2008を見てきた(2)

2008_01.JPG
 
前回のつづき。

今回の内覧会で展示してあったのがカラド・ブルーの2008 Premium、試乗車がパール・ホワイトの2008 Cieloだった。

雪はかなり解けているとはいえ、道路はまだまだ濡れ&汚れており、真っ白なクルマで走るのは気が引けるのだが、試乗車がこの色なのだからしょうがない。


乗り込んでみると、ドライバーズシートが妙に後ろ下がりな感じを受ける。

フットペダルの角度とステアリングの高さ、そしてシフトレバーを操作しやすい腕の距離など、適正なドライビングポジションに調節するのにえらく時間を要してしまった。

床が水平でないのか、シートが後ろに傾斜しているのかはわからないが、208のハッチバックではこんな感覚にはならなかったので同乗した営業マンに聞いてみたところ、全高が上がってる分ドライバーズシートのセッティングを少し変えている、なんて話だった。
(10mmしか上がってないけど…)

なんとなく後ろにずり下がるような感じは、上下アジャスターで座面を上げることでなんとか調整はできるものの、どうにも違和感が取れなかった。


世田谷店の地下駐車場から試乗コースの環状八号線に出るまでにけっこうな勾配の坂を上ることになる。
期せずしてヒルスタートアシストを体験することになったのだが…
ストップせずに後ろにずり下がってしまった。
3回ほど試してみたが、きちんと動作したのは1回だけ。
ブレーキをしっかり踏んだ状態であれば仕様上は2秒間ほどホールドするということだったが、原因は不明。
以前ヒルスタートアシストなしのスマートに乗っていたので、こういう場合にとっさに左足ブレーキに踏みかえて対応したが、あまり機能を過信しない方がいいかもしれない。

ズルズルとクリープ状態で上るようなシチュエーションにおいては、アクチュエーターの制御の限界からか、ガクガクと細かい振動を伴ってしまう。
要は半クラッチがうまくいってないわけだが、ちょっとこの精度はガッカリしてしまった。

Bセグメントクラスならこれでも許されるかもしれないが、Cセグメント以上でこの制御だとちょっとキツいな…
欧州では新型308にもETG6を使っているようだが、あちらの評価はどうなんだろう?


環状八号線の出ていつもの試乗コースを走ってみた。

走り出して最初に感じたことは、重量とパワーがちょうどいいバランスになっていると感じられたことだ。

ETG5(PureTech)化された208ハッチバックに乗った際は、軽量だった208がさらに大人一人分ぐらい軽くなった(1070~1090kg)おかげで、むしろクイックで軽すぎるという印象すら受けたのだが、2008は1140~1160kgということで、操る分には落ち着いた感じで運転できる。
最低地上高は208とほとんど変わらないので、アイポイントもSUVのちょっと見下ろすような感じはあまりしない。
後述するが、感覚的にはステーションワゴンに近い乗り味だ。

3008のフェイスリフトでようやく導入されるグリップコントロールは国内仕様の2008には搭載されておらず、そもそもSUV的な走り方をさせるつもりがないというメッセージと受け取った。
マイナーチェンジで搭載してくるのかもしれないが、こういう施策がキャラクターを不明瞭にしているということをいい加減理解したらどうなのか。


例によってETG5の挙動はシングルクラッチの2ペダルMTということで、シフトチェンジの度に一呼吸おく感じは変わらない。

クラッチ操作を自動でやってくれていると考えれば十分納得のいくデキであり、この手の機構の中では制御はスムーズな方なのだが、ATのように一気に加速したいというシチュエーションではやはり失速感を伴うフィールは気持ちのいいものではない。

「これはATじゃなくて、クラッチレスのMTなんだ」

という言葉を頭の中で繰り返しながら自らを洗脳するしかない。
こういうものなんだ、と。

一点つまらないと感じたのが、このパワートレインの特徴としてエンジンブレーキがほとんど効かないので、パドルシフトを操作する意味がほとんどなくなってしまっているのは悩ましいところだ。
シフトアップの際に自動制御でイライラする向きには積極的にパドルシフトを使ってほしいと思うが、減速では役に立たないということだけお伝えしておこう。


環状八号線を往復で10kmほど走ったところ、燃費計の値は約13km/Lだった。
例によって燃費表示が欧州方式の○○L/100km方式(100km走るのに何Lのガソリンを消費したか)の表示になっており、頭の中で暗算しなければならないのはどうしたものか。

一時期はちゃんと日本式の○○km/L表示に対応していたのに、最近のモデルではやめてしまった。
他の輸入車はちゃんと対応する傾向にある中、この手のカスタマイズ工数をケチるのは非常に良くない。
バージョンアップで対応する予定はあるのか?と聞いたところ、「未定」との回答。
こういうところは営業サイドから声を挙げていかないといつまで経っても改善されないと思うんだが。

