昨年VWがやらかしたせいでいわゆるカタログ燃費と実燃費の乖離が注目されるようになりました。
(それよりも排出ガスの方が本当は問題なんですが)
日本ではJC08と呼ばれる測定方法に基づいて燃費が公表されていますが、実際に乗ってみるとその乖離が大きく問題になっていますね。
じゃあ、第三者に客観的に調査してもらいましょうってことでPSAグループがTransport & Environment(T&E)とFrance Nature Environmen(FNE)という2つのNGOと共同で実燃費を調査、その結果を発表しました。
最近のPSAはなにか情報を積極的にオープンにしていこうっていう大きな方針でもあるんですかね?
今年の初めにはプジョーシトロエンジャポンが過去の車種別の国内販売台数をいきなりぜんぶ公開して俺の中の全仏が熱狂しましたが、本国においてもメーカーが実燃費の計測に協力するっていうのは、あまり例がない気がします。
もちろんこれが消費者にとってPSAに対する安心感や信頼性を高める効果に繋がればブランド戦略としては成功となりますので、変に小細工せずにきちんと自分たちのクルマを評価してもらおうという正直な姿勢の現れなのかもしれません。
で、その調査ですが。
測定に関してはEUのRDE(Real Driving Emissions:実路走行試験)に基づき
・都市部 25km、郊外 39km、高速道路 31kmを走行
・エアコンを使用
・複数名乗車に加えてラゲージに荷物を積載
この条件で測定を行っております。
資料として公表された数値が「L/100km」という、『100km走るのに何Lの燃料を消費したか?』という欧州基準になっていましたので、これを日本流の「km/L」の『1Lの燃料でで何km走れるか?』の基準に変換したのが以下の表となります。
(ついでにカタログ達成率も追加しておきました)
▲見づらい…クリックで拡大します
PSAの主要30車種において計測を行っていますが、表記のないものは基本的にMT仕様での計測となりますので、日本におけるATを前提とした数値に比べると全体的に高く出る傾向があります。
で、結果を見てみると実際の計測とカタログ値の差異は車種によってバラバラではありますが、達成率で見るとおおよそ68.5%前後となっております。
(DSだけ71.3%と乖離が少ないですね)
日本車でもカタログ値の6~7掛け程度と言われてますので、欧州市場のメインストリームの車種においても同等の傾向ということになるでしょうか。
しかし個人的にはこの結果をもってしても、実燃費の一つの側面を明らかにしたに過ぎないと考えております。
国によってクルマの使用環境は大きく異なっており、同じ国の中でも都市部と郊外、長距離運用と短距離運用、同乗者の有無などによって燃費が影響を受ける要因はさまざまです。
今回の調査条件に近い使用方法の人には参考になる数値ではありますが、そうでない人にとっては「ふーん」という程度の話になってしまいます。
「お前が食うメシと俺が食うメシの量が違うのは何故だ?」
とか聞かれても、そりゃ知らんがなって話です。
つまり、万人を納得させる燃費基準というものは存在しないのです。
それゆえにカタログ燃費は単なる指標であって、それを参考に自分の運転状況から実燃費を想定するしか方法はありません。
とはいえ、PSAは今後使用環境を入力することで実燃費に近い数字を表示する燃費シミュレータを年内に公開し、エコドライブを推進するためのアプリも開発するとしています。
燃費が悪いのは、悪くなる乗り方をしているからです。
その原因を突き止め、アドバイスを受けられれば実燃費の向上も夢ではありません。
アプリがODBIIポートから情報を取得して分析するレベルのものか、単に加速度センサーを使って急加速、急減速にアラートを出すだけのものかはわかりませんが、今後テクノロジーはこうしたドライバー支援の方向に向いていくのではないでしょうか。
そしてその支援のためにあらゆる走行データ(場所、時間、速度、アクセル開度、スタリング操作量、ブレーキ操作量、空気圧、車載重量、運転中のバイオリズム、健康状態などなど)をビッグデータとして吸い上げられ、あなたのプライバシーは丸裸に…というディストピアの到来ももうすぐですw
ちなみに、無料で使えるYahoo!カーナビアプリには運転分析機能が搭載されていて、これが意外と楽しいのでエコドライブにチャレンジしたい人はYahooの捨てアカを用意して使ってみるといいんじゃないでしょうか。
[追記]
PSAから出たプレスリリースでは触れられていなかったのですが、AutoExpressがこの件の報道に関して、もう一つPSAグループのトピックを掲載しています。
欧州では厳しい環境規制を敷いており、CO2平均排出量に関しても一定レベル以上の企業にはペナルティを課しております。
CO2の排出量に関しては一般的にコンパクトカーを主力としたメーカーの方が有利であります。
エコカー率が高いからですね。
それに対して高級ブランドやパフォーマンスカーを主力とするメーカーはどうしても燃費やCO2の排出量が増加するため、それを穴埋めするためにEVやPHEVの開発を強化しています。
特にPHEVに関しては高級ブランド優遇施策という指摘もありますが、とにかくCO2の平均排出量は下げる努力に躍起です。
そういった状況において、プジョーとシトロエンがCO2の排出量が欧州で一番少ない企業という栄冠を勝ち取っております。
2014年はルノーにその座を奪われておりましたが、奪還した形になりますね。
その原動力となったのが新プラットフォームを採用したモデルチェンジとエンジン・オブ・ザ・イヤーを獲得した3気筒PureTechシリーズが主要車種にラインナップされたことであり、これによりCO2排出が大幅に削減されたわけです。
幸か不幸か、PSAのEVおよびHYbrid4はセールス的に芳しい結果を上げることができず、結果としてBlueHDiとPureTechエンジンによってCO2削減を達成したという意義は大きいと言えます。
日本においては燃費ばかりがクローズアップされCO2排出量が少ないということがあまりセールポイントとして響かないのですが、素性の良いエンジンを搭載したプジョー&シトロエンというイメージはもうちょっと広まってもいいんじゃないかと思いましたとさ。
この記事へのコメント