TBSラジオがポッドキャストを終了

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※現在のポッドキャストでの配信は2016年6月いっぱいをもって全て終了となります。
長い間ご利用ありがとうございました。
お手数をおかけしますが、今後は「TBSラジオクラウド」をご活用ください。

突然の発表で騒ぎになっているようだが、TBSがポッドキャストによる配信を止めてストリーミング視聴型の新サービス『TBSラジオクラウド』をスタートするという告知だ。




ポッドキャストに関しては3年前に波乱があった。
その時点でこの未来は予想出来ていた。

「金にならない」

至極シンプルな理由によってTBSラジオのポッドキャスト配信は終了を迎える。



日本のラジオ界において聴取率トップのTBSラジオがポッドキャストを終了するということは、ポッドキャストという文化そのものの実質的な終焉を迎える時が来たと解釈することもできる。

番組をリアルタイムで聴き逃しても、抜粋でもいいから公式がポッドキャスト配信をしてくれることで、その番組をキャッチアップすることが出来ていた。

この仕組みがあることで、時代のニーズである

「好きな時に好きな方法で聴く」


ことが担保されていたと言える。

問題はこの「好きな時に好きな方法で聴く」ことが後継サービスで可能なのか?という点だ。

TBSラジオのポッドキャストは番組によりけりだが最短一週間で配信終了してしまう。

その間にポッドキャストとして手元にダウンロードしておけば、自分の好きなタイミングで何度も聴き直すことができる。

それに対して後継サービスである『TBSラジオクラウド』はストリーミング視聴となるため手元にファイルを保存しておくことが出来ず、また配信終了されてしまうと聴く手段そのものが消滅してしまう。

これはコレクション性が著しく後退することを意味する。

過去の例から見ても、TBSラジオがコンテンツを永久に配信し続ける可能性は極めて低いからだ。


かつて

「インターネットにある情報は無限に存在し続ける」

という夢のような未来が語られたりしたもんだが、現実は

「いつの間にか消えていた」

ということがいとも簡単に発生してしまうことが知れ渡った。
そう、配信元のサーバから消えれば、それを取り戻すことは(基本的には)できないからだ。


とはいえ、マネタイズできないポッドキャストを慈善事業として維持するにも限界があることは理解すべきだ。

自分で作ったコンテンツをダウンロードさせるだけなのになんで赤字なの?と思う人に知っておいて欲しい事は、ポッドキャストのファイルをサーバに置いて管理する費用、そしてそれを多くの人が猛烈にダウンロードすることで発生するトラフィック(データ通信)にも莫大な維持費が掛かっていることは常識として知っておくべきだ。


youtubeにあるからいいや、という考え方にも異論を唱えておきたい。

配信されたポッドキャストを不法にyoutubeに上げて広告収入を得ている輩は、TBSラジオが得るべき利益を不当に横取りしている事実にかわりは無いからだ。

こんな事態になるぐらいだったらTBSラジオが公式にyoutubeにコンテンツをアップロードすりゃ万事OKだったじゃないか、とも思うわけだがそれはやらなかったのである意味自業自得とは言えるのだが。

今後は独自のサービスでマネタイズを目指すと言うが、ハッキリ言って成功するとは思えない。
あくまで広告の最適化によって利益を得るという放送局のスタンスに縛られた『TBSラジオクラウド』は、利用者側に強いる枷があまりに多いからだ。

昨今のパケット料金細分化の流れの中で、例えば格安SIMで運用している人は「自宅のWiFiでダウンロード、外出中に再生」というスタイルが一般的となっており、外出先でのストリーミング視聴を敬遠する傾向がある。

意外とストリーミングいう方式は人を選ぶという現実は忘れてはいけないポイントだ。


一方、伊集院光は朝の番組の一部を再編集してFeBeで有料音声配信として販売する方法を選んだ。


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これはTBSラジオクラウドとは別の取り組みだが、有料であること以外は従来のポッドキャストと使い勝手はまったく変わらない。

唯一違うのは、この有料音声配信はファイル形式はMP3だが、購入者の情報がMP3のファイルの中に暗号として埋め込まれているので、違法にネットに流したりすると誰が流出させたか特定することが出来るので、くれぐれもバカな真似はしないように。

一時期音声配信を仕事にしていた当方から言わせてもらえば、ユーザの利便性とマネタイズという方法論においてお互いが最も妥協できる方法は、このFeBeによる音声配信のやり方だと思っていたが、TBSラジオとしては全面的にこの方法を取り入れるつもりはなかったようだ。



今後想定される未来としては、

 ・ポッドキャスト文化の衰退
 ・番組のファン離れ
 ・Radikoで配信された番組の違法アップロードの増加

この3つが起こると予想している。


それを撥ね退けるぐらいの収益がTBSラジオにもたらされれば結果オーライということなんだろうが、そこまで熱心についてくるファンばかりではないので、結果として広くラジオ離れを招くことになるんじゃないかと余計な心配をしたくなる。

人間の時間は有限であり、優先度は利便性に左右されるということは言わずもがな、だ。


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