12月にマイナーチェンジという当初の予定からずれ込んで、正式発表は年明けの1月6日になるものの、何故か一部のディーラーには実車がすでにデリバリーされている5速ETGを搭載した新型208ですが。
おとといナンバーを取得したばかりというETG5と1.2Lエンジンを採用した「208 Premium」を試乗してきましたよ。
マイナーチェンジの概要については
前回のエントリーをご参照ください。
■何が変わった?「208 Premium」と上級仕様の「208 Cielo」は、以前の1.6L NAエンジンから新型の1.2L 3気筒エンジンへと変更になりアイドリングストップ機構が付きました。
トランスミッションも4速ATのAL4ユニットから自動変速モード付き5速シングルクラッチMTのETG5ユニットへ変更になりました。
これによりカタログ燃費が大幅に向上しました。
あわせてパドルシフトとバックソナーが備わることで、快適装備が充実したというのが大まかな変更点となります。
■5速ETGについて第一印象としては悪くありません。
従来の1007や207に設定のあったRMT(Robotized Manual Transmission)や、シトロエンで採用されていたものに比べれば明らかに制御は滑らかになっており、“自動変速機としての”違和感は少なくなっております。
しかし、従来のAL4を始めとする一般的なトルコン(トルクコンバーター)ATに比べると明らかな違和感を感じるのも事実です。
それは何かというと、ギアチェンジの際にパワーが抜ける感じ。
もっと端的に言うなら
加速中のギアチェンジで失速する感じ
とでも表現するとわかり易いでしょうかね。
ETG5は機構的にはMTである、というのは前回のエントリーでも書いたとおりですが、これが従来のトルコンATともっとも異なる点と言えます。
AL4を始めとしたトルコンATの場合、トルクコンバーターを介して間接的に動力を伝達することができますが、ETG5の場合はMT車のクラッチ制御を機械的にやってもらっているだけなので、運転の感覚はMT車のそれと同等ということができます。
3ペダルのMT車を運転した人ならおわかりでしょうが、ギアチェンジの際にはクラッチを切って動力を切り離した後にギアを繋ぎかえる操作が基本となります。
このクラッチを切る→動力を切り離す→ギアを切り替える→クラッチをつなぐという一連の動作をETG5が代行してくれるだけで、その他はMT車と基本的に変わらないわけです。
ですので、ギアチェンジする際には動力の伝達が一時的に途切れ、失速するような感じになるわけです。
トルコンATの場合はアクセルをベターっと踏みっぱなしにしていても、ギアチェンジの際にトルクコンバーターが介在するために失速するような感じにはなりません。
おそらくAT車しか運転したことのない人は、この部分が一番戸惑うことになると思います。
しかしここでハッキリさせておきたいのは、だからといってETG5がトルコンATに劣っているわけではない、ということです。
「ご飯とパン、どっちが強い?」みたいなナンセンスな話でありまして、それぞれ根本的な発想が違うだけの話なんですね。
■クセを理解した上でETG5を使いこなす上記したようにETG5は機構的にはMTであり、クラッチ制御とギアチェンジを機械的に代行しているトランスミッションであるわけです。
そのため、使いこなすにはETG5の性格を理解した上で、それに合わせるコツのようなものが必要となります。
ETG5と同等のトランスミッションは、Fiat500などに搭載されているデュアロジック、VWのup!に搭載されているASG、スマート fortwoに搭載されているソフタッチなどといろんな車種に採用されています。(便宜的にこれらを2ペダルMTと呼びます)
どれも基本的な構造は変わらず、結果としてどれも同じようなクセを持っています。
そのクセが一番ハッキリ出るのが、上記で例に出した加速中のギアチェンジで失速する感じなわけですが、3ペダルMT車でギアチェンジをする際にクラッチを切るのと同時にアクセルを戻す動作をするのが一般的であるように、2ペダルMTにおいてもギアチェンジの際にアクセルを軽く戻してやるとスムーズにギアが繋がりやすくなります。
208のETG5に関してはギアチェンジで一秒ちょっと、感覚的に「よっこらしょ」ぐらいのタイミングでギアが切り替わるので、その際に軽くアクセルを戻せばポンポンという感じでギアが切り替わっていく感じを味わうことができます。
逆にアクセルをベタで踏みっぱなしだとギアチェンジに余計なラグが発生し、ギューっと加速→失速→またギューっと加速→失速を繰り返しますので精神衛生上もよろしくありません。
