Suicaの個人利用データ提供を止めよう

  
ビッグデータ界隈が賑やかでありますが、消費者側として注意しなければならないのは、個人の行動・購買履歴といったクリティカルな情報が、本人の同意を得ずに勝手に収集され、第三者に利用されることでしょう。

スマフォアプリのLINEのように、自分の電話帳のデータを提供することで広くいろんな人と繋がれることにメリットを感じる人は、そのリスクを考えた上で利用すればいい話です。
(他人の電話番号を勝手に第三者に漏らすことの倫理観はどうなってるの?とは思いますが)

CCCのようにえげつなく個人情報を広域にビジネスしようとする会社と理解したうえで、購買履歴を提供する見返りとしてTポイントを得ることに価値を見出すのも個人の自由です。

しかし、今回の件は利用者側に何の説明もメリットも無いのに、非常にクリティカルなデータが勝手に日立に提供されていたから騒ぎが大きくなっているとも言えるでしょう。

Suicaに関するデータの社外への提供についてよくいただくお問い合わせ (PDF)


ご存知の通りSuicaに関しては、

 ・発行時に手数料500円のデポジットが必要
 ・プリチャージに対する特典が基本的に無い
 ・使用履歴が50件しか保存されず明細確認に問題がある
 ・チャージ上限が2万円でショッピング用途では不足

などなど様々な問題を抱えたプリペイドカードと言えます。

しかし、交通決済以外にも使用できる店が増えてきており、ショッピングに便利に使えるカードであることに異論はありません。
しかし、それは逆に言うとこれらの購買履歴は

 「いつ、どこに移動し」
 「どこで何を買ったか」

という2つの軸の情報が記録されることになります。
ビッグデータ的な観点からすると、特に移動履歴と紐付いた購買情報というのは魅力的な価値を持っているわけですね。

そんなわけでJR東日本がこの情報で商売しようとしたわけですが、ただでさえ個人情報の扱いがセンシティブになっている中で、こうした情報を何の断りも無く提供されているなんて話が出れば、そりゃちょっと待てよという話になるわけです。


で、大騒ぎになったわけですが、それに対して上記のよくあるお問い合わせで弁明されておりますが・・・


結論から先に書けば、データの提供をやめさせることは可能です。

【Q】私のSuicaに関するデータの社外への提供をやめてもらいたいのですが
 【A】
ご要望のお客さまには、お持ちのSuicaに関するデータを社外への提供分から除外いたします。
 2013年7月26日からご要望の受付を開始することとし、原則としてご連絡をいただいた日の翌月以降のデータの提供から除外いたします。
 なお、2013年9月25日までにご要望があった場合は、既に提供された過去のデータにつきましても除外したものに差し替えます。
 ご要望のお客さまにおかれましては、ご本人がお持ちの SuicaID 番号(Suica 裏面のJE から始まる番号)を本文に記した電子メールを、下記の電子メールアドレス宛にご送信いただくか、下記の電話番号にご連絡いただき、同じく SuicaID 番号をお伝えください。

 電子メールアドレス: jogaiyobo@jreast.co.jp(随時受付)
 ※ 頂いたメールは自動で処理をいたします。SuicaID 番号以外のお問合せ等をいただきましてもご回答を差し上げることはいたしかねますので、予めご了承ください。

 電話:03-5334-1655
(土日祝日・年末年始を除く平日 10:00~17:00)


ただし、ちょっと気になった点があります。
ちょうど元切込隊長メルマガでも言及されていました。
 パッと読んだだけでは分かりにくいところではありますが、要するにSuicaでの履歴提供が嫌だってお客様は申し出てね、申し出る前の分も削除するし、って話です。

 でも、これってですね、何ですでに提供されたデータをJR東が「あ。これは削除して欲しいという要望を出してきたお客様だ」って特定できるんすか、って話で。これって、読みようによってはJR東は日立に流した不可逆のはずのデータを照合可能な何らかの手法を保持してるぞって話になってしまいますね。これは大変なことですね。対応表をJR東は保持しているからそういうことができるわけで、もしそういう意図ではないとするならば早めに撤回しないといけない性質のものですね。しかも、「k-Anonymity(k-匿名性)」という統計情報のガイドラインに則ったものかもイマイチ良く分からん(日立に質問して回答待ち)ので、下手をすると提供されたデータそのものが可逆で特定可能なんじゃないのかしらと思ってしまうわけです。

この矛盾点がどうしても引っかかるわけです。

結局のところ、JR東日本と日立という組み合わせから性善説に伴うデータの運用が成されるものと思いたいところですが、Suica利用者にとってはなんらメリットの無い話ですので、速攻でデータ提供除外の申請(オプトアウト)をされることを強くオススメする次第であります。

これがたとえば、きちんと事前に情報が提供され、データ提供の見返りにSuicaチャージにつき1割分のポイント付与しますとかアナウンスされていたら、ここまで話は大きくならなかったんでしょうが。


ビッグデータがもたらす社会構造の質的な改善については大きな可能性が秘められており、積極的な施策も必要だということは理解しているわけですが、その前提となる個人情報の取り扱いについてこうも杜撰な事態が続くようでは、消費者としては防衛策を講じざるを得ません。


なんですか、このやったもん勝ちみたいな最低な状況は。
 

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック