「PureTech(ピュアテック)」の表記が消えたらしい

 
パワートレインを刷新した新型208ならびに先日発表された新型C3。

どちらも1.2Lの3気筒エンジンとETG5を搭載したことにより、アイドリングストップなどの装備も含めた新要素を総称して「PureTech(ピュアテック)」と呼称することで新規性をアピールしていた。
この「PureTech」は欧州でも使用されており、PSAのパワートレインの呼称としてブランド化を進めているものだ。

しかし、どうも日本においてその表記が突然消え、「New Power Train(新パワートレイン)」と表記が変更になったということが下記のBLOGで指摘されている。

脇が甘い~消えたピュアテック【PureTech】の謎

よくこんなこと気が付いたなぁ。
確かに208の公式サイトもC3の公式サイトにも「PureTech」の表記は無い。

上記BLOGの指摘をもう少し整理して事実関係を見ていこう。

プレスリリースにおける表記については、

■2013.11.20
プジョー「2008」を発表、2014年2月より発売開始

■2014.1.6
プジョー、208「PureTech」搭載モデルを発売

■2014.2.17
シトロエン「C3」に新パワートレインを搭載し発売開始

となっており、2008の発表時点で「PureTech」の表記は使われておらず、1月6日の新型208発表の段階で大々的に「PureTech」という名称をアピールする形で露出が始まっていることがわかる。

このプレスリリースを受けて多くの媒体が「PureTech」の表現を用いて記事を書いているのは上記BLOGの指摘通り、検索結果からも見て取れる。

しかし、2月17日の新型C3のプレスリリースにおいてはすでに「新パワートレイン」という表記を使っている。

差し替えられたのかな?とも思ったが、当方のエントリーでも確かに「新パワートレイン」という表現を引用していることから、発表時から「PureTech」の表記は使っていなかったことになる。

つまり、1月6日~2月17日までの約一ヶ月の間に問題が発覚して、対応に追われていたというのが現状なのだろう。

208サイトでの「PureTech」から「新パワートレイン」へと表記が差し替えられたのは当方も確認しているが、C3のサイトが差し替えられたのか、最初から「新パワートレイン」と表記されていたかどうかは当方は覚えていない。

とはいえ、一次ソースに当たってみないと確定的なことは言えないので、プジョーコールにお電話して聞いてみましたよ。

「確かにPureTechから新パワートレインと表記を変更した」
「呼び方が変わっただけで、メカニカル面での変更は一切ない」
「変更した理由はあくまで社内事情としか申し上げられない」

とのことであり、何らかの事情で呼称を変更したことは事実であるとしたものの、明確な理由については答えられないとのことだった。

「他社の商標に引っかかったからでは?」と振ってみたところ、「どこでその情報を聞きましたか?」的なこと逆に聞き返されたので、それなりに気にしていることは確かなようだ。

表現が差し替えられた理由としては、指摘されているように「Pure Tech」ならびに「ピュアテック」という名称に関しては、すでにスズキによって商標が取得済みで使えなかったということで間違いないだろう。
【登録番号】 第5441337号
【登録日】 平成23年(2011)9月30日
【出願番号】 商願2011-870
【出願日】 平成23年(2011)1月8日
【先願権発生日】 平成23年(2011)1月8日
【最終処分日】
【最終処分種別】
【出願種別】
【商標(検索用)】 Pure Tech
【標準文字商標】 Pure Tech
【称呼(参考情報)】 ピュアテック,ピュア,テック,テク
【ウィーン図形分類】
【権利者】
【氏名又は名称】 スズキ株式会社
【類似群コード】 09B01 09F01 09F02 09F03 09F04 10D02 12A01 12A05 12A06 12A73
【国際分類版表示】 第9版
【区分数】 2
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
7 船外機
12 船舶並びにその部品及び附属品,自動車並びにその部品及び附属品,二輪自動車・自転車並びにそれらの部品及び附属品,電動四輪車並びにその部品及び附属品,車いす,陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),陸上の乗物用の機械要素
商品に関する名称というのは企業にとってはもっとも神経を使わなければいけないポイントであり、当然のことながら発売前に商標検索をして他社の権利侵害をしていないことを確認するというのはその辺の中小企業ならともかく、世界的に名の知れたインポーターの仕事としては当然のルーチン業務だと思うのだが、なんでこんな事態になってしまったんだろうか?

ちなみに、商標問題についての解決策としては、

 (1)別の名称に改める
 (2)使用料を払って使わせてもらう

といった方法があり、(1)についてはルノーが欧州名「クリオ」の名称をホンダが取得しているという理由から日本だけ「ルーテシア」と名乗ったり、BMW MINIが同様に「MINII Countryman」の名称がデルタによって商標登録されており、「MINI CROSSOVER」として販売されている例が有名だ。

それに対して(2)については、アップルの「iPhone」発売のずっと前にインターフォンメーカーが「アイホン」という名称で商標を取得していたことが発覚したために、アップルがアイホンに使用料を支払って使用させてもらっているという話が有名だ。

今回の「PureTech」に関しては、純粋な商品名ではなく機構の総称ということで、わざわざスズキに金銭を支払って継続使用するより、「新パワートレイン」と呼称を変更する方針を選んだという事なのだろう。

しかし、WEBページの修正や販促物の刷り直しなど、余計なコストが発生したことは損害としてはけっこう無視できないと思われる。
担当者のクビが心配だ。

前回のエントリーのようにプレスリリースがおかしかったり、商標チェックを怠って余計な問題を引き起こしたりと、どうもPCJ(プジョー・シトロエン・ジャポン)全体がおかしくなっている印象を受ける。

フランスのPSA本社がそれどころではないという理由もあるだろうが、メディアタイアップやブリーフィングなどがあまり行われていないっぽいところからも、人手不足以上の何か理由があるような気がしてならない。

いったいどうしたもんですかね、こういうのは?
 
 

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