そんなわけで、208(中身は別モノだったけど)&セバスチャン・ローブでパイクスピークを制したプジョーさんが、今度は2008&カルロス・サインツ、そして2輪から転向してきたシリル・デプレ(個人的にはこっちの方が驚いた!)という布陣で2015年のダカールラリーに復活することを発表しましたよ。
今回の参戦についてはプジョー・スポールが主体となってTOTAL、レッドブルというスポンサー(パイクスピークの時と同じメンバーシップ)で挑む事になります。
パイクスピークのエントリーの際に書いたように、経営再建中のPSAがモータースポーツというプロモーション活動に割ける資金は限られており、世界を転戦するようなWRCやWTCCではシトロエンも大幅な予算縮小を余儀なくされており、プジョーはどちらかといえば単発のイベントに参戦する方向で細々と活動を続けております。
その最たるものが昨年のパイクスピークへの参戦だったわけですが、ダカールラリーもある意味単発のイベントと言えなくもありません。
2週間で10000kmも走る非常にタフなラリーになりますが、その辺りは優勝経験もあるサインツを連れてきたことで、マシンの開発についてのある程度の期待が持てそうであります。
以前はVW、そしてここ最近はBMW MINIの独断場になっているダカールラリーにおいて、プジョーが存在感を発揮してくれると非常に楽しいことになりそうであります。
さて、ここで気になるのは参戦する車種なわけですが。
ベース車両は2008です。
これを「2008DKR」と命名された特別仕様に仕立てて参戦することになるわけですが、なぜ2008なのか?
悪路走破性の高い車種として既に208のラリー仕様やWRCでの経験のあるDS3をベースに使う、もしくはよりオフロード向きの3008を使うという手もあったわけです。
他社の事例では…
2014年のダカールで上位を独占したBMW MINIは、ベース車両をMINI Countryman(日本名:Crossover)を使用しているように、クロスオーバーSUVのボディタイプをベースとした方が有利であるわけです。
その意味で、2008を使うというのは一定の理解はできます。
そしてもうひとつ重要なのが、ダカール参戦は大きなプロモーション活動の一環であることも忘れてはなりません。
昨年から販売が開始された2008は、欧州はもちろん中国、中南米を中心とした新興国を攻略するための世界戦略車種であり、ダカールラリーという世界的に有名なイベントで活躍すれば、そのプロモーション効果は非常に大きなものになるわけです。
ダカールラリー(以前はパリ~ダカールラリー)と呼ばれてはいるものの、現在はその舞台を中南米に移しての開催であり、パリもダカールも関係ない場所で行われています。
逆に言うと、プジョーにとって中南米は上記したとおり商売をする上で重要な場所であり、戦略車種である2008をアピールするにはもってこいの舞台であるということでもあります。
昨年のパイクスピーク参戦は、プジョーを販売していないアメリカでの開催というちょっと特殊な事例でしたが、あれは世界的に注目の集まるヒルクライムイベントであったことからプロモーション効果が高いと判断しての参戦でした。
(他にあの規模で有名なヒルクライムレースはありません)
そう考えると、今回の「プジョーの」、「2008による」、「ダカールラリー参戦」には非常に合理的な意味が見出せるわけです。
逆にこれだけの条件を揃えないと、PSAはモータースポーツにお金を出す余裕がないとも言えます。
それにしても。
レース参戦のベース車両が必ずしも一番適した車種ではなくプロモーションの都合に左右されるのはどのメーカーでも状況は似たようなものでありますが。
プロモーションの都合でハッチバックではなくクーペカブリオ(メタルトップのオープンカー)を仕立ててWRCに参戦したはいいものの、まったく戦闘力を発揮できなかった307WRCの悪夢が脳裏をよぎります…
あのマーカス・グロンホルムを以てして「こんなクルマにはもううんざりだ!」とキレさせた、あの悪夢を…
とにかく、参戦するからにはしっかり準備して必勝態勢で。
願うのはただそれだけであります。
ちなみに「2008DKR」は4月の北京モーターショーで発表されるそうです。
この辺も、どの市場を重視しているかというのがよくわかりますね。
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