続報に関して新たにエントリーを書きました。
TBSラジオがポッドキャストを終了
では、本題。
なんて話がインターネット理想論者の口から語られたのはもうずいぶん昔のような気がする。
「一度インターネットに公開された情報は、2度と消すことはできない」
なんて話は、漏洩に伴う炎上案件やなどが起こると繰り返される戒めのコトバとして今でも機能している。
しかし、過去から未来にわたってインターネットの情報すべてを検索できるわけでもなく、またGoogleがキャッシュしているわけでもない。
公開している元のサーバがサービスを止めれば、そこに存在していた情報はインターネット上から消失する。
黎明期の個人によるホームページブームで有象無象のネタページが存在したが、その多くが今ではもう閲覧することができない状態になっている。
90年代後半から00年代前半にかけての個人ホームページブームは、デザインは稚拙ながらも趣味をとことん突き詰めて膨大なノウハウが蓄積されたものも少なくなかったが、プロバイダのサービス終了や解約によって、これら膨大なノウハウが永遠に失われてしまったことを惜しむ声は今も多い。
「ネットに存在する情報は有限である」
という意識のもと、我々は必要だと思う情報は自分で保存するかキャッシュを残すようにして、バックアップのことを常に考えておかなければならない。
これが現実だったりするわけだ。
お気に入りのエロ動画をローカルに保存したり、2ちゃんのスレッドをログ化して手元に置いておきたい心理というのは、こうした不慮の事態を想定してのことだと言える。
さて、話は変わるが。
TBSラジオが配信しているPodcastがある。
聴取率で健闘を見せる安住紳一郎の日曜天国、JUNK、タマフル(ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル)、文化系トークラジオLifeなどのPodcastは、iTunesのPodcastランキングでも常に上位を占める人気コンテンツだったりする。
いくつかの例外(時事性の高いものや吉本芸人など)はあるものの、基本的に過去に公開されたPodcastはすべて今でも聴取することができる。
これは、クオリティにばらつきはあるものの、その番組がどれだけ魅力的な番組だったか、ということを伝える資産だったとも言える。
タマフルを例に取れば「シネマハスラー」「サタデーナイトラボ」というラジオ界にとって宝とも言える名物コーナーがある。
これは、題材を魅力的に語るエキスパートがたっぷり時間を掛けてトークするという、聞き流すには惜しい、毎回毎回が娯楽的かつ学術的に有益なアーカイブだった。
また、番組を進めていく上で、過去のPodcastを参考にすることでより理解を深めることができる構成にしていることも多く、こうした番組の楽しみ方はラジオ+インターネットという新しい楽しみ方を提示してくれた。
だからこそタマフルはおもしろいし、おいらもラジオがやめられないわけだ。
しかし、週末に激震が走った。
TBSラジオがサーバへの負荷軽減のために、過去のアーカイブについては最長で1ヶ月分だけを残し、それ以前のものを一斉に削除するという方針を発表した。
これがどういうことを意味するかというと、
(1)一定期間が経過したPodcastは聞くことができなくなる
(2)公式に過去のアーカイブが存在しなくなる
(3)過去のPodcastを前提とした番組構成ができなくなる
ということだ。
ニュース探究ラジオ Digなどは時事性が高いために現在でも1週間で配信終了になってしまうため、割とマメにチェックしているおいらもPodcastを取り損ねることがけっこうある。
1ヶ月あればなんとなかるか?とは思うものの、自動でダウンロードする仕組みを構築しておかないと、取り損ねる危険が高くなることを覚悟しなければならない。
いつでも聞くことできる安心感こそがインターネットのメリットだと思われていたが、これからはそうではなくなるということだ。
配信終了前にきちんとPodcastをダウンロードできるかの忠誠心を試されているようでもある。
(2)の影響も実は結構大きい。
ファイル共有ソフトやアップローダをチェックしていれば、番組のアーカイブを集めることは不可能ではない。
しかしこれはあくまでも非合法なやり方であって、すべての人で共有できる話ではない。
公式であるということは、非常に重要なことなわけだ。
(3)については、公式に過去の内容を参照できないとなると、番組の構成としても
「詳しくは過去のPodcastを参照してね」
という構成が取れなくなる。
必然的に、過去の話を要約して説明せざるを得ず、内容は薄くならざるを得ない。
参考文献を使わない論文のようなものであり、そこに知識の積み重ねは期待できない。
これらが結果として番組の質の低下を招くことは容易に想像がつく。
もちろんそうならないように番組スタッフも工夫するのだろうが、インターネット+ラジオという新しい楽しみ方からは後退せざるを得ない。
なぜこのようなことが起こったのだろうか?
