e燃費といえば、走行距離と給油量を報告することで自動で燃費の管理をしてくれるサービスとして20世紀末にスタートした、意外と歴史のあるサービスだ。
それらで集められたデータを車種別に集計しランキングにすることでそのクルマの本当の燃費はどのぐらいかを可視化した、ビッグデータ活用の元祖のようなサービスだ。
その結果は多くのメディアで参考データとして引用され、それなりの信頼度を獲得している。
とはいえ、単に燃費のデータを管理するだけではユーザ側のモチベーションが上がらないこともあり、最近ではガソリンスタンドの情報や愛車のメンテナンス管理といったところまでフィールドを広げつつある。
e燃費は燃費の管理という分野では確固たる地位を築いたものの、その次のビジョンをどう描くかというのはけっこう難しかったりする。
ハイブリッド、EV時代へと移っていく中で相変わらず走行距離と給油量を集計しているだけではサービスとしての幅が広がらない。
しかし多くの会員データを集めて分析するビジネスモデルで味を占めたからには、この旨味を手放したくない。
そこで次の戦略として打ち出そうとしているのが、クルマのより詳細なデータを取ることで多角的なデータ解析を行うビジネスモデルだ。
その取り組みの一部としてこのような募集が掛けられている。
日産リーフのOBDII端子に専用のデータロガーを接続し、様々な車両データを取得し、それをe燃費に報告することで今まで取得できなかった走行状態の把握や運転者のクセといったことまでデータ化することができる。
OBDIIの活用は今後のクルマのインフォテインメントにおける核と言ってもいい。
e燃費がここに目を付けるのは当然と言えば当然なのだが、いかんせん自己申告だった従来のe燃費の仕組みから、専用の機器を取りつけてそのデータをくださいって話の間には大きな飛躍がある。
取られたデータからどのようなペルソナが作成されるかも利用者側からは想像し難く、ビッグデータとプライバシーの問題の範疇に入ってくる部分だけに事は慎重に進めたい。
そんな思惑もあっての、今回のリーフオーナーに対する「e電費」実験なのだろう。
ホンダのインターナビは、自車の走行データを提供する代わりに精度の高い渋滞情報を利用できる。
従来のe燃費が距離と給油量を申告することで精度の高い平均燃費データが得られる。
このように情報を提供する側にとって、それなりの見返りがなければこうしたデータビジネスの利用者は増えない。
個人的には、OBDIIで取られた走行データを提供するのは、どの程度まで個人を特定できるデータとして扱うのか?という部分が明確になっていなければ利用したいと思わない。
得られるメリットとして例えば…
・走行データによる走行特性分析
・年に数回の無料ドライビングレッスン
・自動車保険が20%OFF
これぐらいの利点があれば考えても良い、というレベルだ。
データロガーによる情報提供で自動車保険を割り引くという仕組みはすでに始まっているので、それほど突飛な話ではない。
ある程度の個人情報を提供してその代わりに利便性を享受するというのは、(嫌な世の中ではあるが)ある程度受け入れなければならない時代がやってくる。
その中で、どれだけ自分の情報をメリットのあるところに提供するか、という選択の眼はより厳しくなる。
e燃費としては、どれだけユーザーメリットを提供できるかが今後のこうしたビジネス展開の成否を握っている気がする。
サービスイン当初の志がまだ残っているのなら、「Don't be evil.」であるならば、消費者のためになるサービス設計をしてくれると、多少なりともいい世の中になるんじゃないかと、少しばかり期待している。
【閑話休題】
実は、e燃費がサービスインした頃にちょうどアスキーに在籍しており、このサービス運用の人たちと話をしたことがあった。
当時のアスキーはコスト意識が低く、サービスを立ち上げてもどのように採算を取っていくのか?というビジネス面での視野をまったく現場が持てていなかった。
基本的には広告収入で回すという話になってはいたものの、実際の採算はどうなってるの?なんて話をした時、
「サーバ運用費はちゃんとまかなえてます!」
と力説されたのだが、
「で、君たちの人件費は誰が払うの?」
という一言で場が凍りついたのを良く覚えている。
商売の基本がわからない素人集団によって運営されていたサービスが21世紀になってもちゃんと生き残っているのは、あの時ウェブサービスを回していくために必要なお金の考え方みたいなことを伝えたのが少しでも役に立ったのかなぁ、などと思い返す次第也。
この記事へのコメント
しの。
海鮮丼太郎
実態の伴わないカタログ燃費の弊害は非常に大きく、またConsumerReportのようなメディアの無い日本においては、e燃費の果たす役割と期待は大きくなりますね。
ただ、この辺でも書きましたが、
http://kaisendon.seesaa.net/article/187203215.html
現状ですとどうしても燃費を競うあまりデータが実態より少々良い数値を出す傾向にあるという補正が必要ではありますが、それでもかなり実態に近いデータであることに間違いはないですね。
あとは精度をもっと高めてサンプル数を増やすことで、その車種のエリアごと(首都圏など都市部だけとか、地方の交通環境の良いところだけとか)といったデータまできちんと出せるようになれば、非常に有益なデータになり得ます。
そのためにはOBDIIを使ってもっときちんとしたデータを取ることが不可欠になってきますが、それをどう実現するのか?
期待したいところであります。