スマフォ時代だからこそ、すべてのハンドルを握る者へ

 
すべてのハンドルを握る者へ

このエントリーを書いてから4年が経ったが、改めて書かなければいけないか。

運転中メール見ていた…高2女子はねられ重体

こうした事件の背景にあるのは、クルマを運転することに対する認識の甘さがある。
事故が起これば自分が痛い目に遭うだけではなく、他人を巻き込んでしまうという凶器であるということをどれだけのドライバーが理解しているだろうか?

交通事故の全体の件数は減少していると言われるが、死因として乗車中の死亡より歩行中の死亡が上回っているという事実は、クルマの安全性は向上したものの、ドライバーの加害が増えているということでもある。



イギリスの交通安全啓発のこのCMは2009年のもの。
運転していた女の子はエアバッグで一命は取り留めているものの、シートベルトをしていないうしろの女の子は何ヶ所も激しく頭を打ち付け、助手席の女の子は多重衝突で横からの衝撃によって首のダメージが致命傷になる(音に注目)という事実をもとに制作されている。
これは、誇張ではないのだ。


2009年当時はまだ物理的にプッシュする10キーのあるケータイ(フィーチャーフォン)が主流だった。
物理キーがあることである程度のブラインドタッチが可能だったため、運転中のケータイ操作でもあまり画面を覗き込むようなことは少なかった。
(それでも事故は起こっていたし、非常に危険な行為であることに変わりはない)

しかし、2013年の今はスマフォの時代だ。
物理キーはほぼ消滅し、全面タッチパネルが主流になっている。
また、ケータイに比べて表現能力が向上したことで、画面上のあらゆる部分の操作が可能になった。
そのため、ブラインドタッチでの入力は困難なため画面を注視せねばならず、そして周りへの注意が散漫になる。
最近問題になっている、駅のホームでスマフォいじってる奴の歩くスピードが遅いのはそれが理由だ。


スマフォがケータイに比べて画面を注視する時間が長くなれば、運転中に画面を見て操作することによる事故のリスクは大幅に上昇する。
個人的には運転中のスマフォ操作による事故の罰則は、飲酒運転並みに厳しくすべきだと考えている。
リスクが上昇している以上、それを厳しく戒めるためにも現行法の罰則は強化すべきだ。

運転中のナビの操作などについても罰則があるわけだが、最近はナビだけでなくオーディオやエアコンのコントロールにタッチUIを採用する事例が増えつつある。
これは昨日のエントリーで触れた。


しかし一番の問題は、ドライバーが運転中にスマフォやナビなどを気軽に操作してしまうという意識の低さにある。
事故はあくまで他人事で、それによってどんな悲劇が起こるかをイメージできないことに起因する。

これは、自転車の運転マナーの悪さ(歩道の通行は減ったが、スマフォを操作しながらの蛇行や道路の逆走)などにも当てはまる。

この意識を高めるためには、全国レベルでの啓発活動が必要だ。
上記に紹介した動画は、イギリスの交通安全啓発のために制作され、テレビで放映されている。
グロいだの残酷だのといった感想を持つとしたら、それは現実から目を背けているだけだ。

ストレートに訴えると、かならずそれは反響となって響く。
変にオブラートに包んだメッセージは、この手のキャンペーンでの効果はたかが知れている。


企業のCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)が叫ばれるようになって久しいが、利用のマナーをきちんと訴えたCMを放送しているのは、ここ最近ではおいらの知る限りではdocomoぐらいしか見たことが無い。

以前、アドミュージアムにある広告図書館でトヨタのアーカイブを見ていたら、70年代には運転マナーを訴えるCMをトヨタ自身が制作し、放映していた。
80年代はAC(公共広告機構)がそうした役割を担っていた。
しかし21世紀になって、その手のCMは激減してないだろうか?

今必要とされるのは、マナーを訴えることではなく、その行為がどういった事態を引き起こすかをきちんと知らしめることだ。

 ・自動車メーカー
 ・自転車メーカー
 ・通信キャリア
 ・保険会社

これら全ての企業がCSRとして共同で、啓発のためのCMを作ることを提言したい。
交通事故はどんな悲劇を引き起こすのか。
逆走やスマフォをいじりながら自転車を運転することがどれほど危険か。
運転中、歩行中のスマフォ操作がどれほど危険か。
事故を起こして、その責任をどう償うことになるのか?

これらは自動車業界だけ、通信キャリアだけで収まる話ではない。
それらが組み合わさった時のリスクを、実態に即した内容で訴えるべきだ。

各局とも放送は1度でいい。
事前に大々的にそうしたCMを流すことを宣伝し、放送前に衝撃的な映像が含まれている旨告知してから放送する。
ぬるいメッセージを何回も流すより、1回のメッセージにすべてを込める。
アーカイブはyoutubeにアップして、世界中から閲覧可能にしておけばいい。


成熟した社会を標榜するなら、それぐらいのことをやってみたらどうだろうか。
CSR=企業の社会的責任というのは、本来そういうものじゃないか?
 


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