まるでRPGな一日

平成17年1月某日。
私の城であるところの城主の下に国王よりひとつの書簡が届いた。

「汝に申し渡す。

  ・勇者認定書
  ・城砦証明書
  ・借金明細書
  ・レシート


この4つのアイテムを揃えた時、汝に今後10年にわたり納めた税金の一部を褒美としてくれてやろう。
別にめんどうだったら集めなくてもいいけど。」
 
 
< PUSH START BUTTON >


 
 
    城主は冒険家にジョブチェンジした。

冒険家は家の中をすみずみまで探した。
冒険家はたんすをあけた。
中に「レシート」を見つけた。「レシート」をひろった。

冒険家は秘密の収納場所を見つけた。
「城砦証明書(偽物)」をみつけた。偽物と気づかずに城砦証明書をひろった。

書類の山が現れた。
書類の山の攻撃「意味不明のチラシばっかり」
冒険家は8のダメージを受けた。冒険家は寝てしまった。

「おはようございます。ゆっくり眠れましたか?」

冒険家は慌てて時計を見る。予定から2時間が過ぎていた。
冒険者は3のダメージを受けた。

冒険者は起き上がり持ち物を見た。
「レシート」「城砦証明書(偽物)」残るアイテムはあと2つ。

書類の山が再びあらわれた。
冒険家の攻撃「有効期限切れのピザ屋のチラシはシュレッダー!」
書類の山は7のダメージを受けた。書類の山が1つのファイルに整理された。

冒険家は瞑想モードに入った「他に書類ってどこ置いたっけ?」
気が付くと冒険家はNINTENDO DSを持っていた。
冒険家は2のダメージを受けた。

冒険家は郵便物置き場を見た。
未開封の郵便3通が甘いにおいを放っていた。

甘いにおいを放つ郵便物から「借金明細書」を見つけた。
冒険家は明細書を見て卒倒した。2のダメージを受けた。
冒険家は寝てしまった。

「おぉ、ねてしまうとはなにごとだ」

鳴り響くアラームで冒険家は再び立ち上がった。

冒険家は「レシート」「城砦証明書(偽物)」「借金証明書」を持って、北の大城塞へと向かった。
大城塞入口の門番が言った。「駐車場いっぱいだから30分ぐらいかかるよ」
冒険家は私の城に引き返し、馬車から人力車に乗り換えて再び大城塞へ向かった。

門番のチェックをくぐり抜け、受付に向かう。
「勇者認定書ってどこでもら…」「2F。」
もっと丁寧な言い方は出来ないのかと冒険家は怒りをこらえつつ2Fに続く階段を登った。

勇者認定書発行手続申請書を提出すると、2Fの門番が「何のために必要なんですか?」との謎かけ。
冒険家は回答に困った。

送られてきた書簡を見せると、2Fの門番は黙って手続きを行った。「300円になります」
冒険家は300円で勇者にジョブチェンジした。

大城塞の4Fに行くと、機械的な対応をする門番が「アイテムは全部持ってきたか?」と問いかける。「Yes」と答えると、個別の面接が始まった。

「すべてのアイテムをここに出しなさい。去年の借金がこの金額で、買い物したレシートがこれですね。城砦証明書を出してください。」
「よくわかんねえんすけど、これ【城砦証明書(偽物)】っすか?」
「これは違います」
…勇者は途方に暮れた。

勇者は町の人に聞き込みを行った。
「証明書?西の都、新ユーリガオカに行けば?」
「城砦証明書は新ユーリガオカの南西の砦出張所にある」
「あそこは遠いから、人力車ではムリだよ」
「迷うといけないから地図を描いてあげよう」
「大城塞は4時までしかやってないから、行くなら早くいった方がいいよ」

勇者は泣きながら自分の城に帰り、人力車から馬車に乗り換えた。

勇者は「西の砦主張所に行かなきゃならないので、今日休ませてください」と勤め先に伝書鳩を飛ばした。

馬車を飛ばすこと数マイル。
勇者は西の都、新ユーリガオカ駅から5分ほどの西の砦出張所に着いた。

西の砦出張所は大混雑しており、左右を見回しおろおろしていると、江川達也似の門番が近づいてきた。
「何の用?」
「城砦証明書発行手続申請書はどれ?」
「これに書いてくれればいいよ」
先ほどの大城塞1Fの受付とはえらい違いだと感心しつつ、待たされること20分。
江川達也によく似た門番に1000円を支払い、城砦証明書(本物)を手に入れた。

勇者は新ユーリガオカのオシャレなお店に立ち寄りたい衝動を抑えて、一路大城塞に向けてひた走った。
勇者は途中で特価品のシャツを3枚手に入れた。
勇者のメンタリティが2上昇した。

勇者はお気に入りのラーメン屋に立ち寄り650円で味噌ラーメンを注文した。
勇者の頭の中に「食事制限」のコトバが浮かんだ。
勇者は思い出さなかったことにした。
勇者の健康は2のダメージを受けた。

大城塞に戻り、再度4Fで面接タイム。
「アイテムは全部揃いましたか?じゃあ、ここにこの数字を入れて」
言われるままに契約書に数字を当てはめていく。

「他に申告漏れの項目はありませんか?」
「去年の医療費が10万越えてんすけど…」
「じゃあレシート出して」
「全部で11万ぐらいっす」
レシートを袋に詰め込んで、契約書に数字を加える。

門番が魔法の機械に4つのアイテムを入れて呪文を唱えた。
4つのアイテムから、「10年間納めた税金の一部を返してくれ申請書」が生まれた。
勇者は「10年間納めた税金の一部を返してくれ申請書」をひろった。

勇者は「10年間納めた税金の一部を返してくれ申請書」を、国王の代理の代理に手渡した。
国王の代理の代理は唱えた。
「汝が汝である証である汝の名を刻んだ印を入れよ」
勇者は泣きながら再び自分の城に戻った。

勇者は内緒の宝箱から「印鑑」を取り出して装備した。
残すところあと30分。勇者は馬車を飛ばして三たび大城塞を目指した。

4Fに駆けあがると急いで書類に捺印した。
「別にあとで郵送で送ってくれてもいいんだけどね」
「…先に言え」
勇者は殺意を覚えた。

「10年間納めた税金の一部を返してやる申請書」を提出し、勇者は極度の疲労感と脱力感を伴い、私の城へ戻った。


ちらかった私の城を見て、勇者は9のダメージを受けた。

「いつまでたっても人を招待できないなこりゃ…」

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック