2015年の輸入車市場を振り返る(1)

昨日のエントリーで速報的にお伝えしましたが、JAIAからも詳細な12月の輸入車登録台数が発表されました。
これにより各ブランドの年間販売台数がFIXしたことになります。
そんなわけで年初恒例の2015年の輸入車市場を振り返ってみましょう。
(ここで言う輸入車は海外メーカーの意味となりますので、トヨタや日産、三菱などの逆輸入車は含まれておりません)
なんといっても2015年の最大のトピックは、一連のVWの不正によってVWが大失速。
これによりリーマンショック以降右肩上がりで回復してきた輸入車市場もついに前年割れしたという事態ではないでしょうか。

ブランド別で見ればVWの失速とは関係なく順調に販売を伸ばしたプレミアムブランドであるメルセデスが国内販売1位を獲得するといった局面もありましたが、全体で見れば284,474台と前年比98.5%とついに前年実績を下回りました。


VWの問題が輸入車市場全体に与えた影響がいかに大きなものであったかが窺えます。
それでは、上位20ブランドの実績を見てみることにしましょうか。

 2015年輸入車トップ20ブランド実績
メーカー20142015販売台数20142015順位
販売台数販売台数前年比順位順位前年比
Mercedes-Benz60,83465,159107.1%21
VW67,43854,76581.2%12
BMW45,64546,229101.3%33
Audi31,41329,41493.6%44
BMW MINI17,59621,083119.8%55
Volvo13,27713,510101.8%66
Jeep6,6917,129106.5%87
Porsche5,3856,690124.2%108
Fiat7,2896,03282.8%79
Peugeot5,7105,906103.4%910
Renault4,6625,082109.0%1111
Ford4,5984,856105.6%1212
Land Rover3,1262,97995.3%1313
Alfa Romeo2,6612,32187.2%1414
Citroen2,3211,97885.2%1515
Abarth3561,472413.5%-16参考値
Maserati1,4071,449103.0%1617
Jaguar1,0731,349125.7%1918
smart1,1141,01290.8%1819
DS869251075.6%-20参考値
■2014年途中よりAbarthFiatから分離、DSCitroenから分離のため前年比は参考値


■圧倒的な強さのメルセデス
すでに今年後半になって事実上トップが確定していたメルセデスですが、圧倒的な強さを見せてのトップに立ちました。

世界的に見ても大衆量販メーカーのクルマよりプレミアムブランドのクルマの方が台数が売れてしまう市場というのは稀な部類かと思いますが、実はVWよりメルセデスが売れた年というのは過去に何回かありました。

VWMercedes-Benz台数差
1990年36,97638,9852,009
1991年30,38034,4864,106
1992年29,28329,777494
1993年20,89328,0897,196
1994年28,69233,7555,063
1998年41,65242,556904
1999年47,25453,4746,220
2015年54,76565,15910,394

一部商用車を含む年もありますがバブル景気、そしてその後VWの不調期には最大で7200台近く差を付けていたこともあり、日本におけるメルセデス信仰が根強いものであることがわかります。

しかし、21世紀に入ってからは初の逆転となり、またその販売台数も過去最高ということですから、2015年についてはメルセデスの活躍を賞賛しない理由がありません。お見事です。

原動力となったのは絶好調のCクラスならびに世界的にオーナー層の若返りを図るべくキャラクターチェンジして投入されたAクラス、そして通常ならあまりボリュームの大きくないラージセグメントであるE、Sクラスまで全方位での躍進があります。

主要モデル実績
年間順位モデル名台数
3C Class21,031
9CLA8,054
11A Class6,752
12E Class6,097
13S Class5,844
15GLA5,241

特に注目されることの多いAクラスですが、メルセデスが300万円を切ったことで買いやすくなったのは事実ですが…
ご存知の通りAクラスは現行で3代目となりますが、初代、そして2代目はファミリーカーとしてMPV的なポジションを与えられていました。
要するにカッコよくなかったわけです。
 

 A160.jpg
▲初代Aクラス

A170.jpg
▲2代目Aクラス

それが3代目になってターゲットを“若年層でも手が届くカッコいいメルセデス”に切り替えたことが功を奏したというわけです。

A180.jpg
▲3代目Aクラス

Production I.Gによるアニメーションやマリオとのコラボ、そして先日のパフュームの起用など、“メルセデスらしくない”という批判を跳ね除けて徹底して若年層向けのプロモーションを続けてきたことが、こうして販売実績として開花したのだと言えます。

正直言って、今でもちょっと見てて恥ずかしい気にはなりますが、実績が伴っている以上当方の感想などどうでもいいということになります。
継続は力なり、ですね。


■内外でブレブレだったVW
そんなわけで、VWの失速がなくてもトップを取ることは既定路線だったメルセデスに対して、方針が大幅にブレブレだったのが2015年のVWでありました。

『ゴキゲン♪ワーゲン』

のスローガンを掲げて大きくイメージチェンジを図ろうとしましたが、それが狙い通りに報道で伝えられず、むしろ庄司社長が本国に刃向かってムチャなプロモーションをやろうとしているというネガティブイメージで伝わってしまいました。
(実映像を見たわけではありませんが、各メディアが茶化すような扱いだったことから庄司社長のプレゼンに難があったことは容易に推察できます)

そして燃費至上主義の日本市場に対し、ドイツの技術力を威信を賭けて投入を発表したピュアEVであるe-up!&e-GOLFは、実質的な販売中止に追い込まれ、商品投入戦略にも大きな影を落としました。

そして庄司社長の逃亡に近い退任、ディーゼルゲート事件と国内外で大きな問題を起こしました。

庄司社長はJAIA(日本自動車輸入組合)の理事を務めていましたが、それも放り出す格好となり日本の輸入車市場全体に大きな悪影響を残していきました。

この点についてはいろいろ事情があったとは思いますが、本人の口からきちんと説明があってしかるべきでしょう。

しかし、9月に事件が発覚して以来厳しい販売状況の続くVWですが、よく-19%程度で踏み止まったと思います。

2016年の販売は回復するでしょうか?個人的には非常に厳しいと思います。

恐らく一番の試練はディーラーだと思いますので、地場資本の撤退をさせないよう手厚いディーラーバックアップ体制が求められる一年になるのではないでしょうか。

これをチャンスにプジョーが販売を伸ばしてくれればいいとは思いますが、だからといってディーラーが撤退して欲しいなどと敵失を望むつもりはありません。それにより一番困るのは現在のオーナー達だからです。
 
そういう事態が起こると輸入車市場全体が悪影響を受けますので、VWは他のブランドの為にもきちんとしたディーラー対応を求めたいところです。
 

そういえばVWに関連して、各界に衝撃の走った伏木悦郎氏のこのツイート、結局その後どうなりましたかね?

ということで、メルセデスとVWの話ばかりで長くなりましたので、次回はそれ以外のブランドについても見ていくことにしましょうか。

この記事へのコメント

  • ルノーもきな臭い感じになってるし
    大丈夫なんですかね?欧州メーカーは
    2016年01月16日 19:28

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