不人気番組のPodcastの過去分を削除するのでなく、聴取率も好調な番組も一律で削除されるというのは、異常事態と言わざるを得ない。
本来であれば番組の魅力を伝えるために最優先で残すべき資産だと思っていたが、ここへきて急な方針転換は、恐らくTBSラジオという放送局の最終的な堤防が決壊したんだろうな、という印象を持った。
コスト削減はここを守れないほど緊急性が高かったのか、と。
(権利的な部分での決断だとしても、それはコスト削減の一環と考えられる)
聴取率は取れてもスポンサーが取れないという状況が長く続いていたが、それでも過去分のPodcastを残しておいたというのは、それが番組にとって資産であるという認識があったからだと思うし、そのことについては今までのTBSラジオに感謝している。過去のPodcastが参照できたからこそ、番組の楽しみ方の幅が広がったわけだから。
しかし、その資産を切り捨てるという判断が下されたということは、今後の可能性の芽を自ら摘んでしまう行為であり、TBSラジオという放送局が拡大路線を捨て、縮小路線の中で緩やかな死を待つという決断を下さざるを得なかったんだろう。
もし、サーバ維持費のだけの問題なのであれば、第三者による継続配信もしくはCampfireなんかで案件化してパトロン募ってもいいんじゃないの?と思う。
業務提携というのはこういうところで効果を発揮するのだから、一律で配信終了の前に、情報をオープンにしてあらゆる可能性を模索して欲しかった。
もちろん、復活の可能性はゼロではないだろうが、告知から1週間で一斉に削除するとかいう乱暴な告知からすると、現場があまり深く物事を考える余裕が無いであろうことは容易に想像がつく。
TBSホールディングスとしての業績が芳しくなく、その中でも収益への貢献が少ないTBSラジオに対する風当たりによって、良質な番組も影響を受けるという事態を招くことになる。
越えてはいけない一線を越えてしまったということで、TBSラジオひいてはAMラジオの瓦解は今後一気に進むことになるのではないか。
そして我々は、その後どこに楽しみを見つければいいのだろうか?
その受け皿になりえる媒体が見当たらない事が、事態をより一層深刻にさせている気がしないでもない。
長いので要点だけ先に書いておきます。
TBSラジオのPodcastで必要なものは月末までにダウンロードしておこう!
インターネット上に公開すれば、世界中の人々がいつでもどこからでもアクセスできる。
だから全ての情報をインターネットに集約しよう!
公開している元のサーバがサービスを止めれば、そこに存在していた情報はインターネット上から消失する。
聴取率で健闘を見せる安住紳一郎の日曜天国、JUNK、タマフル(ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル)、文化系トークラジオLifeなどのPodcastは、iTunesのPodcastランキングでも常に上位を占める人気コンテンツだったりする。
これは、クオリティにばらつきはあるものの、その番組がどれだけ魅力的な番組だったか、ということを伝える資産だったとも言える。
これは、題材を魅力的に語るエキスパートがたっぷり時間を掛けてトークするという、聞き流すには惜しい、毎回毎回が娯楽的かつ学術的に有益なアーカイブだった。
だからこそタマフルはおもしろいし、おいらもラジオがやめられないわけだ。
TBSラジオがサーバへの負荷軽減のために、過去のアーカイブについては最長で1ヶ月分だけを残し、それ以前のものを一斉に削除するという方針を発表した。
【お知らせ】
ポッドキャスティングの配信サービスのお知らせ
TBSラジオでは2013年2月1日(金)からサーバーへの負担軽減のため
(1)ニュース・時事性が高いコンテンツは、引き続き1週間で更新
(2)それ以外のコンテンツに関しては、原則的に1ヶ月で更新
というルールで運用してまいります。
(1)に該当するコンテンツは以下のものとなります。
たまむすび
森本毅郎スタンバイ!
荒川強啓 デイ・キャッチ!
ニュース探究ラジオ Dig
ザ・トップ5~リターンズ~
また、番組が終了した場合も1ヶ月で、配信サービスを停止いたします。
(2)公式に過去のアーカイブが存在しなくなる
(3)過去のPodcastを前提とした番組構成ができなくなる
ニュース探究ラジオ Digなどは時事性が高いために現在でも1週間で配信終了になってしまうため、割とマメにチェックしているおいらもPodcastを取り損ねることがけっこうある。
配信終了前にきちんとPodcastをダウンロードできるかの忠誠心を試されているようでもある。
ファイル共有ソフトやアップローダをチェックしていれば、番組のアーカイブを集めることは不可能ではない。
しかしこれはあくまでも非合法なやり方であって、すべての人で共有できる話ではない。
公式であるということは、非常に重要なことなわけだ。
必然的に、過去の話を要約して説明せざるを得ず、内容は薄くならざるを得ない。
参考文献を使わない論文のようなものであり、そこに知識の積み重ねは期待できない。
もちろんそうならないように番組スタッフも工夫するのだろうが、インターネット+ラジオという新しい楽しみ方からは後退せざるを得ない。
不人気番組のPodcastの過去分を削除するのでなく、聴取率も好調な番組も一律で削除されるというのは、異常事態と言わざるを得ない。
コスト削減はここを守れないほど緊急性が高かったのか、と。
(権利的な部分での決断だとしても、それはコスト削減の一環と考えられる)
業務提携というのはこういうところで効果を発揮するのだから、一律で配信終了の前に、情報をオープンにしてあらゆる可能性を模索して欲しかった。
その受け皿になりえる媒体が見当たらない事が、事態をより一層深刻にさせている気がしないでもない。
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