フェイスリフト(Face-lift:外装意匠の変更)が必ずしも性能アップを伴うものではないというお手本のような仕様変更のお話だよ。
そんなわけで、プジョーのフルラインナップにおけるSUVパートを受け持つ3008とミニバンパートを受け持つ5008が、昨年8月末の欧州でのフェイスリフトから遅れること半年で国内にも投入されることが発表された。
プジョー、「新型 3008 フェイスリフトモデル」を発売
プジョー、「新型 5008 フェイスリフトモデル」を発売
あまりやる気の感じられないプレスリリースから、なんとか話題を見つけてフォローしてやろうという、親切なんだか意地が悪いのかわからんエントリーを書いてみる。
まずは3008から。
■3008の主な変更点今回の大きなトピックはフェイスリフトに伴う見た目のデザインの変更だ。
その他の変更を見てみると…
・フォロントならびにリアデザインの変更 ・内装の一部変更 ・グリップコントロールの搭載 ・装備を見直して大幅値下げ ・-70kg軽量化するも燃費は変わらず ・エントリーグレード「3008 Style」は設定されず ・スペアタイヤの搭載 ・その他主要諸元に変更なし
そのため、プレスリリースを見ても、マイナーチェンジというよりはランニングチェンジ(小変更)に近い印象を受ける。
しかし、よくよく見ていくといくつか特徴的な部分が見えてくる。
■グリップコントロールの採用トラクションコントロールを進化させ、5つのモードで駆動輪へのエンジントルクとブレーキを制御する機能であり、本来であれば3008のSUVとしての性能をアピールする最大のポイントになりえる機能だったのだが、
なぜか国内に投入された従来モデルではこの装備が省かれていた。
そのため見た目はSUVっぽいのにSUV的なアピールが出来ない、なんともボンヤリした感じのクルマになっていた。
グリップコントロールの採用で、少しはキャラクターがハッキリするようになったのはいいことだと思う。
とはいえ、導入時の戦略ミスをようやくリカバリーしただけで、新規性は無いのだが。
■装備を見直して大幅値下げグレード体系を「3008 Premium&Griffe」から「3008 Premium&Cielo」と改めたが、これに伴い従来の高すぎた価格設定を修正してきた。
グレード | 旧価格 | 新価格 | 差額 |
3008 Premium | 3,420,000 | 3,290,000 | -130,000 |
3008 Cielo | 3,880,000 | 3,590,000 | -290,000 |
これに伴い322万円という廉価グレードだった「3008 Style」はラインナップの設定がなくなった。
(昨年6月の価格変更の時点ですでに価格表からはドロップしていた)
変更された装備面を見てみると…
あまり役に立つ感じのしなかったHUD(ヘッドアップディスプレイ)だが、Premiumでは非搭載、Cieloではカラー化している。
これに伴い前車との距離が接近すると警告を発するディスタンスアラートもCieloだけの装備になってしまったが、別に
衝突防止の自動ブレーキの機能があるわけではないので実用上はまったく困らないだろう。
その他、フロントフロアイルミネーション、ドアステップガード、エマージェンシートーチ、助手席シートバックがPremiumから削られ、盗難防止アラームやフロントソナーは両グレードから削減された。
あまり影響のない部分の装備を省いたことで低価格化したということだろうが、元々
欧州では3008と5008の価格はほぼ同じぐらいで販売されており、
日本での3008の価格設定があまりに高すぎたということになる。
■-70kg軽量化するも燃費は変わらず従来モデルと比較していて気が付いたのだが、車両重量が従来モデルに比べて-70kgほど軽量化されている。
これに伴い車両重量が1500kgを切ったことで
重量税が1ランク安くなり、維持費が有利になる。
割と大きなトピックのはずだが、何故かプレスリリースでは一切言及がない。
また、軽量化すれば燃費も向上するような気がするが、諸元での燃費は10.4kmL(JC08モード)ということで変わっていない。
おそらくJC08モード燃費の試験を受けていないのでは?と思われるが、燃費の向上についてはもう諦めているとしか思えない。
