世の中にはプロモーションしにくい商品というものがあって、タイヤなんていうのはその典型例のようなものだ。
まず消耗品であるということ。
加えて使用目的が単一であり、技術革新によって新たな用途が生まれにくいということ。
どの商品を選んでも一定の品質を保っているので性能差がわかりにくいこと。
これらの要因から、そもそも一般消費者の興味が極めて低く、その商品力をアピールして購入に結びつけさせるのはなかなか難しい。
似たような性格の商品として電池が挙げられるが、旧SANYOのENELOOPのような技術革新が起こったことにより注目度が高まり、そこでカラーバリエーション展開やモバイルブースターなどニーズに合わせた多品種の製品として昇華させることで新たな市場を作ることに成功した事例もある。
もうひとつ例を出すとすると電球だ。
白熱灯の生産停止というニュースとLEDの台頭によって、大きなパラダイムシフトが起こっている。
使用目的は単一であっても、何かしらブレイクのきっかけを掴むことはありえる、ということだ。
とはいえ、タイヤに関しては本来の使用目的が路面をしっかりグリップして走るという単一の用途から発展のしようが無く、本来は安全性が商品力として認知されなければいけないところだが、一部の粗悪品を除いては一定の品質を確保していることから商品力の差を客観的に把握するのが難しい。
そのため、一般消費者のタイヤ選びはなんとなく店頭の価格や聞いたことのある銘柄を選ぶ傾向が強まっている。
交換するなら4本同時が原則であり、しかも消耗品ということもあって、消費者の志向はどちらかといえば安いものへと流れている。
カー用品店の店頭には国産メーカーのブランドタイヤと並んで、ショップブランドのアジア系メーカーの格安タイヤが並んでおり、特にタイヤの安全性に興味の無い消費者は安いほうを好んで買っていく。
結果として国産メーカーのタイヤの売り上げは、アジア系の格安タイヤにジワジワと侵食されているという現実がある。
最近ネットでよく見かける
AUTOWAY LOOPなど通販業者の台頭も、こうした傾向を加速させていたりする。
国沢光宏が指摘していたが、有力な広告主でもあるタイヤメーカーがクルマ雑誌に性能比較の記事を書かせないという状況が、日本の消費者にタイヤの重要性を認識させる機会を失わせており、これが結果として
「どれも同じようなものだから安いほうを買う」という消費マインドを加速させることになる。
つまり自分で自分の首を絞めている、と。
国沢光宏の発言の中では唯一賛同するところだ。
低燃費タイヤも、タイヤ価格を燃費向上分で取り戻すより、国産の半額以下のアジア系格安タイヤで運用したほうが実は安上がりなんてこともあったりして、一時期のブームは終了した感もある。
で、本日の本題。
何か状況が変わったかというとそうでもなくて、タイヤメーカーは性能をアピールすることを諦め、イメージと認知度の向上という一点突破のプロモーションに突き進んでいる。
TAIYA CAFE タイヤカフェ

「タイヤのカフェだから“TIRE CAFE”だろ!」
なんて無粋なツッコミは相手の思う壺。
ここで考察すべきは、なぜこのネーミングになったのか?というところ。
このプロモーションの目的は、
タイヤに興味のない消費者にブリヂストンというブランドの認知度を高めること。
つまり
TIREをタイヤと読めないような連中の興味を喚起したいということだ。
タイヤを性能でアピールするCMでは売れないから、イメージを良くしてなんとなく選んでもらえるようにしよう、という発想の転換。
コモディティ化ここに極まれり。
クリスマスには原宿で
リアルTAIYA CAFEをオープンするそうだが、原宿に出てくるような郊外の子たちが、タイヤのメーカーやブランドに興味があるわけもないので、とりあえずなんかおもしろそうなことをやって“ブリヂストン”というメーカーの名前だけでも覚えてもらえばそれでオッケー、みたいな空気を感じる。
興味が無い相手に合わせてプロモーションのやり方を変えるという発想自体は否定しないものの、こうしたことがさらにタイヤへの興味を失わせることになる。
現状の歯止めにはなるかもしれないが、この先ブリヂストンはどうやって市場を伸ばしていくつもりなんだろうか?
言うまでもないが、タイヤ選びはクルマの制動力という安全性、ひいては命に関わる重要な選択であるはずなのだが、タイヤの違いがどれほど安全性に差が出るのかを知る機会はほとんど無いわけで、そうすると消費者は安い方を選ぶという行動に出る。その結果として価格競争に突入せざるを得ない状況になる。
ブリヂストンは
「タイヤセーフティドライビングレッスン」というすばらしい啓発活動を行ってはいるものの、残念ながらこれをすべての消費者に体験させることはできない。
興味の無い層へリーチするためにイメージアップを図る方法は根本的な解決にはならないので、結局のところは格安だが性能の劣るタイヤとの比較広告で優位性をアピールするぐらいしか方法はない。
それも、かなりドギツイ映像にしないと。
結局のところ、それをやる勇気があるかどうかなのだろうな、と思った次第也。
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