フォード・エコスポーツ登場

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今年のフォード最後の刺客ということで、好調なフィエスタに続いてBセグメントクロスオーバーであるところのエコスポーツ(ECOSPORT)を投入してきた。

そんなわけで内覧会が行われていたので久しぶりにフォード神奈川へ行ってきた。



エコスポーツはフィエスタをベースとして開発され、主に新興国で販売することを目的としたBセグメントのクロスオーバーSUVとなっている。
そのため、欧州フォード車ともアメリカンフォードとも少し毛色の違った感じのクルマに仕上がっている。

なぜこれを日本に投入することになったのかというと、プジョーやルノーが相次いでBセグメントクロスオーバーを投入し、国産勢もカテゴリーリーダーであるJUKEやホンダのVEZELなどが好調に売れていることもあり、フォードもイケると考えたからだそうだ。
また、フォードの「One Ford戦略」に則り、新興国だけでなくワールドワイドに展開していく戦略車種として日本にも投入することになった、ということらしい。

とはいえ、日本市場に最適化できているわけでもなく、良い部分とイマイチな部分があるのは致し方ないところか。

簡単にまとめると…

■良い点
 ・サイズの割に居住スペースに余裕がある
 ・カーゴスペースが広い
 ・初代RAV4のように実用的かつスタイリッシュ
 ・2WDだが、そこそこのオフロード性能を有している
 ・いいボディカラーが揃っている

運転席、助手席ともにちょうどいいサイズ感で、フロントノーズも短いため見切りが良い。
グローブボックスやセンターコンソールのドリンクホルダーなど、いろんなところに収納スペースがあって、このあたりは日本車をよく研究しているなぁ、と思わせる使い勝手だ。
どこぞのプジョー車のように車検証すら入れられないグローブボックスと違い、箱ティッシュやドリンクを入れて冷やすみたいな使い方もできて、あぁ右ハンドル仕様も真面目に作ってるなぁと目頭が熱くなる思いがした。

また、後席のニースペースにかなり余裕があり、4人乗っても窮屈さは感じられないのはこのサイズにしては大きなメリットだろう。
競合車の中でもおそらく一番快適だと思う。

リアシートをダブルフォールディングさせることでカーゴスペースもサイズの割には余裕がある。
実寸で奥行1200mmx高さ1000mmというのは、競合に比べても高さにかなりの余裕があるため、荷物を乗せるのにかなり便利だ。
単にリアシートを倒すだけでも奥行1400mmx高さ750mmとなって、子供用の自転車ぐらいだったら楽に積めると思う。

また、Bセグのコンパクトなクロスオーバーの中では全長が意外と短いため、スタイリッシュに見えるのも好印象。
初代RAV4の3ドアと5ドアのちょうど中間ぐらいの大きさだろうか。
街中で荷物が積めて小気味よく走るにはもってこいのサイズ感だ。
ただし最小回転半径が5.5mとボディの割に大きいのは頂けないが。

走らせてみると、1.5LのNAということもあり、1.0のエコブースト(EcoBoost)エンジンを積んだフィエスタとは異なった感じを受ける。

鈍重というほどではないが、立ち上がりで「来た来たー!」という感じの加速感は無い。
ただし、NAであることからフラットに加速する感じなので、常識的な乗り方をする分にはむしろエコブーストよりこちらの方が自然に感じられるかもしれない。

2WDではあるものの、エンジンマウントを高くすることである程度の水深でも走れるし、それなりのオフロード性能を有しているのも、他のなんちゃってシティクロスオーバー(2008やキャプチャー、JUKEなど)よりは優れている部分と言える。

背面のタイヤが表しているように、実用車として極めて真面目に作っていると言える。


■イマイチな点
 ・新興市場向けなので、組み付けの精度が若干甘い
 ・1.5LのNAエンジンはインパクトに欠ける
 ・ナビを付ける場所が無い
 ・6速DCTだがマニュアルモードが無い
 ・リアゲートが左開き
 ・リアタイヤはいらんよねぇ…


降ろしたてでトリップメーターが60kmにも満たない新車であるにも関わらず、試乗中にダッシュボードあたりからキコキコと異音がした。
ダッシュボードの材質も一世代前の品質という感じで、プレミアムな内装を期待する向きにはイマイチだろう。

