伊集院光とジェーン・スー



【今北産業】(今来た人に3行で要約)
 ・大沢悠里のゆうゆうワイドが終了。後継は伊集院光とジェーン・スー
 ・改変の狙いはリスナー層の若返りとスポンサーの獲得
 ・期待は大きいがパーソナリティにメンタル面での懸念も



Radikoに続いて難視聴対策としてのワイドFMが始まり、“ラジオを聴く環境”がようやく改善された。
これにより新たなリスナー層の獲得と、スポンサー獲得のチャンスが久しぶりにラジオ業界に訪れた。
4大媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の中で一貫して売り上げの落ち込みが続いているラジオが媒体として生き残れるかどうかの瀬戸際状態にあって、恐らく最後の大勝負とも言える大改編を4月にTBSラジオが行う。

既に報道されている通り、30年間続いた大沢悠里のゆうゆうワイドが終了し、その朝ワイド枠を伊集院光が受け持つことは大きな驚きをもって迎えらた。

伊集院光のエキレビの記事が割とくわしくまとめているので、面倒だからそっちをどうぞ。



 ・月~水:伊集院光が担当
 ・木:伊集院光+金曜担当パーソナリティの2人体制
 ・金:別のパーソナリティが担当
 ・放送時間は8:30~11:00
 ・月曜深夜の『深夜の馬鹿力』は当面継続

とまぁここまでが確定情報。

ではその後の時間は誰が担当するのか?というとここでまさかのジェーン・スー登場。



先週末の『相談は踊る』で本人から発表があったらしいが、聴き損ねてたのでニュースを見て驚いた次第。


ジェーン・スーが何者か?

これまた話すと長くなるので適当に検索してもらいたいが、いわゆるタマフル人脈(ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル経由でブレイクした人材)であり、本業は作詞家、コラムニスト。自称“未婚のプロ”を売りにしている。

毎週土曜日19:00~人生相談エンタテインメント『ジェーン・スーの相談は踊る』おもしろおかしく人生相談に乗るという番組スタイルを定着させた功績による抜擢と言っていいだろう。


この2人の起用により、高齢者層が圧倒的に多かった朝の時間帯の大幅な若返りを狙い、ラジオの活力を取り戻そうという狙いが透けて見える。


こうした若返りの取り組みは既に昨年から始まっていて、24年間続いた土曜朝ワイド『永六輔その新世界』が昨年10月に終了。

その後枠としてお笑い芸人であるナイツを起用した新たな朝ワイドが始まっている。

当初こそ聴取率は苦戦したものの、昨年末のレーティングでは永六輔の主なリスナー層であった60代の聴取率も回復し、一定の支持を得たというTBSラジオの編成側の判断もあったのだろう。


■若返りはできるのか?
結論から言えば、スタートからある程度の期間はリスナー層の大幅な若返りは可能だろう。

伊集院光のラジオパーソナリティとしての才能は疑う余地はないし、ジェーン・スーは自身をネタにすることでリスナーの共感を得やすいキャラクターであるため、ソーシャルメディアとの連携も含めた一定の盛り上がりを見せることは間違いない。

これは昼帯のキラキラやたまむすびの成功をトレースする形になると思われる。

一方で、熱心なリスナーほど脱落が早いかもしれない。

その理由は帰社倶楽部(元)さんのツイートが物語っている。

これは伊集院光がかつてANNから夜ワイド『伊集院光のOh!デカナイト』に進出したことで、毎日聴くことが出来ずに脱落した熱心なリスナーが意外と多かったという記憶にも当てはまる。

幸いなことに伊集院光自身は月曜深夜のラジオは継続すると宣言しているので問題ないが、ジェーン・スーに関しては新たなリスナー層の獲得の代償として、ある程度の脱落組を想定しなければならないかもしれない。



■両者に共通する懸念点
伊集院光というタレントはラジオパーソナリティとしての活動に最も力を入れており、公言もしている。

かつて日曜日に『日曜日の秘密基地』とあわせて週2本のレギュラーを持っていた時期もあったが、秘密基地を本人の申し出により降板している。

この際に語られた降板の理由は謎が多く、多くのリスナーがモヤモヤとした気持ちを抱えての終了となった。

伊集院光はたまにトークで語るように、メンタル面での好不調の波が激しい。

番組では不調を感じさせないトークを展開しているが、本人のストレスというのはかなり大きなものがあると想像される。

テレビの仕事を大幅に減らし、ラジオを中心として雑誌連載やテレビバラエティ企画など、その時の興味に応じて仕事量を調整するやり方をこの8年近く続けてきた中で、朝ワイドという帯を担当する決心をしたのは本人によほどの覚悟があってのことと思われる。

とはいえストレス発散の逃げ道として、金曜~日曜は番組を持たず、各地への放浪や興味を持ったことに時間を作れるシフトを組んでもらっているので、実際にスタートしてそれがどう回せるのか?というところを探りながらやっていくのではないかと思われる。


一方のジェーン・スーについては、人生相談をエンタテインメント化する才能はあるものの、ワイド番組のような仕切りの能力は今のところそれほど高いようには感じられない。

朝ワイドで人生相談を毎日やり続けるわけにもいかないだろうが、リスナーとしてはそこに期待する部分もあるだろう。

ドリアン助川がティーンの相談に真正面から応え続けたことで疲弊し活動を休止したように、人の相談を(エンタテインメントとはいえ)受け止めるというのはかなりの負荷が掛かる。

そうした重圧にジェーン・スーが応えられるかもまた、未知数ではある。

また本人が自虐的にネタにしている“未婚のプロ”という肩書きだが、ジェーン・スー自身は現在付き合っている彼氏がいることを番組内で明かしている。

婚姻関係を結ぶことが絶対の価値観ではないのは承知の上だが、世間一般的に『未婚=彼氏がいない』と同義であり、自身の肩書きのために彼氏がいなから結婚しないのだとしたら、それがどこまで通用するかという懸念がある。

今や未婚女性のカリスマとして崇拝に近い感情を抱く女性も多い中、“裏切られた!”という感情をもたれると一気にネガティブな評価に繋がる。

もちろん結婚という選択をしても、同様に嫉妬の対象として炎上することは間違いないだろう。

つまり、『未婚』というフレーズはジェーン・スーの抱えるもっとも厄介な時限爆弾とも言えるだろう。

 

■ラジオの未来の可能性
ワイドFMも始まりAMラジオとしては今が大きな変革の最後のチャンスであると言える。

そのチャンスをこの2人に託すという判断は、今考えられる中ではベストに近い人選だとは思う。
(伊集院と共に金曜を担当するパーソナリティが誰になるかにもよるが)

当方はこの2人の熱心なファンではあるが、現実問題として仕事しながらこの番組を聴くことはほぼ不可能だ。

ポッドキャストを充実してリアルタイムで聴けないリスナーも取り込むやり方もあるが、朝ワイドのように聞き流す前提のラジオではたまむすびのような濃い内容を提供することも難しい。
(TOP5のポッドキャストがつまならいのも理由は同じ)


番組発の世の中を動かすムーブメントでも起こせれば良い起爆剤になるとは思うのだが、その成否は構成作家の才能と、付いてきてくれるリスナー次第ということになるのかもしれない。


そして、この2人のラジオ番組にスポンサーがどれだけ付いてくれるのか。

ラジオの広告収入が減少する中、編成の大改編は新たなスポンサー獲得が最大の目的となるわけで、番組内容もさることながら、どれだけのスポンサーが獲得できるかをきちんと見届ける必要があるだろう。

それがラジオの未来の可能性を見極める上で、大きな指標になると思った次第ナリ。



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