椋本さん、あなた誰?

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ホンダの社内プロジェクトとして若手が中心になって開発した(ことになっている)S660でありますが、受注も好調でバックオーダーが1年にもなるそうで、まずはスタートダッシュ成功おめでとうございます。

暗い話題の多かったホンダにおいて、こうした明るくかつ元気の出る話題(作り)はとてもいいことであります。

特にマスコミを賑わしている26歳の開発責任者である椋本陵氏については、その異例づくしのストーリーがS660というクルマ以上に注目されていたりします。



まったく成り立ちは異なりますが、スポーティなクルマの開発にはストーリー性が大切であることは、FT-86に関するエントリーで書いてきたとおりです。 

その意味で、S660は若手が開発したというストーリーが見事に共感を得ることに成功したと言っていいと思います。

で、一時のフィーバーも収まったところですので、気になったことをちょっとだけ備忘メモとして残しておきますね。


S660の開発が難航したことは広く知られているところですが、マガジンXの2012年6月号に『迷走するホンダ車プロジェクトx3』と題されたスクープページにおいてこのような記事が載っております。

 

若手の開発責任者が退職して「ゆるスポ」は「マジスポ」へ

肩の力を抜いて風邪を感じながら緩~くドライブを楽しむ狙いから、社内で「ゆるスポ」と呼ばれていることは本誌が独占スクープしたとおり。

 だが、その「ゆるスポ」に異変が生じている。そもそも「ゆるスポ」は本田技術研究所が設立50周年に合わせて社内公募したアイデアの中から生まれたもの。若手社員が提案し、GOサインが出されて当人がLPL(開発責任者)に抜擢されたプロジェクトだという。だが、いざ開発が進み始めると取り巻きがアレコレ口出しし、どんどん当初の構想からズレていって、ついにはLPLが退職。

とはいえ世間に対して「ビートのようなスペシャリティカーを再投入する」と宣言してしまった以上、作らないわけにはいかない。

 こうした経緯を経て開発は再開されたものの、すっかり迷走した結果、いまや「ゆるスポ」は「マジスポ」に変わってしまったのだとか。660ccターボだけでなく、東京ショーに出品されたEVバージョンがラインナップされるとの情報もある。航続距離を稼ぐため、ボディにカーボン素材を使って軽くすることも検討中。「どうせ高額になるから、トコトン突き詰めよう」との気運があるらしい。どこまで「マジスポ」を極めることができるか、今後の動向から目が離せない。

で、2015年にS660が発表されたわけですが、ご存知のとおりホンダの公式な発表として開発責任者は椋本陵氏であり、彼が最初のアイディア出しから開発まで担当してきたということになっております。

仮にマガジンXに書かれている記事を信用するとなると、以下の可能性が浮かび上がります。

 (1)椋本氏は初期アイディアを出した人物とは別人で後から仕立てられた
 (2)退職したが、何らかの理由で復職した
 (3)マガジンXの誤報


普通に考えりゃ(3)だと思いますよね。

念のためマガジンXの中の人に確認を取ってみたところ、意外にも対応した某氏はこの記事のことを知りませんでした。
まぁすべての記事内容を把握するのは難しいとは思いますが、一応記事内容に責任を持つ立場の人ですからねぇ。

で、確認してもらったところこの記事の内容についてコメントを取ることが出来ました。
曰く、

 「当時はそういう情報があったと承知している。」
 「ホンダから事実と異なる、との指摘は受けていない。」
 「改めて事実確認をするつもりはないが、続報があれば記事にする」

とのことだそうです。
情報源の秘匿を理由にこれ以上詳しいことは答えてもらえませんでした。

マガジンXはスクープを売りにする雑誌ですので、大半の情報は内部リークやスクープ情報を売りにしている業者から情報を買っていたり便所の落書きから拝借したりするわけですので、すべてが正しい情報である保証はなく、また誤報であったとしても訂正等は特に掲載するつもりはないということだそうです。

一方で、ホンダに対して(的を射ているものの)かなり都合の悪い指摘をし続けてきているマガジンXに対して、ホンダがこの件について反論をしていないというのも気になるところです。
(マガジンXとホンダは絶縁状態ではなく広報との接点はきちんと持っています)

各マスコミで報じられている椋本氏とS660の開発ストーリーは胸を熱くさせるものがありますし、S660のイメージ向上には非常にプラスに働いておりますが、もし(1)だったりすると、マスコミやそれを読んで感動したという人々全てがまんまとペテンに掛けられたことになるわけです。

それを演じているとすれば、椋本氏も肝の座った男だと感心しますが。

仮に(2)だったとしたら、大人の都合でその件については一切触れないでおこうっていうのもわからないではないです。
結果として椋本氏がS660を完成させたことに間違いは無いわけですし、夢のある話をぶち壊していいことなんてありませんからね。


ただ、世の中には平気でこうした感動的なストーリーをでっちあげる人たちもいたりするものですから、ちょいと引っかかっていたりするんですよね。


某掲示板にもこの記事をベースにあることないことといろんな言説が飛び交っておりますが、事実がどこにあるのかはよくわかりません。
しかし、今回の記事が事実でなかったとすれば訂正しておかないといつまでも偽情報のソースとして機能してしまいます。
それは自動車業界に対して問題提起をする立場を採り続けるマガジンXという媒体にとってはプラスに働くとは思えませんけどね。

ってことは一応中の人には指摘をしておきました。


椋本氏ご本人もしくはホンダが、それより当の記事を報じたマガジンXがこの件について正式にコメントでも出してくれていればそれで解決する話なんですけどね。

まぁ、所詮はスクープ誌というのは三流ゴシップ誌と同様に誤報(の可能性)も含めて楽しむものなので、こまけーことはいいんだよってな話でもありますがw

以上備忘メモでした。



この記事へのコメント

  • ロクロクマル太郎

    よく2012年の雑誌記事の内容を覚えてますね!
    その記憶力、あるいはメモ力のすごさに脱帽です。
    2015年05月07日 20:44
  • ロクロクマル太郎

    よく2012年の記事を覚えていますね!
    その記憶力もしくはメモ力に脱帽です!
    2015年05月07日 20:45
  • 海鮮丼太郎

    >太郎

    いやーそんなに記憶力いいわけじゃないんだけど、ホンダは注目してたので覚えてたのよ。

    それと、マガジンXの中の人が割と真摯に対応してくれたので現状を整理しといたほうがいいかなと思ってまとめましたですよ。

    2015年05月08日 15:20

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