JAIAから5月の輸入車登録台数の発表がありましたが、報道にもあった通りVWがいわゆる「ディーゼルゲート事件」の影響で販売を落とし続けていたところ、ようやく復調の兆しを見せてきました。
日本の輸入車市場は1988年に初めて年間10万台規模を達成し1996年にピークとなる約32.5万台を達成するまでになりましたがその後景気後退などの影響を受け徐々に減少。
2008年のリーマンショックの影響を受け2009年にはピーク時から半減となる年間159,102台まで市場がシュリンクしてしまいました。
しかしその後日本車が狂ったようにエコカー一辺倒に走ったのに対しクルマ本来の魅力を訴求し続けたことで市場は急速に回復。
2014年には年間288,699台を記録し悲願の30万台まであと少しと迫ったところで発生したのがVWのディーゼルゲート事件でした。
VWが販売を落とすのは当然でありましたが、その疑いの目は輸入車全体にも向けられ、メルセデスやBMW MINIなど一部好調なブランドがあったものの、全体の足を引っ張る結果となりリーマンショック以降の右肩上がりが初めてマイナスに転じました。
この影響がどこまで続くのか?
直接的な関係はありませんが、フォードが日本市場の成長性に見切りをつける形で完全撤退を発表したのは1月の話です。
フォードが日本市場から完全撤退へ
輸入車好きにこのニュースはかなりの衝撃が走りました。
他のブランドは大丈夫なんだろうか?、と。
国産車においては市場の4割を占めるまでに至った軽自動車が前年比で2ケタ減を記録しており、維持費の上昇や所有のあり方も変容している中、日本における新車販売はピークアウトを迎えたと考えるのが妥当でしょう。
つまり全体のパイは増えないので、残された市場を国産車と輸入車で奪い合うことになる、ということです。
今後を占う上でディーゼルゲート事件の影響がどのあたりで終息するかというのは一つの指標となります。
ここで直近3年間の輸入車の月間販売の推移を見てみましょう。
全体で見ても、昨年9月より前年割れの状況が続いておりました。
特に年度末決算の大盤振る舞いでも前年割れと厳しい現実を突き付けられた格好です。
しかし、4月に入るとこれが一転して前年そして好調だった前々年を上回っています。
この好調の主な要因はメルセデスの躍進とVWの復調にあります。
ってことでこの両ブランドの推移を見てみましょう。
メルセデスはすでにピークアウトの感もありましたが、積極的な新型車の投入xパワートレインの多様化により好みに応じた多数の組み合わせが可能となりました。
VWに関しては5月17日に主要モデルを値下げした新グレードを発表しました。
これが奏功した結果となり、『ゴルフ』が前年同月比+14.6%、『ポロ』が同+0.6%と主力車種が販売を伸ばしました。
中でも今年1月から販売を開始した新型『ゴルフトゥーラン』が前年同月比200%というのは景気のいい数字ですが、モデル末期と比較してどうなのよ?という指摘はとりあえず置いておきます。
ゴルフの好調はこのゴルフトゥーランに支えられているものとも読み取れますので、いわゆるハッチバック&ワゴンという本流のゴルフが復調したと断定するにはまだ早い気もします。
しかし、ポロは200万円、ゴルフは250万円を切る価格から買えるようになり、その他のグレードも先進安全装備を採用しながらリーズナブルな価格設定をしてきましたので、ジワジワと値上げを繰り返してきたVWが再び安くて実用的な大衆車というポジションに復帰したということになります。
あとはVWに対する消費者マインドが回復すれば販売も伸びると思われますが、一つの指標としてこんな感じであります。
5月21日、22日には、東京・お台場でカスタマーイベント (フォルクスワーゲン デイ 2016)を開催。各種プログラムを通じて、2日間で約9,500名の消費者と接点を持った。
昨年同様にお台場で2日間にわたって開催されたVW Fest2015では2.4万人を集めてゴキゲンでしたので、今年はお祭り的な演出を自粛していたとはいえこの数字はちょっと寂しいものがありますね。
VW FestもVW Dayも、オーナーとの交流の場だけでなくVW車の販促イベントの側面がありましたので、ここで集客が半減しているというのは見込み客の獲得にはまだしばらく時間を要する感じもありそうです。
とはいえ三菱自動車やスズキの不正が表立ったことでVWに対する潔癖なまでの拒絶反応は薄らいだのは事実でしょう。
そうなると消費者心理というのは現金なもので、安くていいモノを選ぼうとするんですよね。
冒頭で限られたパイの奪い合いという話をしましたが、相変わらず国産車がだらしない状況にある中、商品力とブランド力による訴求で輸入車が伸びる可能性はまだまだあると感じております。
さて、VWの復調は本物か?
個人的には一昨年には及ばないとしても前年を上回る実績は上げてくるだろうと見ております。
まずはそこからですね。
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