VWがフィアットを買収すると…



※とりあえず関係者が否定するのはこの手の事ではよくある話です。PSAの事例然り。


週末のびっくりニュースと言えばこちらでしたかね。
(ウクライナやガザのニュースは別枠です)

フィアットグループといえば、リーマンショックで大打撃を受けたデトロイト3の一つであったクライスラーを手中に収めたその手腕が評価される一方で、肝心の自社ブランドであるフィアットが欧州市場において苦戦を強いられ、アルファロメオもブランドポジションの再構築に時間が掛かり長らく迷走が続く事態となりましたが、その間のグループの収益を支えたのが復活したクライスラーでありました。

この辺り、ルノーグループにおける日産のようでもありまして、デキの悪かった子供がいきなり孝行息子になって帰ってきた的な展開はドラマとしては面白いのかもしれません。

逆に言うと、ポテンシャルのある企業が弱体化している時に買収されて、その後の利益を親会社に吸い取られる構図というのがいかに残念な事態を招くかということでもあるわけです。

アメリカにおけるクライスラーと日本における日産。
どちらも利益が国外に吸い上げられ国内に還元されない構図というのは、国家経済の観点から見るといろいろ歯がゆいわけです。

自動車は雇用のすそ野が広く、国の基幹産業であることが多いため、先日の東風汽車がPSAに出資する騒動においてフランス政府が横槍を入れてきたのはこういう事情もあるからですね。

で、話はフィアットに戻ります。

フェラーリやマセラティという高級車部門とフィアット&クライスラーという大衆車部門を抱えておりますが、構造的に大衆車ビジネスというのは儲からなくなっています。

特にフィアットは小型大衆車がメインとなるため、高い環境性能と厳しいコスト競争に晒されていることもあり、利益が出なくても投資を止めるわけにはいかず、まさしく自転車操業が続いております。

そんな状況においてもフェラーリブランドは富裕者層を相手に好きなクルマを作っていれば安泰という状況は変わっておらず、それでビジネスが回るんだったら苦労して大衆車ブランドを維持する必要もあるまい、とするオーナーの気持ちもわからんでもありません。

その意味で、フィアットをどこかに売っ払いたいという思惑があっても不思議ではないわけです。

問題はどこに売っ払うのか?

フィアットのCEOであるセルジオ・マルキオンネは、ドイツ勢に対して露骨な対抗意識を燃やしており、他のメーカーに対しても対ドイツ勢力として結集しようと呼び掛けたりもしておりました。

ドイツ勢に対抗するには勢力を拡大するために他社との提携や買収をしなければならないわけで、クライスラーに次ぐ買収先を模索していたのは割と何度もニュースになりました。

PSAへの資本提携に色気を見せてみたりもしましたね。
今考えると、フィアットとPSAが一緒になっていれば、欧州市場における勢力分布はドイツ勢に対抗できるグループの登場により面白いことになっていたかもしれないと考えると、ちょいと残念な気がします。


そんな感じで、市場には必ずライバル勢力というのが必要であり、特にVWグループに対抗する勢力は今のところトヨタグループしか存在しないわけで、フィアットがその辺りの核になればおもしろかったわけですが、それが今回のニュースですよ。

正直ガッカリしてしまいました。

仮にフィアット&クライスラーがVWグループに買収されたとなると、VWグループはクライスラーの販売網によってウィークポイントであったアメリカ市場での販売力を強化することができますし、フィアットグループとの車体共有化によるさらなる利益構造の改善、世界的販売台数の積み増しといったことで、早々にトヨタを抜いて世界第一位のグループとなるでしょう。

それはもう市場の支配なんていうレベルではなく、蹂躙に近いものがあります。

また、イタフラ車などと呼ばれるポンコツだけど味のあるクルマなんていうノスタルジックなイメージの崩壊も意味します。

既にプロダクト自体にイタフラ車などという味は希薄になって久しいですし、当のフィアットは本社をイタリアから税金の有利な国への移転を進めております。
しかし精神面においてのイタフラ車に対するノスタルジーの崩壊は、主にエンスー的な人々にとって趣味としてのクルマという世界の終焉と言ってもいい事態を招くことになります。

記事中では触れられていないアルファロメオに関してもVWが買収なんて話になってしまうと、それこそ発狂する人々も出てきそうであります。

とはいえ、企業は形を変えてでも存続していかなければ意味がありません。

そんなノスタルジーに浸っているヒマがあったら、もっと売れるクルマを作るために汗をかくべきです。

それは分かってはいる訳ですが、つまらんよなぁ…というため息が聞こえてくるのはやむを得ないことだと思うわけです。

さて、拳を振り上げていたセルジオ・マルキオンネはどんな態度に出るでしょうか?

今後の推移を見守りたいと思います。
できれば、破談になって欲しいとは思いますw


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