C4カクタスの突破力

C4Cactus.jpg

本当にこれで出すのか?
と疑問に思うようなデザインというものがある。

何度かブラッシュアップされ、それがいざ本当に発売されるとなると、それなりに魅力的に見えてくるから不思議なものだ。

そんなわけで、今後のシトロエン(C Line)の方向性を示すテンプレートとでもいうべきC4カクタスが発表された。

http://c4cactus.citroen.com/uk

特徴的なエクステリアデザインと、シンプルかつ巧みな構成のインテリアという組み合わせを特色としている。
ルノーのキャプチャーとまでは行かないものの、特殊樹脂パーツと組み合わせてカラーリングのアクセントの多彩さは、このデザインをうまく際立たせる役割を担っている。
こういうのは、コストが掛かってもカラフルな選択肢を用意しておくに限る。

パリで開催されたイベントにおいてシトロエンのデザインセンターでブランド構築を担当するマーク・ロイドが

「人々の消費性向は変化しているのに、クルマはあまりに伝統的であり、消費者の変化に対応できていない」

と語っている。
それが意図することはデザインや使い勝手の革新といったお題目もさることながら、コスト意識についての意味合いも兼ねていることは容易に想像できる。
C4カクタスは“Cセグメントのスタイリングと居住性”を“Bセグメントのランニングコストで提供する”ことを目指しており、パッケージングと軽量素材の活用によりノーマルのC4より-200kgも軽量の965kgを実現した妙に軽いクルマが出来上がった。

軽さは燃費に直結する要因だし、コストが上がるからという理由でハイパフォーマンスエンジンを搭載する予定はないと明言するなど、大衆車としてのニーズに徹底的にこだわっているように感じられる。

ここで「ん?」と思った人。
C4カクタスの寸法を見てみよう。

C4 Cactus 全長 4,160mmx全幅 1,730mmx全高 1,480mm


ということで、ホイールベースこそ従来のC4と同じ2,600mmではあるものの、シャシーはDS3と同じ(EMP2プラットフォームではない)ものを流用しており、どちらかと言えばサイズ的にはBセグメントクロスオーバーに属するという見方の方が正確と言える。

つまりこれは、素性は違えどプジョー2008との異母兄弟みたいなクルマということになる。

2008 全長 4,159mmx全幅 1,739mmx全高 1,556mm


クロスオーバーは、ベースとなる車種から各種装備をプラスしていく発想なので、ベース車より大きくなるのが通例だ。
2008も208のハッチバックをストレッチして作られている。

今回のC4カクタスは、名目上のベースとなるCセグメントのC4に比べてもコンパクトであり、使用されているプラットフォームも1サイズ下のものを使うなど、明らかにC4の名前を冠するには違和感がある。

このような例は日産がブルーバードの後継車を、ワンサイズ下(本来であればサニークラス)の車種で作って無理やり「ブルーバード・シルフィ」と名付けて販売したり、どう見てもランサークラスなのにマーケティングの都合で「ギャラン」と名付けて売っている三菱自動車などと考え方は似ている。

しかし、それが必ずしも悪いことではない。
要は、消費者にとって魅力的な商品として仕上がっているのであればどうでもいいことだ。

C4カクタスはその魅力的な商品と言えるだろうか?

答えは「Yes.」だと思う。

何より、その有無を言わさぬスタイリング。

Bセグメントクロスオーバーとして捉えると、発表された時はあまりに異様なスタイリングで驚かされた日産のJUKEというお手本が存在しており、正攻法のアプローチであるプジョー2008に対して、シトロエンはC4カクタスの先鋭的なデザインで攻めるという姿勢で、PSAグループにおける両社のポジションを明確にする意味でも非常にわかりやすいアプローチだ。

そして、奇抜なデザインの割にコストダウンはしっかりやっており、今後のバジェットブランド化を見越してじゅうぶんな利益が取れる構造になっていると思わる。

よく「国産車の内装はチープだ」などと言われたりするが、C4カクタスの実物はあれに近いものになるのではないかと写真を見る限りでは思う次第也。

でも、「それがどうした?」と思わせるほどの突き抜けた魅力があればいい話。
そして、C4カクタスはデザインでその突き抜けた魅力を打ち出してきた。

もともとシトロエンというブランドは、こうした奇抜なデザインを打ち出すことで存在感を発揮してきた。
その意味では古き良きシトロエンが帰ってきたとも考えられるわけで、これが本当にBセグメント並みのコストパフォーマンスを持っているとしたら、これを買わない理由がないだろうと思う。

シトロエンは国内未導入のC3ピカソもそうだが、派生車種を作らせた方がいいものを作る。
その分メインストリームであるC3/C4/C5が撃沈しているのが悩ましいところだが。

DS Lineで一定のプレミアムな顧客を獲得することができたが、2013年は販売も頭打ちになって今後の戦略を大きく転換しなければならないシトロエンにあって、C4カクタスは国内に真っ先に導入すべき車種であることは間違いない。

現在のところ2014年のシトロエンは秋にC4ピカソの導入が予定されている以外に新規車種投入の話が無いわけだが、3月のジュネーブショーでお披露目されて注目度が高まっているうちに国内販売の道筋をきちんと明らかにした方がいい。

メカニズム的に多少古くても、このデザインの突破力はFiat500に通じるものがある。
大事に育てれば大化けする可能性も高いだけに、PCJは気合いを入れて取り組んでほしいものだ。

っていうか、プジョーの2008よりはるかに購買意欲をそそられる…
こんなに早く実車を見てみたいと思わせるクルマは久しぶりだ。
 
さて、肝心のお値段はどれぐらいに設定してくるかね?
バジェットブランド化することで、プジョーより下の価格帯にシフトすることになるC Lineという位置付けからすると、国産車に+αで手が届くという、かつてのプジョーが絶好調だった頃のボジションに収まる可能性がある。

2008より安かったりしたら、けっこう大きなニュースになるのかもしれない。
 
 

この記事へのコメント

  • カクタス太郎

    かつてスズキの普通車「カルタス」という車名を思い出しますね、カクタス。

    日本で販売する際には名前が紛らわしいという理由で変更されたりして。

    ルノー・クリオがルーテシアになったみたいに。
    2014年02月08日 18:45
  • 海鮮丼太郎

    カルタスねぇw
    まぁさすがにそれは無いだろうけど、マーケティングの都合でMINIカントリーマン→MINIクロスオーバーみたいな例はあるからねぇ。

    カクタスの場合はそのネーミングが開発コンセプトだから変えたら意味わからなくなっちゃうけど。
    2014年02月10日 14:29

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