東京モーターショー2015の出欠状況に思うこと

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ってことで、東京モーターショー2015の出展車が発表になりました。


今年の個人的な目玉としては、FCA(フィアット&クライスラー)の久しぶりの復帰でしょうか。
クライスラーを吸収合併したフィアットが、日本での好調を受けて出展に踏み切ったというのは祭りに華を添える意味で大歓迎であります。

デトロイト3の中でクライスラー部門に属するJEEPだけが出展することになっておりますが、政治的思惑の中で、そうは言っても売れてるんだからアピールしましょうという親会社のフィアットの意向を受けて例外的に出展ということなんだと解釈しています。

費用対効果が得られないからデトロイト3が出ないという分析が前回の2013年の時にも語られていましたが、そもそもモーターショーへの出展というのは費用対効果の悪いものです。

しかし、それでも出し続けるメーカーと見切りをつけるメーカーが出てきたというのは今年の1月にエントリーで書きました。


東京モーターショー2015にボルボは出ないだろうという話


そんな中でデトロイト3の中で実質的に欧州勢力下にあるクライスラー(JEEP)の出展はいいとして、販売もそこそこ好調で欧州ラインナップを持つフォードが出展しないのは機会損失だと思うわけです。

GMグループに関しては実質的に日本に適しているのはオペルブランドしかありませんので、オペルを持ってこないのであれば不参加止むなしと思いますが。


で、高級車が出ないことが意外ってツイートしましたが、ここで前回と今回の出展企業を見てみましょう。

■輸入ブランド東京モーターショー出欠状況 
メーカー名20152013
VW
Mercedes-Benz
BMW
Audi
BMW MINI
Volvo 
Fiat 
Jeep 
Peugeot
Porsche
Renault
Ford  
Land Rover
Alfa Romeo 
Citroen
Maserati  
Chrysler  
smart
Jaguar
Chevrolet  
Cadillac  
Ferrari  
Dodge  
BMW Alpina
ABARTH 
Lotus  
Bentley  
AMG
○ 
Lamborghini  
Aston Martin  
Rolls Royce  
Mclaren  
DS- 
Maybach 
Bugatti  
RADICAL

主要なところだけに絞ってますが、こんな感じです。

2013年のモーターショーは退院後のリハビリを兼ねて行ってみたものの、会場まで3kmぐらい歩かされて疲れてしまい賞味40分ほどで帰ってきてしまったのであまり深い内容を覚えていないのですが、こうして見ると意外と高級車は2013年も出展してなかったですね。

ジャパン・パッシング(Japan Passing)などと呼ばれ、アジア地域においては中国のショーが重視される状況において、一般大衆向けにわざわざお金を掛けてブランドを告知する必要も無くなったという判断なのでしょう。

昭和のモータリゼーションまっ盛りの頃は、憧れの対象としての高級車という刷り込みの有効性がありましたし、出展費用は代理店が負担していたのでモーターショーで高級車にお目に掛かる機会がありましたが、ここまでクルマがコモディティ化した成熟市場において日本法人がドライに判断したということなのかもしれません。

実際の顧客である富裕層はわざわざモーターショーに見に行かずとも青山界隈のショウルームで商談して契約するでしょうから、実務上の影響はまったくないと思います。

ただし、一般大衆が高級車を直接見る機会が減ることは、ブランド認知の面では長期的にはマイナスです。
東京モーターショーは国産車も輸入車も一同に会することに意味があるわけで、そこに出展しないことは多くの一般大衆にとってそのブランドは存在しないということになるわけです。

東京モーターショーでなくても他のフェスティバルなどでそうした高級車を間近で見るチャンスはありますので、機会がまったくゼロになるわけではありませんが、それは

好きな人はCSの有料放送でプロ野球を見てるけど、地上波しか見ない人のプロ野球の認知度はどんどん下がっている」

という事例に似ています。

東京モーターショー=地上波のテレビ

という意味ですね。

しかし、高齢化が進むことで衰退する日本という国の市場性を考えたら、そもそもそんなことに気を配る必要も無いという合理的判断が働いているかもしれません。


日本は日本で新たなモビリティの可能性を模索していく時代になりましたし、競争の主戦場は今後はコネクティッドカーへと移行していくことになります。

その一方で、ステイタスとしてのクルマという絶対的な存在価値も残り続けます。

そうした時代においてどのようにクルマに対する憧れを醸成していくのか。

各メーカーの戦略が気になるところですね。



ところで。
プジョー&シトロエンの皆さん。

前回のように正式発表した展示車なのにドアロックで中が見れないなんて無様な真似は、今年はしないようにお願いしますよ。


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