案の定、跳ね上げたドロで汚れまくってしまったパールホワイトの試乗車を地下駐車場に戻し、再び展示車に戻る。

肝心の積載性はどうなのだろう?
2列目のシートを倒して荷室を実寸で計測してみると、全長1550mmx全幅1000mmx全高850mmということで、207swとほとんど変わらない。

2008はクロスオーバーSUVのように見えるが、実質的にこれはステーションワゴンであり、208swだ。
そう考えると、2008はほぼ死滅してしまった輸入コンパクトステーションワゴンとして存在感を発揮できるのではないかと思った。

ただし、メカニカル的な部分で決め手に欠けるという向きもあるだろう。
その場合は、入ってくるかどうかはわかならないが、圧縮空気を利用したハイブリッドシステム「Hybrid Air」採用の2008の登場を待つという選択肢もあるかもしれない。

3月のジュネーブショーで、プジョーとしてはHybrid Air搭載車を2016年までには市販化することを公式にコミットするようだ。
先の長い話ではあるし、未だにこのシステムを量販車に採用した場合の効果については懐疑的な声も多いが、出すというからには本当に出すのだろう。

ネタとしては魅力的だ。
ネタでクルマを選ぶ人がどれだけいるかは未知数だが。


さて、2008に関して当方の都合の話をすると。
積載性と居住性の両立を求めており、自転車を気軽に積み込んだり長尺モノを積むので荷室長1800mmぐらいは欲しい。
そのため、2008の荷室の全長の短さは当方としては残念ながらニーズに当てはまらなかった。
これはデュアリスを断念した理由にも通じる。

このニーズを満たすには、やはりCセグメントのステーションワゴンを探さなければならないようだ。
(5ナンバーサイズのフィットシャトルが実は積載性がものすごく優れているのだが、モデル末期なのでちょっと食指が伸びない)

あかん…
本当にプジョー車でニーズに合うクルマが無いぞ…

そんなわけで具体的な商談に進むことはなかったが、よく見ると安っぽい材質であるものの、なんとなく高級感の演出はできているし、過剰とも思える装備が付いていたりするので、ニーズに合致するのであれば十分魅力的なクルマであることは間違いない。

事前予約を受け付けていたこともあり初期オーダーは順調に入っているらしいので、今年は2008の販売で落ち込んだ販売を回復させられるといいですね。

とりあえず当方は、6月にやってくる307swの5回目の車検を通す決断をした。
来年初頭に発売予定の新型308swを見て判断することにしようかと。
 

 

この記事へのコメント

  • acatsuki-studio

    個人的にはは308SWにものすごく期待していますが、書かれている積載能力があるかはまだ未知数ですね。カッコには大興奮したんですけど。
    2014年02月18日 20:28
  • がぬっち

    いつも面白く拝見させていただいてます。
    早速の2008試乗レポも楽しませて頂きました。
    可能であればガチのライバル車である
    ルーテシア
    キャプチャー
    フィエスタ
    の試乗レポも期待しております。
    あ、シトロエンの試乗も期待したりして。
    2014年02月19日 01:01
  • 海鮮丼太郎

    遅レスすいません。

    >acatsuki-studioさん
    新型308swの積載能力についてはクラストップレベルなので期待していいと思います。
    ステーションワゴンとしては非常に正統派な造りだと思います。
    307Break以来ですかね、こういうのは。
    逆にギミックの面で多少物足りない感はあるかもしれません。

    >がぬっちさん
    もちろんルノーとフォードにもお邪魔してチェックしたいと思っています。
    気長にお待ちいただけると幸いです。
    今後ともよろしくお願いします。
     

    2014年02月24日 23:37
  • こまこ

    2008の購入を検討しているのでとても役立ちました。宣伝も兼ねたいいことしか書いてない体験レポよりも生の声が聴けてよかったです。はやりよさげだな、という印象なので、今週末にでも試乗の予約をしてみまます!ありがとうございました☆
    2014年08月26日 21:17
  • 海鮮丼太郎

    >こまこさん

    多少なりともお役に立てたようで何よりです。
    ETG5はちょっと特殊なトランスミッションですが、走り始めてしまえばそれほど違和感はありません。

    逆に、走り始めに違和感があるとも言えます。

    停止状態から1→2速の挙動について、しつこいぐらい試乗でチェックしてみてください。

    あと、広い駐車場で駐車スペースを探す際にノロノロと走るシチュエーションがありますが、あれをイメージした走り方をしてみてください。

    アクチュエーターの制御があまり賢くないため、ノロノロ状態ですと少々ガタガタという感じの挙動を見せることがあります。

    あれが許容できるかどうか?というのもポイントになるかと。

    それと文中でも触れていますが、坂道でゆっくり発進した際の挙動についてもチェックしてみてくださいね。

    ポイントはこの辺りだと思いますので、これらが許容できるのであれば、魅力的なクルマだと思います。
     
     
    2014年08月27日 10:06

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