プレマシーが待望のSKYACTIV化

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マツダがラインナップを順次SKYACTIVの搭載を進めるというのは規定路線であり、デミオ、アクセラのマイナーチェンジで部分的にSKYACTIV TECHNOLOGYが搭載され、CX-5、アテンザにおいては全面的にネイティブSKYACTIV化されたわけですが、その中で取り残された感のあったミニバン2車種(プレマシーとMPV)について、SKYACTIV搭載のロードマップを早く提示したほうがいい、なんてことを書いたのは昨年1月の話でした。

とはいいつつ、プレマシーへのSKYACTIVエンジンの搭載はかなり難易度が高く、「具体的なメドが立ってない」なんて話をマツダの中の人に聞いたのは6月に開催されたクリーンディーゼル試乗会の時でした。

デミオと同様に排気管の取り回しが難しく、ひょっとしたらSKYACTIVエンジンを搭載できないまま次のモデルチェンジまで引っ張るかもしれない、なんて不吉な話も出てくる始末。


そんなこと言われると興味は薄れてしまい、追っかけるのをサボっていたらなんと突然プレマシーにSKYACTIV搭載、しかも1月中に発売なんてニュースが出ちゃいましたよ。
マツダ、日産に低燃費技術提供 収益改善へ初の供給
マツダは4日、独自の低燃費技術「スカイアクティブ」を日産自動車に提供することを明らかにした。スカイアクティブの他社提供は初めて。建設中のメキシコ工場では生産能力を年14万台から年23万台に高めて低燃費車を増産し、赤字経営からの脱却を急ぐ。
 山内孝社長が広島市内で開いた年頭会見で述べた。中型ミニバン「プレマシー」のエンジンと変速機にスカイアクティブを採用し、1月中に発売。日産にもこれまで同様、OEM(相手先ブランドによる生産)供給する。
 メキシコ工場は2014年初めに年14万台の態勢で稼働し、15年夏にはトヨタ自動車向けの5万台も生産する予定だった。新たな計画では、トヨタ車も含めた生産能力を15年度に23万台に高める。投資額は5億ドルから6億5千万ドル(約570億円)に増える。
上記のニュースはいくつかの要素が含まれてるので、プレマシーに限って話を進めます。

2010年にデビューした3代目プレマシーは、マツダが進めていたSKYACTIV TECHNOLOGY(この場合特にエンジンとトランスミッション)の搭載が間に合わず、既存技術のブラッシュアップという形でデビューしました。

プラットフォームなど2代目から流用した部分も多く、実質的にビッグマイナーチェンジであったため話題性が乏しく、当時のマツダのデザインフィロソフィーであった「NAGARE」と呼ばれる流線をサイドパネルに入れることで、デザイン上の話題性を作ろうとしました。
賛否両論あったわけですが。

そして、2012年4月より、日産のラフェスタ後継車としてOEM供給されるに至ったわけですが、日産向けにはサイドパネルに「NAGARE」は省かれることになりました。
このほうがデザイン的にすっきりしていて、プレマシーよりラフェスタのほうがいいじゃん的な評価が巷を駆け抜けたのは、ちょっとかわいそうでもありました。

余談ですが、この「NAGARE」は結局以降のマツダ車に採用されることはなく、3代目プレマシーだけに刻まれた刻印のようになっております。
マツダ内でもいろいろ議論があったんでしょうねぇ。


で、当然のことながらSKYACTIV化を順次進めていく中でプレマシーへの搭載も時間の問題と思われていましたが、デミオ、アクセラと採用されていく中で、なかなかプレマシーの話が出てきませんでした。

ダウンサイジングが進行しているとはいえ、ミニバンはあいかわらず一定の需要があるわけで、その中でもプレマシーは走行性能も比較的高く、コストパフォーマンスにも優れるマツダの稼ぎ頭であったわけです。
当然早い段階でSKYACTIV化されるものと思っていたら、2012年が終わってしまいました。

マイナーチェンジはモデルライフ中盤に行われるのが通例ですので、CX-5とアテンザの製造でいっぱいいっぱいのマツダはプレマシーのテコ入れを後回しにしたのかな?とも思ったわけです。

で、本当のところはどうなのよ?ってことで新春一発目のディーラー巡りとしてマツダに話を聞きに逝ってきました。
要点だけ先に書きます。

 ・プレマシーのマイナーチェンジ発表は1月24日
 ・待望のSKYACTIV化、ガソリンエンジン(以下SKY-G)、6速ATを搭載
 ・ディーゼル(以下SKY-D)は投入されません
 ・外装の変更はほとんど無し
 ・内装はダッシュボードに液晶を追加するなど小変更
 ・SKYACTIV以外の従来グレードも併売
 ・デリバリーは2月より開始

といった話でありました。
つまりデミオと同じように、SKYACTIVのグレードを追加するという意味合いのマイナーチェンジになるということです。


販売現場にはほとんど情報が降りてきておらず、昨年末からプレマシーの生産が急速に絞られていたのでまさか?と思ったら、どうやら年明けすぐにマイナーチェンジになる、という事実だけ伝えられたんだそうです。

一部のディーラーでは価格や装備がすでに判明しているところもあるようですが、今現在オーダーを受け付けられる状況にもなっておらず、ティザーマーケティングが一切行われない状況での発表になりそうだということです。

実質的に、上記のニュースですっぱ抜かれたのがティザーと言えるのかもしれません。
自動車媒体なども定点観測していましたが、今年の中頃にマイナーチェンジという話はあっても、年明けすぐに動きがあるなんて書いている媒体は見かけなかったので、マツダが情報を完全に隠していたか、裏でドタバタの事態が起こっていたのではないか?と思われます。

