そんなわけで、春のジュネーブと秋のフランクフルト&パリで隔年開催されるモーターショーは、欧州メーカーにとっては存在感を発揮する上で重要なショーであったりします。
今年はパリではなくフランクフルトでの開催でありますが、我らがプジョーさんもその存在感を発揮すべく今年は
・308 GTi by PEUGEOT SPORT
・FRACTAL concept
・QUARTZ
・308 R HYbrid
の4つのコンセプトモデルが展示されるということであります。
QUARTZは既に何度かお披露目されていますし、308GTiに関しても既存モデルのパフォーマンス仕様ということで個人的にはあまり興味がありません。
308 R HYbridに関しては後述するとして、先日先行してリークされたFRACTAL conceptだけが新規のコンセプト出展ということになりますね。
FRACTALconceptは小型のオープン(&ハードトップ)EVスポーツであることがわかりましたが、そこから垣間見えるのはやはり208ccとRCZ後継としてのポジションを新たに作ろうという気概ではないでしょうか。
アルファロメオが4Cを発売したり、ルノーがAlpineを復活させたりと欧州メーカーがこぞって小型のスポーツカーを復活させていることからこの市場が熱いことはじゅうぶん理解できるところですが、販売の低迷しているRCZと開発してもコスト回収が難しい208ccの役割を再定義して、新しいパワートレインによって存在意義のある一台を作り上げるというのがFRACTAL conceptの狙いと言えるでしょう。
車種ラインナップを削減する中でスポーティなクルマは何かしら必要になりますので、この路線で市販化されるのであれば歓迎といったところであります。
ただし一つリリースで気になったことが。
2012 年に 208 が登場して以来、180 万人以上のユーザーに愛用されている PEUGEOT i-Cockpit は、プジョーの現在を象徴しています。
という表現がありますが、プジョーが『i-Cockpit』という表現を初めて用いたのは2013年5月の新型308からです。
それ以前の208シリーズの紹介において、i-Cockpitの表現が使われたことはありません。
プジョーさんとしては、208世代以降の運転席周りのデザインを総称して『i-Cockpit』というブランド化を図っていきたいのだとは思いますがウソはいけませんよ、ウソは。
ってこれ、本国のプレスリリースもこういう書き方をしているのでPCJの責任ではないのですが。
さて、多少話は脱線しますが、昨年のパリショーではパワートレインの技術展示としてHYbrid Airが出展されていました。
ご存知の通りHYbrid Airは圧縮空気を利用したハイブリッドシステムということで実用化すれば高い環境性能が実現できるわけですが、膨大な開発投資をPSAだけで負担するのは難しくパートナー企業を広く募っておりました。
しかし、結局手を挙げるメーカーは現れず、PSA自身も経営危機によって中国資本の東風汽車から出資を仰ぐ事態となり、開発は実質頓挫してしまいました。
BMWとのガソリンハイブリッド共同開発プロジェクトが打ち切られ、HYbrid Airは頓挫しており、唯一市販化に成功したディーゼルハイブリッドであるHYbrid4については以前のエントリーでも書いたとおり思ったほどの性能を発揮できず販売が低迷しております。
つまり、PSAにおけるハイブリッド戦略は根本から仕切り直しの状態でありましたが、308 R HYbridのプラットフォームを展示することにより、ガソリンハイブリッドの実用化にある程度の実用化のメドを付けたのではないか?という部分に興味が湧いてきます。
308 R HYbridはハイブリッドシステムをパフォーマンスアップの方向に活用したコンセプトカーですが、これは当然今後のPSAグループ、特にプレミアムブランドであるDS Lineへの導入を前提にしたものでありましょう。
その一方で大衆車向けの燃費向上のためのハイブリッドという位置付けを実現していくというロードマップになるでしょうから、その潜在能力がどの程度あるのか、気になる部分であります。
そんなわけで、FRACTAL conceptばかりに注目が集まりそうですが、個人的には308 R HYbridの完成度に注目したいフランクフルトショーなのでありました。
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