クリーンディーゼルハイブリッドが来たけれど

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ハイブリッドのパワートレインについては様々な構造があるわけですが、基本的にはガソリンエンジンと電気モーターによる組み合わせで構成されるものがほとんどでした。

それに対してクリーンディーゼルと電気モーターの組み合わせとなるディーゼルハイブリッドを採用した車種がいよいよお目見えであります。

クリーンディーゼル=環境と燃費に優しい
ハイブリッド=環境と燃費に優しい

クリーンディーゼルハイブリッド=すごく環境と燃費に優しい

なにやら十倍界王拳のような無双感を感じさせる趣であります。


日本におけるクリーンディーゼルに関しては、そのエンジン特性に対する評価より「クリーンディーゼルであること」が評価されており、いわゆるブランド化(差別化)としてのアピールという変な方向に向かいつつあります。

マツダのSKYACTIV-Dが想定以上の評価を得たことによりクリーンディーゼルを前面に押し出したプレミアム路線を突き進み始めたのを筆頭に、高級ブランドで相次いでクリーンディーゼルが採用され始めているのがその証左とも言えます。

VWグループ(VW&アウディ)は頑なにクリーンディーゼルの投入を先延ばしにしてガソリンエンジン+電気モーターのハイブリッド、そしてその先のPHEVの導入という選択が裏目に出ているのは先日のエントリーでも書いたとおりであります。

で、クリーンディーゼルの新規性がひと段落した段階で、メルセデスの次の一手が上記のクリーンディーゼルハイブリッドということになります。

イメージとしては最強の組み合わせのようにも見えますが、こういうことでもあります。

クリーンディーゼル=ガソリンエンジンに比べると重くなる
ハイブリッド=バッテリーを載せる分重くなる

クリーンディーゼルハイブリッド=すごく重くなる


つまり効率という点で見ると、あまり大きなメリットは現在のところはありません。

もちろん大トルクによる発進加速などオラオラ系の方々には好まれるかもしれませんが、全体的に見れば多分にイメージ的なアピールに過ぎません。

こういうのは高級ブランドのメルセデスだからこそ成り立つ話かもしれませんね。


さて、そんなクリーンディーゼルハイブリッドですが、メルセデスが国内初投入というのは事実ですが、世界で初めて量産型のクリーンディーゼルハイブリッドである『HYbrid4』を作ったのはPSAであったことを忘れちゃいけません。

その開発には紆余曲折がありましたが、3008 HYbrid4の発売によりなんとか体面を保ちました。

プジョーがハイブリッドを発表へ

その頃の日本におけるプジョーさんは絶不調の時期でもありましたので、何かしらのカンフル剤として3008 HYbrid4の投入が期待されましたし、2011年9月頃にはPCJも導入を検討していました。

それはジャーナリストを海外に招いて試乗記事を書かせたり、東京モーターショーに出品したりするころで反応を探っていたことからも明らかでした。

3008HYbrid4、国内導入の準備開始?


しかし、そのパフォーマンスはあまり褒められたものでもなく、海外での評価も芳しくありませんでした。

評価の低い3008 HYbrid4


クリーンディーゼルのハイブリッドという未知のパワートレインをメンテナンスする体制がディーラー側に整っていないことに加えてどれだけ売れるかという見込みも立たなかったことで国内の導入は結局キャンセルされました。

では、世界的にどれぐらい売れてるのでしょうか?

HYbrid4採用車のセールスは、

 2013年 22,100台
 2014年 12,400台

となっており、前年比で約半減しております。

PSA全体の販売台数が300万台であることを考えるとセールス的には失敗という判断をせざるを得ず、開発費回収もままならない状況であります。



その後PSAの経営危機によって他メーカーの資本を受け入れたことによりBMWとのガソリンハイブリッドの共同開発が頓挫。

ボッシュをパートナー次の一手として開発を進めていた圧縮空気を使ったハイブリッドシステムである『HYbrid Air』の開発が頓挫するなどあって、PSAはハイブリッドの開発全体を仕切り直す事態に見舞われました。

現在はガソリンエンジンとの組み合わせで燃費よりはパワーアシストを重視したハイブリッドシステムを開発中ではありますが、その投入はもうしばらく先のことになりそうですね。


そんなわけで、クリーンディーゼルハイブリッドという技術は、開発が非常に難しく、その割に大衆車に採用するにはメリットが少ないという事実を突き付けられたお話でありました。

だからこそメルセデスも技術開発はすれども、それを実利方面ではなくブランディングの一環として投入しているのだと思います。

技術的なブレイクスルーがあるとしたら、蓄電池の大幅な効率化と低コスト化ぐらいしか見込みが無く、メインストリームにはなれないパワートレインであると個人的には思いましたとさ。



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