前回の続き。
SMARTという車種がある。
二人乗りのマイクロカーとでも言えるコンパクトさの割に頑丈なボディで安全性を確保している変わったクルマだ。
正規ディーラーであるヤナセのメルセデス店を訪れると、展示車も試乗車もなく、こともあろうか国内にほとんど在庫車がないとの話に愕然として、ヤナセを後にしたのだった。
まぁ、こんなこともあろうかと、事前にディーラー網については調べておいた。
ヤナセ系が正式ディーラーだとすると、それ以前から並行輸入でずっと販売を続けてきたスマート横浜というお店が近所にある。
そこだっら確実に実車があるので、ちょっと行ってみた。
軽自動車のショウルーム程度の広さに、10台近いスマート各車が展示されている。
ここの店長と妙に話が合い、いろいろ聞かせてもらったところによると、スマートについては国内発売から10年近く、様々な紆余曲折があったそうな。
なんでも、日本で初めてスマートを販売したのは、このお店なんだって。
その頃はまだ日本での販売について誰も認可申請をいていなかったので、わざわざ本国から2台を衝突試験用に取り寄せて、メーカーではなく地方の1ディーラーが衝突試験場で前面(当時はオフセットではなく正面)および追突実験を行ったとのことだそうだ。
その時の写真を見せてもらったが、意外なほどフレームの歪みは少なく、ドアも問題なく開いていた。
パッと見のイメージとは裏腹に、頑丈な骨格で固められているのだというのが見て取れた。
ただ、オフセット衝突をした場合、跳ね飛ばされてコロコロ転がるように作られている、というのはちとワロタ。
その理由として、ショックを受け止めるより転がってしまった方が衝撃を逃がしやすく、シートベルトをしていれば死ぬことはまずない、という設計思想なのだそうだ。
この辺がアウトバーンすら走ることを想定した造りにの基本ということなんだろう。
で、その実験の模様が珍しかったため、ニュースステーションの取材が入ってたそうな。
そういえば、スマートが日本に上陸!みたいなニュースを当時観たような気がするな。
そんなわけで日本で販売を始めたところ、当時の価格で130万円程度ということもあり爆発的なオーダーだったそうだ。
中でも、各自動車メーカーから研究用に数台のオーダーが入ったり、ペイント技術がかなり高度なものだったらしく、塗料系のメーカーより「動かなくてもいいから実車を回してほしい」なんて注文もあったらしい。
その後、日本でも正式に販売が開始され、クライスラー系とダイムラー系2社(ヤナセ&シュテルン)による3社体制で販売されたんだそうな。
当初は販売ノウハウも、保守部品の在庫をほとんど持っておらず、正規ディーラーがスマート横浜にパーツの発注をガンガン掛けてきたそうな。
一時期保守パーツ用の倉庫を港に借りていたというのだから、相当の在庫を持っていたんだろう。
(発売当時のスマートは、パネルやボディの一部を好きな色に変更することができたりするので、それに対応するだけのパーツを保有しなければならなかったらしい)
スマートはそのコンパクトさと600ccというエンジンということもあり、軽自動車の規格にほぼ合致する仕様だったが、唯一フェンダーの出っ張りによる全幅だけが数cmオーバーしているため、あれだけコンパクトなのに普通車登録をしなければならなかった。
後に正規ラインナップとして軽自動車枠に収めたスマートKというグレードが登場し、スマートは爆発的なセールスを記録、一時期カラフルなスマートが街中に溢れたことがあった。
ただ、ユーロ高やマイナーチェンジで軽規格のスマートKもなくなってしまい、スマートの販売は一気に下降線を辿ったそうな。
最近は販売低迷を受けて、クライスラーもシュテルン店もスマートの取り扱いから撤退してしまい、現在はヤナセ系の店で細々と展開するだけになってしまった。
(正規スマート専門店として細々と展開していたスマート港南も6月には閉店してしまう)
こうした経緯を経ているため、スマートに限って言えば、整備ノウハウを持っている店で買わないと怖いな、という気がした。
世の中のスマートの半分近くが並行輸入であり、軽自動車規格で登録されていたり、頑丈ゆえに修復痕が見抜けなかったりと、その辺の中古車屋で格安のスマートがあったら、それは絶対ワケあり車だということらしい。
そんなわけで、スマートを買うんだったら専門店であるスマート横浜かな、と思ったのであった。
お買い得の車種を前にウンウン唸って、結局保留にしてしまったが、今日見たら売約済みになっていた。
ううう、残念だ…
また日を改めて店に遊びに行ってみよう。
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デンジン
BlogPetのぐるーむれいく2世