まぁ、右ハンドル仕様はすべて製造がインドだそうなので、タイ生産のフォーカスなどより更に品質面では妥協しなければならないということだろうか。

それと個人的に一番いただけなかったのが、シフトゲートにマニュアルモードが無い点だ。
いわゆる+-で自分の思い通りにシフトチェンジできる機能のことだが、正確に言うと+-のゲートが無いだけで、代わりにシフトノブに小さな変速スイッチが付いている。

シフトレバーをDからSに切り替えるとこのノブのスイッチが有効になるので、ノブを握って親指でシフトアップ、シフトダウンを行うことになる。

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(画像はmotordaysさんより拝借)

確かにDレンジに入れておくとDCTによるテキパキとした変速は気持ち良いのだが、いざ自分の意思でシフトチェンジをしようとすると、親指でちまちまと切り替えるのは気持ち良くないし、なにより操作しづらい。

減速のエンジンブレーキや加速の際に1段ギアを落としたい時など、とっさに操作できるわけではないので、あくまでこれはおまけ的なスイッチだと考えた方がいいだろう。

加速に関してはキックダウンが割と素直に効くのでまぁいいとしても、マニュアル車ライクにギアを使いこなしたいニーズにはちょっと不向きかな。
正直言ってこの点はもったいないと思う。

フィエスタもフォーカスも同じ仕組みなのだが、せめてパドルシフトが付いていれば…

あと、SYNCと呼ばれる音声認識(英語のみ)に対応したコントロールシステムによってオーディオや電話といったコントロールが可能になっているが、ここにナビゲーションをビルトインすることができない。

またDINスペースもないため、ナビを取りつける方法がかなり限定される。
というより実質的にPND相当のナビをダッシュボードの空きスペースに無理やり設置するしか選択肢が無い。

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これはエコスポーツに限らず昨今の中途半端にインフォテンメント化された輸入車を日本市場に持ってきた際に多く発生している問題点だ。

VWのup!やBMW MINIなどは無理やりダッシュボードにナビを設置しているが、ご存知の通りPNDは盗難に遭いやすいリスクがある。

このあたりは早くアップルのCarPlayなど世界共通で使えるシステムが普及しないと解決するのは難しいだろう。

中途半端に高度化したシステムはむしろ制約が多くなるという悪い事例とも言える。

他に気になったのは、些細なことだがクロスオーバーSUVとはいえ背面タイヤはさすがにちょいと時代遅れではないか?という点。

荒れ地が多い新興国ではパンクしたらすぐにタイヤを変えられるように背面に取りつけてあるのはメリットとなるが、日本においてはそんな悪路はほとんどないし、クロカンブームも今や昔という状況なので、正直これを取り去ってパンク修理キットでも積んでおけばその分軽量化になると思う。

その代わりに背面キャリアでも付けて自転車を載せられるようにするとかね。

リアハッチが上でも右でもなく、左に開くのは日本の道路状況においてはどうなんだろう?とも思うが、あまり深くツッコむような欠点ではないのでこれはいいとする。

最後に、エコスポーツという商品名から連想されるように、やはりエンジンはエコブーストを積んだものにして欲しかったというのが正直なところ。

欧州でも随時エコブースト化したエンジンが載せられていくようなので、それを待ってから投入しても良かったんじゃないか?という気がした。

まぁあくまでイメージ的な話ではあるのだが。

現状のエコスポーツも実用十分で、日常の道具として使う分には全く問題ないと思う。
やはりどうしても値段に目が行ってしまうのだが、フォードは標準価格が高い割に大幅な値引きをする慣例があるので、それだったらせめて220万円ぐらいで出して値引きを抑えてくれた方が、消費者に受け入れられる余地もあるかと思うんだけどねぇ。

ただし、鮮やかなブルーとレッドのボディカラーは実車でみるととても映える。
以前クーガで一目惚れしたマーズレッドと同じ色がエコスポーツにもラインナップされている。
キャプチャーにも似たような色があるが、エコスポーツのマーズレッドは格別だ。

これだけでも親指立ててしまいそうな感じ。

フォードジャパンもエコスポーツがどれぐらい売れるかは予測ができないと言ってるらしいが、フィエスタが好調なこともあってエコスポーツもそれなりの台数を用意するようだ。


あれこれ書いてきたが、Bセグメントとは思えない使い勝手の良さとキャラクターは、他の日本車や輸入車ともちょっと違った雰囲気なので、そこに価値を見いだせるのであれば割と積極的にオススメしたいクルマであることは間違いない。

ディーラーにも多くのお客さんが来ており、今年のフォードはけっこう販売台数増えるかもしれないと思いましたとさ。


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