3008後継としてのQuartz concept

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10月4日より開催されるパリモーターショーに向けて、各社が出展車の事前情報を次々と解禁しており、我々うぉっちゃーとしても今が一番楽しい時間だ。

国内の展開についても気になるところではあるが、今後の動向を占う上で重要な欧州開催のショーの動向についても要チェックだ。

そんな中で我らがプジョーさんもいくつかの情報を開示し始めているが、その中でも異彩を放っているQuartz conceptについてちょっと見ていこうと思う。


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まずはパワートレインから。
毎度おなじみ1.6リッターのターボエンジンであるTHPを、プジョースポールの手によって270hpまでチューンし、それに加えて115hpの出力を持つモーターを前後に2つ搭載することで、トータル500hpを実現するのだという。
それを23インチのコンチネンタルの大口径タイヤで操るというのだから、スポーツカー顔負けのパフォーマンスを発揮することを期待させる。

従来のディーゼルハイブリッドである『HYbrid4』は大衆車のハイブリッドシステムとして燃費向上を主眼に開発されていたのに対し、今回のQuartz conceptにおけるガソリンハイブリッドの考え方は明らかに「more power.」の方向へと舵を切った形になる。

もちろん市販の際はこのコンセプトでそのまま発売されるわけではなく、燃費との兼ね合いを考えた実用的なスペックで登場するであろうが、ショー向けのコンセプトモデルとしてプジョーが提唱する未来の技術の在り方としては、「こちら方面にシフトするよ」というメッセージとして捉えるといろいろ見えてくるものがある。

その辺りはデザインからも読み取れる。

Quartz conceptは新たなプジョーのフィロソフィーに基づいたデザインであり、C4ピカソ、新型308から採用が始まった新たなプラットフォームであるEMP2を採用。

見た目のイメージとは裏腹に、ボディサイズは全長4500x全幅2060mとなっており、カテゴリ的にはCセグメントだ。

もう何度も目にすることの多い表現だが、欧州各社が血眼になって開発を進める「日産キャシュカイの対抗車の一台」と言うことができる。


Quartz(=水晶)と命名されている通り、芸術品としてカットされたような直線基調を随所に盛り込んでおり、従来の曲線を多用したプジョーデザインからは大きな変化を感じる。

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個人的には曲線より直線をうまく使ったデザインが好みなので、今後のプジョーデザインがQuartz conceptの方向に進むのであれば、それも悪くないと思う。

とはいえ、どことなくレンジローバー・イヴォーグを想像させるようなクロスオーバーSUVライクなスタイルであり、この辺は各社が様々な車種を作っているわけで若干食傷気味ではあるのも事実だ。

しかし今のPSA(プジョー&シトロエン)ブランドの中では手薄な部分なだけに、DS LineやC Lineでこの路線の強化を進める一方、プジョーブランドにおいてもこちら方面を強化する事はすでに既定路線になっている。

その意味で今回お披露目されるQuartz coceptは、

 ・Cセグメントのクロスオーバー
 ・プジョーの4ケタは時代のニーズに向けたトライアル
 ・最重要市場である中国でちゃんと売れること

という要件を満たす意味からも、次期型3008のデザインスタディであることは明白だ。

ご存じのとおり、現行3008はプジョー初のクロスオーバーとして2009年に発売されたクルマだが、そのコンセプトはMPV(ミニバン)とSUVを融合したコンセプトになっている。

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日本でのセールスはパっとしなかったが、欧州ではそれなりに数が出たモデルではあるものの、MPVのニーズが下降気味であることや、正直言ってあまりカッコ良いスタイルではないこともあって、ファミリーカーとしてのニーズは拾えてもスポーティなクルマを欲しがる層にはリーチできなかった。

そして時代はハッチバックとSUVのクロスオーバーとも言える日産キャシュカイ(日本名:デュアリス)の大成功によって、流行の趨勢は完全にそちらにシフトした。

特に新興市場である中国では、このスポーティに見え、それなりの走破性を持ち合わせ、威厳を醸し出すクロスオーバーSUVの市場が伸びている。

なにより「そういったクルマが中国で売れるから」、「次期3008は中国市場のニーズを想定している」とプジョーのCEOであるマキシム・ピカトが今年の北京ショーにて中国市場におけるインタビューでも言及していたりする。

経営の傾いたPSAが中国の東風汽車の資本を受け入れ、最重要市場として中国市場をターゲットにしている以上、そちら方面の影響を受けるのは当然と言える。

問題は、シトロエンのC-XR conceptや新たにブランドとして独立させるDSLineの DS 6WRなどは中国専売車とも言える形で投入されるが、新型3008についてはワールドワイドでの展開になるわけで、欧州はもちろん各国(そして日本でも)発売されることりなる。

いくら中国で売れるからといって中国向けの要件ばかり盛り込むわけにもいかない。

特に、Cセグメントとしては明らかに横幅がデカすぎるデザインについては欧州、とりわけイギリスなどでは不評を買うことになるだろう。

この全幅を許容できる市場があるとすれば、それは富裕層向けのマーケットだ。

アウディやメルセデス、BMWなどがターゲットとする富裕層であれば、デカいSUVでも気にせずに乗りまわすこともありえる。

もし仮にQuartz conceptがこれに近い形で新型3008として登場してきた場合、プジョーは本気で富裕層向け市場を取りに行くつもりなんだと解釈すればいいだろう。
(その可能性は低いと個人的には思っているが)


だらだらと書いてきたが、Quartz conceptから当方が読み取ったメッセージは以下の通り。

 『プジョーはハイブリッドの解釈を変えた』
 『プジョーは新たな解釈のスポーツモデルを強化する』
 『Quartz conceptは中国のニーズに向けた3008のデザインスタディ』

この3点だ。


新型3008は2016年に登場の予定。

既に開発は始まっており、社内的にはデザインについてはおおよそ固まっている時期ではある。
今回のQuartz conceptのパリモーターショーでの評判を踏まえて多少フィードバックが入るとは思うが、それでも基本路線は大きくは変わらない。

果たしてショーで発したメッセージと、実際のプロダクトにはどれだけの違いが出てくるのだろうか?

久々に想像心をくすぐられるショーモデルと言えそうだ。


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