で、今回の場合は両方の可能性がある、と個人的には考えております。


最近のマツダは、国内発表などに関して現場に情報をあまり出さない方針のようで、3代目プレマシー発表の時もWEBに載ってる情報がきちんとディーラーに伝わっておらず、無用な混乱が起きていたりします。

あまり情報が出回ると、競合に対策の手を打たれてしまうこともあるので、トップシークレットにするのはわからないでもありません。

ただ、もうひとつ気になるのが、「SKYACTIV=ディーゼル(SKY-D)」という評価が付きすぎてしまい、ガソリンエンジン(SKY-G)の販売比率が下がっていることで、収支の面で問題になっているのでは?という懸念に行き着きます。

マツダとしてもSKY-Dがある程度売れることを見越してはいたでしょうが、まさかここまでSKY-Gが売れないとは想定していなかったと思います。

同時期に開発されたとはいえ、SKY-DとSKY-Gは別々の原価計算が存在するわけで、このままSKY-Gの販売が伸びないと、開発費の回収がままなりません。
そこで、SKY-Gの生産稼働率を高めるため、プレマシーのマイナーチェンジを大幅に前倒ししたのではないか?との推測が成り立ちます。

しかも、上記の記事によれば日産のラフェスタもSKYACTIV化されることになるようで、同時展開して台数を一気に立ち上げようという目論見が透けて見えます。
このスケジュールであれば3月末の年度末商戦にも間に合いますしね。

プレマシーは販売台数も多く、マツダの稼ぎ頭の一つなので、当然SKYACTIV化するのであればそれなりに事前のティザーキャンペーン(専用WEBページの開設や体験会を開いて記事を書かせることも含む)を張るのが通例なわけですが、今回の件については雑誌、WEB媒体含めて事前の情報がまったくと言っていいほど出てきておりません。
(年明けから順次掲載ということなのかもしれませんが、それでも発表までの準備期間が足りません)

マイナーチェンジの扱いではありますが、外装についてはほとんど手を入れないらしいこと。
また、ディーラーでの事前研修などもまだ行われていないこと。
このような状況を見る限り、マツダ内でかなりドタバタしながらリリースを早めたのではないか?と考えられるわけです。


個人的にはランニングチェンジのような今回のSKYACTIV化でも、楽しく走ることができて燃費が良いならば特に不満はありません。
むしろ、唯一と言っていい3代目プレマシーのネガティブ要因がなくなるわけですから、前倒しは歓迎です。

ただ、話をしてくれたディーラー営業マンが、新春初売りチラシを前に

「でも、現行プレマシー55万円引きとかやっちゃってるんで、なんかもういろいろ大変なんですよ・・・」

なんてつぶやいたのが妙に印象的でありました。
プレマシーがちょっと豪華装備を付けた軽自動車より安いとかいうのは、驚きや笑いを通り越してシュールすぎます・・・

そんなわけでSKYACTIV化されたプレマシーは、国産3列シート車の中でオススメできる一台なので、注目している人は2月にマツダディーラーに行ってみるといいですよ、なんてお話でした。
 

P.S.
発表に関しては1月25日って説明を受けた方もおられるようですね。
当方は24日と聞きましたが・・・いずれにしろこの両日のどちらかで発表になることは確定のようです。


この記事へのコメント

  • i-ryuji

    はじめまして。
    見解、とても参考になります。
    僕もアクセラSKYが出たとき、
    プレ、ビアン、MPの三種は搭載しないのかと聞きましたが、たまたま来ていた開発チーフの方が
    スペース的にそれは無理だといっていたので。今回のMCは営業の方にとって寝耳に水かと。
    それにCX-5もアテンザも大ヒットして、この二つだけでも需要に追い付かないのに、なんでまた車種を増やすのか不思議でした。
    SKY-Dでは収支の面が厳しいのですかね?
    Gが売れていないのは気にしていましたが、こちらは予想以上に売れていないとなると、再建も厳しくなるのか?
    株価か倍近くなっていますが、
    予想通りなら、暴落もあり得るかもしれませんね。
    2013年01月07日 04:17
  • 海鮮丼太郎

    SKY-Gが売れてないのではなくて、SKY-Dが売れすぎている、という意味あいが強いですね。

    三菱がかつてGDI一辺倒だったように、特定の技術に特化し過ぎると、潮目が変わった際に足元をすくわれることがあるということですね。

    ディーゼルも補助金終了で割高感は否めませんので、どこかのタイミングでSKY-GとSKY-Dの均衡が戻ってくるとは思いますが、あまり技術に詳しくない一般客がSKY-Gに興味を持たせられるかどうかがカギになるかと思っております。

    現状ですと、「SKYACTIV」と宣伝すると一般的にはディーゼルをイメージされてしまうことが懸念材料というわけですね。

    なお、プレマシーへのSKY-D搭載については、エンジンサイズが大きくて載せられないという問題と、上記のとおりSKY-Gの戦略的拡販のために3代目に関しては今後もありえないと見ております。
    2013年01月07日 09:52
  • i-ryuji

    客としては全ての車種にDを載せてほしいものですが、メーカーの事情で希望通りいかないのは残念ですね。

    Gの車種の売り上げを伸ばすには・・・
    HVとのドッキング。
    価格を引き下げる。
    G専用車の外観をもの凄くかっこう良くする。
    こんなとこですかね。
    このエンジンを他社にも供給する。

    なにより米国のsky搭載車がもっと売れてもらわないといけませんね。あそこはDの販売をしていないようなので。
    2013年01月08日 10:23

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