『Push to Pass』

psa-groupe-logo.jpg

カルロス・タバレスさんが指揮を執り、ガタガタだったPSAグループを『Back In The Race』というスローガンを掲げて再建に取り組んできました。

経営危機による迷走でコースアウトを喫してしまったPSAが、文字通り「レースに復帰する」ことを目指してリストラや販売促進のためにいろいろと手を尽くしてきたわけです。

それがようやく2015年実績において業績回復が見られ、一連の緊縮モードにもひと段落といったところでしょうか。


この動画のように、PSAに関係する人たちが「We are Back In The Race」と口にすることで自身を鼓舞することはとても大切だと思います。

自信を取り戻して高いモチベーションで前に進む。

業種は違いますが、日本でもシャープという企業がPSA同様混乱の中から再建のために努力をしています。

同じように自信を取り戻して素晴らしい製品を世に送り出してくれるようになることを願っております。


話が逸れました。

レースに復帰を果たしたPSAの次の目標は、ライバルを追い越すためにプッシュすることです。

それがこれからのスローガンである『Push TO Pass』に込められているんですね。



これに伴い社名も従来の『PSA Peugeot Citroen』から『Groupe PSA』へと変更しました。
いろいろと新たなフェーズに入る決意が感じられますね。

で、この『Push to Pass』戦略でありますが、中期経営目標がどの程度達成できるかがカギとなるでしょう。


■中長期経営目標
 -パフォーマンス向上と、コストの徹底的な見直し
 -2016年から2018年までの自動車部門における平均営業利益率を4%、2021年に6%を目標とする
 -2018年までにグループ全体の売り上げを2015年比10%アップ、2021年までに15%アップを目標とする
 -26モデルの乗用車と8モデルの商用車を生産し、毎年3ブランドで各リージョンにおいて最低1台の ニューモデルを発表する
 -7モデルのプラグイン・ハイブリッドと4モデルの電気自動車、そしてネット接続された自動運転プログラムの導入に代表される、充実した最先端の技術戦略を継続する


売上と利益率のアップを目指すとなると、高い付加価値を付けてより高いお金を払ってもらう事を目指すわけです。

それを達成するためには魅力的な車種、装備を揃える必要があるわけですが、乗用車26モデル、商用車8モデルを投入するとしています。

しかしこの話、2014年に語られた内容と変わってはいないんですね。

PSAの再生プラン、車種を大幅に削減へ


2022年までに今まで45車種あったところを26車種に削減するという話が粛々と進んでいるだけであり、ボディバリエーションに関してもHBとSUVを主軸として従来のように各セグメントでのバリエーション展開は期待できません。

採算が取れない車種は開発できない事情は理解できますが、208cc、308ccが存在しない今、何かしらのオープンボディが欲されているのも事実ではありましょう。

PHEV&コネクティッドカーに関しては世間のトレンドをしっかりキャッチアップしていきます宣言以上のものは感じられません。

ディーゼル+電気のHYbrid4に関しては販売が低迷しており、今後発売される車種に関しては仕切り直してガソリンエンジンを主軸としたプラグイン・ハイブリッドの路線を強化するようでありますが、その素性がまだハッキリしませんね。

単なるハイブリッドでは環境規制をクリアするのが難しいことに加え、より高い付加価値を提供しようとすると欧州では特にPHEVであることが重要でありますので、その流れに乗っているだけとも言えます。

少なくともこちら方面の投資は資本提携に絡むゴタゴタで何度も中止、変更を余儀なくされており、サプライヤーの力を借りても他社に先駆けて先進的なものが出てくる可能性はそれほど高くはありません。残念ながら。

それと日本のリリースでは触れられていませんが、北米市場への再参入の意向が表明されています。

2017年より

(1)戦略パートナーであるボロレ社と共同でカーシェアリング事業
(2)PSA車両によるカーシェアリング事業
(3)PSA車両の現地販売

という3段階による北米市場での事業展開を計画しており、すでに現地法人を設置して準備を進めているとのことです。

いきなり販売ではなくニーズのありそうなカーシェアリングから展開するというのは現実的な選択と言えるのではないでしょうか。

あれだけ激しい競争が行われている北米の自動車市場で一度撤退した企業が再び簡単にシェアを取れるとは限りません。

カーシェアリングの利用状況などから北米に適した仕様の検討などできることはいろいろあるかと思います。

ちなみに戦略パートナーであるボロレ社は昨年末にシトロエンが発表したEメアリの供給元であり、フランスで3月から事業展開を開始しています。

Eメアリはリースやカーシェアリングなど様々な所有スタイルに対応しています。

日本でもクルマの所有にこだわらない層が増えてきており、自動車メーカーは単にクルマを作って売るのではなく、その売り方にも様々な選択肢を用意しなければならない時代になりつつあります。

現在のディーラーはカーシェアリングの事務所として営業することになるかもしれませんし、自宅に駐車場を確保するということすら非現実的な時代になるかもしれません。

これは日本に限った話ではなく、世界的に人とクルマの在り方は変容しているわけで、それに備える必要があるということなのでしょう。

その意味でPSAの北米での取り組みに未来の姿が垣間見えるのかもしれませんね。


この記事へのコメント


この記事へのトラックバック