経営再建中のPSAが、ハイブリッドやPHEVなどとは異なるアプローチで燃費を向上させるべく、ボッシュと組んでHYbrid Airを開発中というのは何度もニュースになっておりました。
しかし、当方は若干懐疑的に見ております。
というのも…
といった感じで当BLOGでも何回か触れてきましたが、新規の技術を開発するには、PSAの体力ではあまりに荷が重すぎるという点に尽きます。
トヨタが先陣を切って市場を開いた電気式ハイブリッド車でありますが、欧州勢は取り組みが遅れたのに加えてPSAはただでさえ高コストのディーゼルハイブリッドとしてHYbrid4に開発リソースを突っ込んでいったわけですが、このHYbrid4に関しても当初からPSAグループ単独での開発コスト負担が厳しくて、パートナーになる企業を探していました。
しかしそのパートナーは現れず、結果として単独での開発となり、リリースが遅れてパフォーマンスも突出した性能を発揮できず、お荷物状態になってしまっております。
ガソリンハイブリッドに関してはBMWとの提携により話がかなり進んでいましたが、業績悪化に伴うGMとの資本提携の話が出たことにより、BMWからハイブリッドのみならずガソリンエンジンでも提携関係を切られてしまいました。
で、今年の東風汽車の資本参加によって、数を追い求める体制は出来上がったものの、先進技術への投資についてはまだまだ明確なロードマップが描けない状況です。
東風汽車の要望するクルマは中国市場でウケの良いハイパフォーマンスかつ豪華路線であるため、必ずしも最新の環境性能にこだわる必要が無いからですね。
そんな状況であるため、HYbrid Airに関しては技術を主導するボッシュと開発は続けてはいるものの、それをどのように市場に出すかというプランが不透明なまま、いたずらに時間ばかりが過ぎていっております。
とはいえ、ようやく自動車メディアに対してHYbrid Air試作車を公開するところまではこぎ着けました。
200m程度なら圧縮空気によって進むことができるというのは、まさしく渋滞の中でガソリンを使わずに移動できることを意味し、日本においてもかなり効果が見込めるかもしれません。
楽しみな感じですね。
…でも。
これで市販化への道筋がついた…かというと意外とそうでもありません。
記事でも指摘されている通り、まだまだ試作段階であることから実用面でさまざまな課題を抱えています。
また、燃費の改善は期待できるものの、それ以外のクルマとしての魅力についてはあまり大きく向上する部分が少なく、目新しさ以外に訴求力を欠く点が気になります。
当初は市販化の予定を2016年としていましたが、現時点で2017年以降へと変更されています。
当方としては経営再建を続けるPSAが、場合によってはHYbrid Airに関しては市場への投入断念するという選択肢もかなりの確率でありえると考えております。
エンジンの効率改善や電気や水素によるハイブリッドというメインストリームでの技術革新がものすごいスピードで進んでおり、その中でPSAが採用するHYbrid Air方式が市場のデファクトスタンダードになり得る可能性は極めて低く、PSA以外のメーカーがHYbrid Airを採用する可能性が未知数ため、開発投資に対して得られるスケールメリットが見出せないためです。
2013年の時点でHYbrid Airの開発パートナー企業を探していることを公言していましたが、現時点でもまだその成果は表れていません。
もしこれが仮に東風汽車が乗ってきたとしても、販売の主力がガソリン&ディーゼルエンジンであることは変わらず、HYbrid Air搭載車が爆発的に売れる見込みは非常に小さいものとなります。
(東風汽車の主戦場である中国市場では、HYbrid Airが受け入れられるリテラシーはまだ育っていません)
HYbrid Airに関しては開発継続により可能性を探っていくものの、実際のところは電気式ハイブリッドのユニットをどこかから調達するようなことになるのではないか?と考えております。
もちろん発売されたら真っ先に乗ってみたいとは思っています。
しかし、それが3年以上先の話となると、興味が持続するかはわかりません。
それは、他の消費者や自動車メディアも同じことかもしれません。
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