メーカーがモノを作り、販売店が売る。
どんな商品も基本的にはこうした役割分担で商売が成り立っている。
商品に魅力があっても、販売店の売り方が悪ければ売れないし、販売店に力があっても商品力がなければこれまた売れない。
まぁ、例外がないわけでもないが。
そんなわけで、メーカーと販売店はお互いに緊張感を保ちつつ良好な信頼関係を構築しておかなければいけない。
これは商売の基本だ。
ただ、最近この良好な信頼関係が崩れるような話題を目にするようになった。
まずはこんなニュースから。
ホンダ、来年度からディーラー向け新車マージン率を6カ月ごとに見直し
2006年度から成果主義の「台数変動マージン率」制度を改定・導入し、当初は1年間の販売実績に基づきマージン率に3%程度の差をつけているが、2007年度からはマージン率を半年ごとに見直しへ。
また、2008年度からはメーカー純正オプションのマージン率を一律で上げるほか、メーカーから卸す後付け品のマージン率も販売実績に連動させる。
自動車販売は家電を売るのとは違うんだ、なんてことを言われてたのはもう昔の話なのか。
最近自動車が売れなくなってきている状況から、メーカーがあの手この手で販売現場の締め付けを強化してきている。
日本の登録車市場が年間200万台という上限値に達してしまい、あとは限られたパイの奪い合いに突入してしまった今、昔のように悠長に販売しているだけではいけないという危機感の表れだろうが、これではますます一般人のクルマ離れを加速するようなもんじゃないかと思う。
要は、いっぱい売る店は必要で、売らない店はいらないよって宣言しているのと同じことであり、ディーラーが家電量販店化するわけだ。
掃除機を売るようにクルマを売る、と。
ホンダのクルマはそもそも指名買いが多かった。
それはホンダならではという魅力ある車種が多かった過去の歴史があり、ディーラーも(良い悪いは別として)訪問客を選別するような強気のセールスでそのブランド力を維持してきた側面もあった。
ベルノ店、クリオ店、プリモ店と3系列にディーラーを分けて、それぞれ特徴を持たせたラインナップでカラーを出しつつ消費者の興味を煽る車種をどんどん出してきたからこそ、ホンダのブランド力は維持されてきたわけだ。
しかし昨年、この販売系列を1つに集約、すべての車種をすべてのホンダディーラーが扱うようになった。
これでは小規模ながらも軽自動車を地道に販売してきたディーラーはたまったもんじゃない。
そして上記のように、販売数に応じたマージン率の設定が行われるとなると、ホンダディーラー間での競合が激しくなり、必然的に販売力の弱い小規模ディーラーは店をたたむ事になるだろう。
これはもう、大手家電量販店に駆逐される地場電気店の構図と同じだ。
クルマの商品力があるのならそうした施策も考えられなくはないよ。
でも、今のホンダ車に商品力があるかというと、かなり疑問だ。
他社の状況はどうか?
「数を売ったディーラーこそ正義」という発想の元に、メーカー主導で改革を進めるケースが多い。
一番の失敗例は日産だろう。ゴーン社長のコミットメント達成のためにムリをした余波がここ最近の絶不調を招いた。しかも困ったことに、販売現場の士気低下は今後しばらく続きそうだ。相当根が深い。
マツダは商品力の弱さから値引きに走りがちだった販売現場のレベル底上げに着手している。これは商品力を回復した今の状況からすれば健全な取り組みだ。
スバルはトヨタ資本が入ったおかげで、今までスバリストしか見てこなかった販売現場に、トヨタ的商売の発想を取り入れようとしている。これは多少バランスが良くなる程度だろう。
三菱は信頼を失って既に多くのディーラーが廃業や撤退した後なので、再スタートによってやっとディーラーにやる気が出てきたところだ。現場をいじるより、少しでも魅力的な商品を出すことに腐心している。
軽自動車各社は販売方法が特殊なので、現場の意識改革というのはあまり表立って話題になるようなことはなさそうだ。
いずれもバカみたいに思いつきでクルマをどんどん出してくるトヨタに対抗しなければならないという事情があってのことだろうが、クルマがステイタスシンボルから日常の道具へと成り下がってしまった昨今、その状況を受け入れてのクルマ=家電化という流れだろうが、そこに将来に対するビジョンはない。
今取り組むべきは、家電のように数を売ることではなくて、クルマをステイタスシンボル(=所有する喜びの具現化)として再び消費者に意識させるような活動を、地道にやっていくことこそ重要なんじゃねーのかと。
市場の上限が見えたからこそ、皆が同じ方向に突っ走るんじゃなくて、独自のポジションを獲得する方が、ブランドイメージの確立にも、企業の生き残りにも有効だと思うがね。
それを実践していたのは昔のホンダであったのだが、今はマツダだ。
だからこそマツダファンというのがジワジワと増えてきており、クルマのコミュニティを見ても口コミでマツダの評価はどんどん上がっている。
さて、商売を優先するあまり消費者にそっぽを向かれることのないように。
魅力ある商品が少なく、魅力ある販売店も少なくなると、自然と顧客は離れていく、なんてことは商売の基本であるわけだから。
この記事へのコメント
おづら
海鮮丼太郎
アメリカでのソニーブランドを維持しているのは、こうしたソニーショップの存在が大きいと言われてるけど、それに引き換え日本のソニーショップへの不遇は涙を誘う。