さて、前回はプジョー横浜港南がルノー横浜港南に鞍替えしたよ、なんて話を書きました。
輸入車販売のボトルネックは、国産メーカーに比べて販売拠点数が少ないことであったりします。
かといって、販売拠点を増やせばそれだけ販売管理費という固定費用が発生するわけで、あまり増やせばいいというものでもありません。
インポーター直営ではなく地場資本の会社にディーラー運営を委託するなど、契約の形態は様々ですが、トップ集団を形成するドイツ勢に比べると、第2グループの輸入車メーカーはどれだけディーラー網を整備するかというのは戦略上大きな問題となっております。
一般的には、商品力があり前年対比でも販売が上向いているメーカーはディーラーを増やす傾向があります。
それに対して商品力がなかなか厳しく、販売も前年同等もしくは減少傾向のあるメーカーはディーラーを増やすのは躊躇します。
いずれにしてもお客さんはディーラーでクルマを購入するわけで、その接点となる店が人口密集地には出来るだけ多く存在した方が、販売機会が増えるというセオリーは変わりません。
前回のエントリーではルノーディーラーを例に挙げて、好調な割にディーラーが少なくない?という印象の話をしましたが、実際のところはどうなのでしょう?
ここで主な大衆車メーカーのディーラーと販売台数の関係をまとめてみました。
対象とするメーカーは、トップ集団から年間15000台以上の販売実績を誇るBMW MINIとVolvoを。
第2グループからは欧州系大衆車メーカーであるFiat、Peugeot、Renault、Citroen、Fordをピックアップしてみました。
まとめるとこんな感じになります。
全拠点 | 整備・中古等 拠点 | 新車販売 拠点数 | 2013年 販売台数 | 1店舗平均 年間販売台数 | |
BMW MINI | 193 | 73 | 120 | 16,982 | 142 |
Volvo | 123 | 19 | 104 | 16,918 | 163 |
Fiat | 81 | 0 | 81 | 7,007 | 87 |
Peugeot | 108 | 28 | 80 | 5,970 | 75 |
Ford | 55 | 0 | 55 | 3,896 | 71 |
Renault | 66 | 0 | 66 | 3,771 | 57 |
Citroen | 78 | 19 | 59 | 2,947 | 50 |
※2014.7.24現在
Fiat、Ford、Renaultに関しては中古車販売、整備拠点といった記述が無かったのですべてを新車販売拠点としてカウントしています。
前提条件として販売拠点の数を年次推移で追いかけないと、本当の意味での売上との関連性を調べることはできませんが、少なくとも現状の一つの判断材料として推測することはできそうです。
では中身を見ていきましょう。
新車販売の拠点に注目すると、トップ集団であるBMW MINIとVolvoの一店舗あたりの販売台数が極めて高いことが伺えます。
好調を絵に描いたような感じですね。
それに対して、ディーラー数がほぼ同じFiatとPeugeotでも、昨年の販売台数では年間1073台ほど差が付いており明暗が分かれています。
一店舗あたり平均12台の差ということになります。
これってけっこう大きいですね。
もちろんこの差が出た理由の大半は商品力の差ということになるでしょう。
意外だったのがFordです。
新車の販売拠点数では一番少ないのに、一店舗あたりの販売は平均で71台と健闘してます。
これは昨年FOCUSとFiestaという売れ筋のクルマを投入したことが功を奏したことになるのでしょうが、Fordのディーラーが近くになかなか見当たらないという状況にも関わらずこれだけ実績を上げているということは、ディーラーが近くに無くても欲しい!と思わせる商品力のあるクルマを投入した成果と見ていいのではないでしょうか。
これはフォードにとっては追い風だと思います。
そして前回の話題にしたルノーですが、こうして見ると必ずしも一店舗あたりの販売が多いわけではありません。
全体的な販売は増加傾向ではありますが、Fordのように一店舗あたりの販売がそれほどでもないということになると、ディーラーの数を増やすには時期がまだ早いという見方もできるかもしれません。
とはいえ、今までカバーできていなかった人口密集地への出店が進めば、そこで新たな需要を獲得できる可能性は高いわけで、この辺りのルノーの戦略がちょっと気になります。
そして最後はシトロエンですが。
こちらは総崩れの様相を呈しております。
厳しいですねぇ…
年間平均50台ということは、一ヶ月に売れる新車が平均で4台ちょっとということになります。
これでディーラーのスタッフが食べていくのは相当大変なことだと思います。
それゆえに、点検整備のお客さんを大事にしなければならないという話になるわけですが、おやこんな話を最近どこかでしたような…
ただし、新車の販売拠点ばかりを増やすだけでは片手落ちであります。
プジョーやシトロエンのサービスポイントと呼ばれる拠点は、かつて新車販売を行っていた店が、点検整備を行う店として残っているケースがあります。
クルマは買った後も定期的に整備を受ける必要のある商品です。
新車ディーラーとの付き合いは極端に言うと新車を買う時だけで、その後は乗り換えるまでは点検整備を行う店との付き合いとなるわけです。
つまり、点検整備を行うだけの拠点があることも、とても大切なことなわけです。
ってことで、全体的には復調してきている輸入車市場でありますが、ディーラー網をどこまで整備するか。
商品力とあわせてインポーターのさじ加減にセンスが問われる時代であります。
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