あまり台数の売れる見込みのない車種は、再試験のコスト負担を避けるため従来通りの諸元で販売するケースがある。
ただし、軽量化されたことは燃費向上には明らかにプラス要因ではあるので、ひょっとすると実燃費の部分では向上が見られるかもしれない。
■スペアタイヤの搭載地味な部分だがスペアタイヤが搭載されるようになった。
従来モデルはスペアタイヤを搭載するスペースはあったものの、そこにはパンク修理キットが用意されているだけだった。
スペアタイヤを搭載せずにパンク修理キットで対応する流れは世界的なものであり、なぜその流れに逆行したのかはよくわからない。
ただし、いくつかの事情が透けて見える。
本来スペアタイヤ非搭載が進んだ理由は以下の通り。
・スペアタイヤの利用率は低い ・パンク修理キットにすることで低コスト化&軽量化が図れる
世界的にクルマの燃費が重要になってきており、軽量化というのは燃費向上に一番効果が見込める要素だ。
また、スペアタイヤを搭載しても実際には一度も使われず破棄されるようなケースもあり、エコの観点からも改善を求める声が多かったことも、自動車メーカーがパンク修理キットを代替品として採用するようになった理由だ。
その流れを受けて3008もスペアタイヤ非搭載という仕様で登場したのだが、SUVというキャラクターでスペアタイヤが搭載されていないのはいかがなものか?という声が一部であったのは事実だ。
個人的にはパンク修理キットで十分だと思っているが、プジョーとしてはそういった声に応えるために、スペアタイヤを搭載することにしたのだろう。
そうすると疑問なのが、上記の-70kg軽量化との関係だ。
スペアタイヤは軽く見積もっても10kg以上の重量があるわけで、これが従来通りパンク修理キットのままであれば、もう少し軽量化できたのではないか?とも思う。
実際のところはどうなんだろうか?
■まとめ「グリップコントロール」以外にも「値下げ」「軽量化」という話題があるにも関わらず、
プレスリリースでは全力でスルーするというこの残念な感じ。
それを何の利害関係もない当方がブログで全力でフォローするというこの関係性に我ながら萌えてしまう。
まぁ、3008そのものの商品力から考えると、それほど力を入れても販売を向上させるのは難しいという気もしないでもない。
でも、せめてプレスリリースぐらいは空元気でもいいからアピールすべき点はしっかりアピールしましょうよ。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ。」
この記事へのコメント
通りすがりです
既に他の欧州車で優良な車種が多く出ているため,プジョー・ジャパンが少し頑張ったくらいでは追い付けない.頑張るだけ無駄という諦めからこのような発表になるのでしょうか.まぁ思いっきり頑張っても追い付けないか・・・
売れない希少車種であることに,乗る価値があるのかも知れません.でも出来ればよい作りであって欲しいのですけどね.プジョー・ジャパン頑張れよ...
海鮮丼太郎
コメントいただきありがとうございます。
日本という市場で商売するには当方のようなアレもコレもというニーズに対応しなければならない、世界でもトップクラスで面倒くさい市場であることは間違いないんですよね。
それでも世界中のメーカーが日本市場で商売しようと切磋琢磨しているわけです。
商品力を高めたり、広告宣伝を工夫したり、政府を使って圧力をかけたりと様々ですが、売るための努力はしているわけです。
今回このエントリーを書いたのは、商品力が劣っていても、プレスリリースでなんとか魅力を伝える努力をするというのが、少ない武器で戦うための最低限やるべきことだと思っているからです。
しかも、「値下げ」と「軽量化」というキーワードがあるなら、それなりに媒体に取り上げられやすいリリースが書けたじゃないか、という気持ちが強いわけですね。
マイナーチェンジをするというのは、少なくとも売る気はあるということです。
だったらせめて売る気を見せてくださいよ、なんて言いたくなるわけです。
日産やフィアットを見ればわかるように、商品力が弱くてもアピールの仕方をうまくやればそれなりの存在感を発揮できるわけです。
諦めるにはまだ早いと、心の底から思っております。