PSAとGMの提携内容ようやく決定

 
二転三転していたGMとPSAの業務提携内容がようやく決まったようで。

GM, PSA discard large car project; agree to develop small engine

当初は5つのプロジェクトを検討するといった話が、交渉が難航して結局のところ提携規模は当初より限定的なものになってしまいました。

表現がややこしくなるので、以下に定義しておきます。

 OPEL=OPELおよびVauxhallブランド
 PSA=PEUGEOTおよびCITROENブランド
 それ以外の場合は単独ブランド名で表記します。

大筋のところでは、以下の分野で共同開発を行います。

 (1)プジョーのコンパクトクロスオーバーとOPELのCセグメントMPV
 (2)PSAおよびOPEL双方のBセグメントMPV
 (3)PSAとOPELで共有する低CO2を見据えたBセグメントプラットフォーム
 (4)PSAの新型3気筒EBエンジンをベースとした新エンジンの開発

3月時点で公表されていた大型セダン(インシグニア、508、C5の後継)の共同開発、そしてDCTの共同開発という項目が消えました。
大型車を共通化すると、PSAかOPELのどちらかの工場の閉鎖を伴うことになり、政治的な対立を招きかねないという理由によるもののようです。DCTについては後述します。

代わりに(4)のEBをベースとした新エンジン開発という事業が立ち上がったのでPSAのリソースが活かせる形になりました。

部品調達の共有化によって年間20億ドルのコスト削減はすでに合意しており粛々と実行し、ラテンアメリカをはじめとした新興市場向けの取り組みについては継続的に検討を続けるとのことです。


個別に見ていくと、(1)は3008後継とザフィーラ後継の話になるようで。
(2)についてはOPELのメリーバ後継、PSAではC3ピカソ後継あたりのポジションの話になるかと思われます。
プジョーブランドに該当する車種が無いので、207swの後継という位置づけが考えられますが、これらの合意によって実際に発売されるまでには4年弱の期間を要するわけで、それまで208シリーズのボディラインナップはHBとクロスオーバーSUVの2008だけで展開していくのか?という疑問もあったりするわけです。
さて、どうなりますやら。

(3)については、2019年に施行される新たな環境基準であるEURO7に対応するBセグメントのプラットフォーム開発を共同で開発することになり、投入されるリソースとしてはここが一番大きくなるんじゃないでしょうかね。
最量販車種のベースになるので、この開発に失敗すると両社とも後がなくなりますので。

新たに合意した(4)については、GMとしても小型の環境対応エンジン開発が重荷になっていることもあり、PSAの技術を使って安く調達できればメリットになり得ると判断したのでしょう。

EBエンジンは素性は悪くないので、うまく展開していくことでPSAに利益をもたらしてくれるものと思われます。


で、最後にやっぱり気になるのが、DCT(Dual Clutch Transmission)の行く末です。
PSAのDCTに関する紆余曲折は・・・

 ・PSAは独自にDCTを開発
      ↓
 ・GMとの共有化を検討するためプロジェクトが中断
      ↓
 ・PSAがAMTをやめ、新型トランスミッションを次期308から採用

流れとしてはこんな状況になっており、DCTのプロジェクトがいったいどうなってしまったのか、真相がよくわかりません。

AMTをやめて新型トランスミッションを次期308から投入するというのはいいとして、開発パートナーにアイシンの名前があったことが事態をいっそうややこしくしています。

PSAが開発していたDCTでは、GMが要求する高トルクに対応できないのではないかと当初から言われていたので、今回の発表に含まれなかったということは、GMとの共同開発の話はなくなったと判断していいと思われます。

そうすると懸念していたとおり、プロジェクトが凍結されていたこの9ヶ月間がまるまるムダになってしまったことになります。

さて、この先どうなるのか?
普通に考えれば、ほぼ完成しているDCTユニットを仕上げて来年後半に発売する次期308に搭載すると考えるのが自然ではあります。
しかし、コスト削減が最優先課題であるPSAの状況を考えると、DCTプロジェクトをあっさり切り捨てて、従来どおりの外部調達で済ますという判断をしないとも限りません。
開発が不十分な段階で市場にDCTを投入してトラブルになったりでもすると、莫大な対策費を追加で投じなければならなくなるリスクもあるわけなので。

このリスクを避けて外部調達で済ますとなると、アイシンAWから継続して調達することになるんでしょうが、パフォーマンス改善にどれだけ期待ができるのかが未知数ではあります。

いずれにしても、自動変速トランスミッションはPSAの最大のボトルネックになっているので、ここの判断を間違わないで欲しいものです。
 
 

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