PSAの国内リストラ策が進展、されど…

仏自動車大手PSA、リストラ策にメド 主要労組が合意
経営不振に陥っているフランスの自動車大手、プジョーシトロエングループ(PSA)の約8000人の人員削減を含む経営合理化策について、同社の主要労組は18日、受け入れる意向を示した。昨年7月の発表以来、仏政府の介入で混乱が続いていたが、収束にメドがついた。

 PSAは昨年7月、仏国内で工場閉鎖とともに、従業員8000人を2014年までに削減する計画を公表していた。雇用維持を最優先課題に掲げるオランド政権の介入を受け、労使の合意形成が遅れていた。PSA側は転職のための職業訓練の強化や、退職補償金の増額、閉鎖する工場近くの企業への転職あっせんなどで理解を取り付けたようだ。
 一方、同業のルノーは13日、国内従業員の約15%に当たる7500人を16年までに削減する経営合理化策で労組側と合意している。

EPAの交渉において欧州での関税軽減を目論む日本勢なんて話が聞こえてきますが、フレンチ3に関しては防戦一方というか、とにかく財務状況を改善させなきゃいけません、ってことで母国フランスでの工場閉鎖をなんとか実現して、生産を低コストの海外に移転させるリストラ案を打ち出してきたわけです。

ですが、折しも政権が変わったことでオランドさんがハッスルしちゃって、大量失業者を生む工場閉鎖は受け入れられないなんてことを言いだしちゃったからさあ大変。

もちろん、一方的なリストラや海外移転に関しては政府が干渉して待ったをかける姿勢はわからないでもありません。

しかし、PSAの場合は問題点が明確なのと、その対処がコスト削減しか方法が残されていないという状況が問題を難しくしています。

一方ルノーは同様のリストラ打ち出していましたが、同じくオランド政権から待ったがかかり、代わりに日産車を約8万台フランス国内で生産することで折り合いをつけ、リストラ案が承認されていたりします。

この辺、不良息子の日産が立派に更生して親に恩返し…と書くと美談のようですが、家業が傾いたから手伝えと言われて泣く泣くIターンする長男みたいなものでして。
間接的に日本国内の日産車生産に関わる雇用が奪われたということもできますのであまり誉められたものではありません。

さて、日産のような孝行息子のいないPSAグループはというと、再就職支援などの施策で労組との支持を取り付けたようでありまして、とにかくこれで少し出血を抑えることができるようになりました。

GMとの提携事業もこのリストラを前提として組まれている以上、結論を無駄に引き延ばされただけのような気がしないでもありません。

このようにコスト削減を進めるには人件費を削減せざるを得ないということがまたひとつ立証されたわけですが、これをよその国の出来事と傍観しているわけにもいきませんね。
日本にも同じような例があったりしましたので。

そうです、何度も例に出してきたルネサス・テクノロジーの救済スキームとか、最近話題になっているところではシャープの件などに当てはめてみると同じ構図であることがわかるわけです。

シャープが液晶パネル生産を中国に移管しようと計画したところ、経済産業省が猛烈に反対してあの手この手を使って亀山に第2工場を作らせたことで良かったね…とはなりませんでした。

その結果がどうなったかといえば、現在のシャープの惨状があるわけで、問題が生産コストにある以上、政府の過剰な干渉で国内に雇用を残そうとしてもは結局のところ意味を成さないということは万国共通だったりするわけです。

それでも国の支援によって企業を救済するのか?

幸いにして日本のモノづくりは効率化と高度化していくことでまだ産業として国内に留まる余地がありますが、自動車メーカーはすでに部品組み立て工場としての機能しかなく、周辺の雇用を生み出すはずの部材については海外からの調達にシフトする動きを見せております。

トヨタの復調がやたらとクローズアップされていますが、サプライヤーに対する過度なコスト削減圧力、そして調達コミットメントの一方的な破棄など下請けいじめによって利益を回復しているだけと報じられたりもしております。

自動車業界はメーカーを頂点としてサプライヤーや部品の製造に携わる多くの人々がいるため「裾野の広い産業」などと呼ばれていますが、メーカーだけが業績を回復しても、その下が疲弊しては意味がありません。

こんな状況でもメーカーが厳しくなれば、躊躇なく海外へシフトしてしまうでしょう。

そんなとき、我々はどうするべきなのでしょうかね?
いろんな生き方の可能性を想定しておく必要があるのかもしれません。
そんなことを思った今回のPSAのニュースなのでした。
 
 

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