あくまでMT車なんだと思って右足をこまめに使うように心掛けるとよろしいかと思います。
もう一つの特徴として、アイドリングストップからの再始動において、アクチュエーターの制御で半クラッチ状態にすることでクリープ動作をするんですが、ここでガバっとアクセルを踏み込むと(ギアを入れ損ねて)エンジンが空転したような状態になってから急にショックを伴って加速するような動作をします。
これはクリープ状態からクラッチを繋げるまでに若干の時間が掛かるため、その前にエンジン回転を上げてしまうとクラッチが繋がった状態で急に動力が伝わるためにショックを伴うことが理由でしょう。
3ペダルMTの初心者がクラッチをいきなりドンと繋いでガクガク言わせながらスタートするのと同じようなものです。
ですのでETG5に関しては、加速時はアクセルをジワーッと踏むようにするとショックも抑えられ、エレガントな加速ができるものと思われます。
逆に、青信号ダッシュを好むような人には不向きなセッティングと言えますので、そういうのが好きな人はきちんと試乗してから判断して下さいね。
■変更されたシフトゲートとパドルシフト従来のAL4やAT6とは異なり、ETG5ではシフトゲートのデザインが変更になっております。
2ペダルMTではお馴染みのレイアウトですが、特徴的なのはトルコンATで言うところの「P(Parking)」がありません。
そのためN(ニュートラル)に入れてエンジンをON/OFFするわけですが、そうするとクルマを動かなくするためのはロックはサイドブレーキだけということになります。
平坦な場所ならいいのですが、懸念されるのは坂道などに停めた場合です。
Parkingモードでロックできないとなると、サイドブレーキの引きが甘ければクルマが勝手に動き出してしまうことが懸念されます。
当方が以前乗っていたスマートでは、そうしたことを防ぐためにエンジンOFFにして必ずR(リバース)に入れないとキーが抜けない仕組みになっていました。
(登り坂に停めた場合は停止状態でRからMに入れると1速でロックが掛かる)
ディーラーの営業マン曰く、208のETG5に関してはそういった注意事項は特に無いということだそうで、何か停車時に制御を入れているのかもしれませんが、この点は要確認事項という気がします。
[補足]ディーラーの営業マンより、「駐車時にはギアをRもしくは1速に入れるようマニュアルにも記載がある」との連絡がありました。やはり他の2ペダルMT同様、駐車する際には注意が必要ですね。
エンジンON/OFFの際はN(ニュートラル)にするわけですが、ここからA(オート)にすることで自動変速モードで走り始めます。
Aモードからシフトレバーを左に倒せばM(手動変速モード)に切り替わります。
押してシフトアップ、引いてシフトダウンというレイアウトは従来と変わりません。
Mモードではディスプレイに現在セレクトしているギアが表示される仕組みになっていますが、おもしろいのはAモードでも手動変速が可能になっている点です。
ステアリングに付いているパドルシフトを操作すれば、Aモードのままでもシフトアップ・ダウンが可能になりますが、そのまま放置していればまた自動変速を始めます。
ただしこの場合、ディスプレイはAutoモードの表示のままなので何速に入れているかはわかりません。
(あまり効き目は良くありませんが)エンジンブレーキを使用する際にパドルシフトを使って減速するといった用途に便利なのではないでしょうか。
■手動モードの自由度は高い自動変速モードに違和感を感じる場合は、手動でシフトチェンジすることをオススメします。
シフトレバーでもパドルシフトでも、お好みに応じてシフトチェンジが楽しめるのは新型208の特権と言えます。
試してみたところ、50km/hで手動で5速まで入れることができました。
トルクコンバーターが無いのでクラッチ制御がギクシャクして当然重い感じになりますが、早めに巡航に入りたい場合などは手動で早めにシフトアップした方がいいでしょう。
また、使うかどうかは別として、エンジンが掛かった状態であれば停止状態でシフトアップして、2速発進するようなやり方もできます。
(アイドリングストップ状態ではシフトアップできない)
これは従来のAL4でも裏技的に使えたテクニックですが、低速トルクを活かして早めに高いギアに入れてシフトショックを減らすといったやり方もできるわけです。
ETG5のことばかり書いてたらこんなになってしまったのでつづく。
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