コンテンツプラットフォームとしてのNOTTV

 
テレビやラジオの衰退が叫ばれる中、それでも広くあまねく情報を伝えられる媒体というのはそれなりに価値を持つわけでありまして、人が多く集まる情報ポータル(旧来の新聞やテレビ局、近代におけるGoogleやYahooなど)には広告媒体としての価値が存在するわけです。

問題はその伝達手段にありまして、

新聞=印刷、配達
テレビ、ラジオ=放送電波による受信
Google、Yahoo=インターネットによる受信

となっており、双方向で情報の可視化ができるようになったインターネットがその媒体力を強めているのはご存知の通りです。

で、話は変わって。

地デジ化が完了してVHF波の再編が行われ、空いた帯域を使って新たな放送ビジネスの立ち上げが行われたことにより生まれたのが我らがNOTTVさんであります。

電波による放送とはいえ従来のアナログ波とは違ってデジタル送信であるため、単に映像番組を放送するだけでなく、データ送信も一緒に行えばユーザの元にコンテンツを供給することが可能となります。

つまり、テレビが放送電波によって全国津々浦々にまで情報を届けられることで媒体力を保っているように、NOTTVも同じく150万契約のユーザに対してこの手段を使うことが可能である、ということなわけです。

そんなわけで幽霊会員の月額費用だけに頼らないで済むように、新たな収入の方法としてこのようなサービスを開始することになりました。
「週刊flier[フライヤー]」の創刊について
株式会社mmbi(本社:東京都港区、代表取締役社長:二木 治成)は、当社が運営するスマートフォン向け放送局「NOTTV(ノッティーヴィー)」において、放送事業者が保有する公共性、信頼性、キャスティング機能、そして番組制作機能を最大限に活かした新しい電子フリーマガジン「週刊flier[フライヤー]」を、2013年10月5日(土)に創刊致します。

これまでの家族共有の自宅ポストに取って代わる新メディアサービス「週刊flier[フライヤー]」は、個人が持つスマートフォン向けに放送します。特徴としては、①新聞や雑誌を構成する記事・写真に加えて、動画の挿入でより豊かな表現が可能、②100%通信がつながっているスマートフォンだからこそ可能となる地図(GPS)、通販カタログとの連携、③ネット環境を気にせずに視聴が可能など、これからの紙媒体のカタチを創造します。

「週刊flier[フライヤー]」は、NOTTV対応端末保有者が対象となる購読料不要の新しい媒体です。放送であることを生かして、より多くの視聴者の獲得を目指す本サービスは、広告収入、タイアップ広告収入、リアル世界と連携した出版・イベント収入などにより、本格的に事業化を目指します。
簡単に言ってしまえばデジタルチラシサービスです。
NOTTV対応端末を持っているユーザに対して、スマフォの機能と連動したセグメント化された広告を届けることが可能になる、という仕組みです。

掲げた理想は立派ですし、ユーザにとっても便利な機能が満載です。
しかし、同種のサービスは他にもたくさんあるわけでして、その大半がデータ配信にネット回線を利用しております。

例えば上記の説明文の中で①と②はむしろネット回線を利用したスマフォでなければできない機能でありまして、NOTTVの出る幕がありません。

そして③についてはNOTTVが受信できてネット環境が使えないシチュエーションというのはほとんどゼロであることを考えると、文言の説得力に大きな「?」が浮かんできます。


こうした流れ、どうもどこかで見たような…

思い出しました。

デジタルラジオです。

2007年頃に、主にauのケータイにデジタルラジオチューナーが内蔵された時期がありました。
とはいえまだ試験放送段階だったのですが、そこではラジオ番組のデジタル放送に加えてデータ配信を組み合わせることで新たなコンテンツ配信と広告モデルの構築を目指した試みでありました。

しかしこの頃からデジタルラジオを取り巻く環境はグダグダで、試験放送に関してもかなり手探り感の漂う内容でありました。

当時仕事の一環としてデジタルラジオ番組をチェックしていたおいらとしても、先行きにかなりの不安を感じておりました。

路地裏のデジタルラジオ(1)
http://kaisendon.seesaa.net/article/57888625.html

路地裏のデジタルラジオ(2)
http://kaisendon.seesaa.net/article/57890458.html


インフラを作ってそこでどうやってビジネスをするか?

ビジョンの明確でないプロジェクトの行く末というのはほとんど同じ結末を辿ります。

デジタルラジオの試験放送はその後しばらくして休止。
官主導の推進プランも宙ぶらりんになって、国民に多大な負担を強いて強制的に地デジ化することで空いた放送帯域が有効に使われないという事態を招きました。

他にもっと強力な代替手段がある場合(NOTTVに対するインターネット)は、よほどの奇策が無い限り媒体としての定着は難しく、価値の無い媒体に広告が入ることは極めて難しいと言わざるを得ません。

恐らくNOTTVの中の人たちもそんなことは百も承知なんだと思いますが、だからといって何の手も打たないわけにはいかない、という事情もあるのでしょう。

トライすることを否定するつもりはまったくありません。
ただし厳しい戦いになる以上、それを覆すだけのビジョンと手段をどれだけ提示できるのか?
個人的に興味があるのはその部分ですね。

インターネット人口 9610万 vs NOTTV契約者 150万

果たして、どうなりますやら。
これは電子書籍という旧来メディアと新メディアの両方に足を突っ込んでいるおいらにとって、非常に注目するロールモデルであります。
健闘を祈ります。いや、ホントに。
 
 

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