには他のメーカーに比べていびつな車種ラインナップも見直さなければならないので簡単なことではありませんが。 








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