知られたくないことだってあるんだよ


当方、生まれた時から電気ビリビリな感じで育ってまいりまして。
マイコンとか呼ばれてる時代から、カセットテープのロード音で何のプログラムか当てられる特殊技能を身に着けたりもしました。
で、コンピューターにバラ色の未来の可能性を信じて、仕事はずっとコンピューター関連、現在は電子書籍界隈で仕事をしております。

で、そんな当方だからこそ気になるニュースがあったりするわけです。
  
スタートアップ企業、電子書籍読書データのトラッキングに集中

読者が電子書籍をどのように読んでいるかというデータは、今後さらに活用が進みそうだ。

出す側からすれば喉から手が出るほど欲しい情報だろうけど、これが本格稼働したらエロ系の本とか売上を落としそうだな。
っていうか、個人の趣味嗜好や思想信条のデータ取得に直結する話なので、エロ系じゃなくてもやだけど。

どういうことが起こるかというと、本を完読したかどうかという情報以外にも、

「どのページで読むのを中断しているか」
「どのページを読み返しているか」

なんて情報が取れることを意味しており、つまりエロ関係に例えればどんなシーンやシチュエーションが好きか、なんてことが筒抜けになるわけですね。

この手の技術はすでに音楽や動画配信などのサービスでも導入されていて、電子書籍だけが例外って話でもないことは分かっているわけですが、それでも釈然としないものがあるわけです。

DMM.comのエロ動画サービスとかでもこの手のデータを活用してたりするんでしょうが、あちらは使う側もある程度覚悟を決めて利用しているわけで、ある程度のトレードオフが成立していると思います。

しかし、本の場合は1つのタイトルを消費するペースが他のコンテンツに比べて長いので、コンテンツの進捗状況というのは情報としての検証、活用の可能性は大いに拡大するわけです。

利用者側に何らかのメリットがあるのであれば話は別なわけですが、現状では「まず情報を集める」ことばかりが優先され、利用者側のメリットまできちんと考えが及んでいない、またそれを拒否するかどうかの選択の権限を利用者側に与えないという姿勢が非常に気になります。
(もちろん嗜好に合わせた商品をオススメされることがメリットと感じる人もいることは否定しませんが)

これが仮に無料視聴の代償としてその手の情報を提供するなら多少は許容してもいいですが、自分で金出して買ったコンテンツでこんなことやられるんだったら、少なくとも当方は電子書籍の利用をやめて自炊に切り替えます。

っていうか、読書そのものに費やす時間を減らすかもしれません。

なんで当方がこうしたことに生理的な嫌悪感を示すのかというと、ビッグデータ界隈のやったもん勝ちの雰囲気が蔓延しつつある中で、アドテク(より精度の高い広告を届ける技術)の名のもとに、スタートアップ界隈ではモラルとかデリカシーとかいった考えはどこかに飛んでしまっているような感じがするからなのですね。

簡単に言えば、発想がガキっぽいわけですよ。
周りの迷惑を顧みずに奇声を挙げて駆け回ってる、あの感じです。
「Don't be evil」を標榜する会社が最もEvilな存在の筆頭になっているあたりでお察しという気もしますが。

技術の進歩で、今まで得られなかったようなデータを集めることができるようになったわけですが、それで何をやってもいいという話ではないでしょう、という至極当たり前のことなんですけどね。

それにしても、コンピュータとネットワークの進化の行きつく先がこんなことでいいんですかね?

夢や希望を語るような歳じゃないですが、少なくともこんな未来のためにコンピュータ業界を目指したつもりは無かったんですが。

なんだか猛烈にこの業界で仕事するのが嫌になってきた今日この頃。
 
 

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