どこでお披露目するのが効果的か?という話

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ルノー・ジャポン、新デザインの新型「ルノー ルーテシア」を7月末に発表


ルノーの新世代デザインの第一弾となるBセグメントハッチバックである新型クリオ(日本名:ルーテシア)の特設ページがオープンしたのは6月25日のことだった。

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7月末の正式発表に向けてさまざまなティザーを展開しているわけだが、誰にどうやってアピールするかという戦略は非常に重要となる。

ティザー活動は、アプローチしたい層に的確に情報を届け、興味を持ってもらうことで見込み客として早めに囲い込みを行うことが主目的となる。

正式発表をプレスリリースすることでマスメディア経由の情報開示は通常通りに行われるが、それとは別に一般の、それもどちらかと言えば熱狂的な人々にどのような形で披露するか、という仕掛け方も重要になりつつある。

たとえば東京モーターショーには出展しなかったのに、東京オートサロンで初お披露目をしたメーカーがあった。
これは、そのクルマの客層が東京モーターショーよりオートサロンの方が向いていたからという理由に他ならない。

こうした動きは日本だけにとどまらない。

直近の例で言えば、週末に開催されたイギリスの熱狂的なモータースポーツイベントである「Goodwood Festival of Speed」において、プジョーが2014年初頭に発売予定のRCZのチューンバージョンであるRCZ Rを一般向けに初公開した。
(ついでにコンセプトカーだったONYXも走らせた)

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トヨタもGT-86のチューンバージョンを持ち込んだり、その他さまざまなメーカーが初お披露目のクルマを持ち込むなど、クルマのイベントがプロモーションの場としても利用されるようになってきている。

要は、一番効率のいいマッチングの機会は積極的に利用するべきということだ。

で、話をルーテシアに戻す。

正式発表までの1ヶ月の間にティザーサイトで情報発信。
ここまではよくある話だが、ルノーはリアルなイベントでも仕掛けてきた。

クルマ雑誌のTipoが主催する「Tipo OVERHEAT MEETING 2013と併催する形でルノー主催の「第5回 ルノーパッションデイズ2013を開催した。

Tipo OVERHEAT MEETINGは場所が岡山国際サーキットということでアクセスはしにくいものの、多くのクルマファンが訪れるイベントになっている。
ルノーはそれに便乗することでルノーファン以外の人々にもルノー車を見てもらうことができる。
Tipo側はインポーターとの共催でイベントに箔が付くだけでなく、記事のネタや集客アップが見込めるために両社にとって都合の良いコラボレーションということになる。

ちなみにTipoは、先日フィアットの新型パンダの全国キャラバンを共同で行ったりと、インポーターを絡めた動きがうまい。

ルノーはこの場所で新型ルーテシアを一般向けにお披露目した。

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上記のグッドウッドほどではないが、熱狂的なクルマ好きが集まるイベントにおいて新型車をお披露目するというやりかたは、まったく同じということだ。
(プジョーも208を昨年のCGフェスタで初披露している)


新型ルーテシアは、BセグメントハッチバックとしてVWのポロやフィアット500、BMW MINI、プジョー208やシトロエンC3/DS3と競合するクルマだ。

国産車にも競合が多数いるため、狙いとしては対国産車の路線は完全に切り捨てて、輸入車を嗜好する層を対象に走る楽しさを前面に押し出してくるものと思われる。

逆に言うと、そこしかポジションが空いていないからだ。

新型ルーテシアは新たなデザインフィロソフィーに基づく大幅な質感の向上と、VWのポロに大きく遅れを取っていたパワートレインにおいて、エンジンのダウンサイジングとデュアルクラッチトランスミッション(EDC)を搭載したことにより、少なくともカタログスペック上でじゅうぶん戦えるだけの戦力を身につけた。
(従来モデルは4速ATであり、プジョー208/シトロエンC3と同じく大苦戦していた)

その意味で、ルノー車以外のオーナーも集うTipoのイベントは、広い層にアピールするには絶好の機会だったと言うことができる。
(もちろんルノーのイベントも併催しているのでルノーオーナーにもアピールできたわけだが)

こういった機会の有効活用が、地道な販売台数の積み上げに効いてくる。
事実、ルノーはリーマンショック後から右肩上がりに回復しており、今年も6月末現在で前年対比105.3%と好調に推移している。


 「プレス向けに発表しました。」
 「テレビやネットに広告を打ちました。」
 「クルマ媒体に試乗車を貸し出してレビューを書いてもらいました。」


従来のこんなやり方だけでは、消費者の心に届かない。
届かせるには何が必要か?
少なくとも、ルノーのプロモーションにその答えの一つが存在する。

余談だが、秋に車山高原で開催されるフレンチブルーミーティングをプロモーションの場として活用すべきと当BLOGで書いたが、ここ数年でそれを実践したのはルノーだけだった。

フランス勢は欧州で不調が伝えられるものの、こと日本市場に関して言えば燃費一辺倒の国産車に比べて走りの楽しさを訴求する輸入車勢(しかも燃費はそこそこ許容範囲内)という、非常におもしろい構図ができつつある。

今年後半は、あのウザいゴルフVIIのプロモーションではなく、新型ルーテシアの動向に注目してみると面白いだろう。
 
 

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