208が発表された。
10月発表と聞いていたが、9月20日という、奇しくもVWがUP!を149万円で発売すると発表して大騒ぎになってから2日しか経っていない。
そしてその発表内容について、おいらは「バカじゃね~の?」とコメントした。
その理由について書いておこう。
まず、208というクルマについてポジティブ要素とネガティブ要素を挙げてみる。
■208のポジティブ要素
・207に比べて軽量、かつコンパクトになった
・居住性が向上している
・全体の質感が大幅に向上した
・タッチ式インフォメーションディスプレイ
・MT仕様が最初から2車種ラインナップされた
・(3ドアMTのみ)に新型3気筒エンジンが用意された
・EURO NCAPで5つ星を獲得した高い安全性
・クルーズコントロール等快適装備が標準搭載
・208GTiを2013年夏に導入予定
・ATモデルも2013年夏に1.2L新型3気筒エンジンに換装予定
■208のネガティブ要素
・全般的に価格が高い
・ATモデルには素の廉価グレードが用意されていない
・旧式の4速AT(AL4)を使い続けている
・主力が新型3気筒エンジンではなく従来の1.6Lである
・ATで13.4km/Lと、競合に比べて明らかに悪い
・エコカー減税に対応できていない
・タッチ式ディスプレイの機能が中途半端(ナビが無いなど)
・最小回転半径5.4mと、Bセグメントの割りに取り回し難い
・1年後に商品力が大幅にアップすることが公にされている
こうしてみると、ネガティブ要素はそれほど多くない。
つまり、208は素性としては非常に良いクルマという事ができる。
ただし、少ないネガティブ要因のひとつひとつの影響が大きいというのが今回のプレス発表を見ての印象だ。
まず、全般的に価格が高い。
これは、タッチ式ディスプレイやクルーズコントロールを搭載するなど、プレミアム路線を強化させたことと関係があるだろうが、Bセグメントの大衆車にここまでの装備がいるだろうか?というのが個人的な感想だ。
とはいえ、207発表時のようにPremiumとは名ばかりの装備に比べれば、208はグレード名と装備内容の充実度はマッチしているようには思えるのだが。
しかしそれでも、売れ筋となるAT仕様のスタート価格が216万円~というのは、せっかくの商品力をアピールするにはインパクトが弱い。
プジョーは大衆車メーカーであり、国産車+αのお金を出せば手が届くというポジションを日本の消費者は求めている。
ここのニーズに対する答えを用意しておかなければ、せっかくの商品も消費者には響かない。
いいものを高く売るのは簡単だ。
しかしそれは、きちんとブランドや商品力が認知されている場合に限られる。
プジョーのように販売台数が減少して打つ手がない状況を一変させるには、商品に話題性を持たせることが重要だ。
たとえば、ディーゼル仕様。
たとえば、1.2Lターボ+Dual Clutch Transmission。
たとえば、燃費が25km/L。
これぐらいの話題性があるのならば、216万円という価格設定でも話題性を持たせることができたかもしれない。
残念ながら、208の初期導入ラインナップは207にも搭載された1.6L NAエンジンのキャリーオーバーで、なおかつ悪評高いAL4にせざるを得なかった。
燃費も競合車が20km/Lに届こうかという状況にもかかわらずJC08モードで13.4km/Lという残念な結果になっている。
つまり、快適装備を充実しても、クルマとしての根本部分に魅力が薄いため、過剰な印象を受けてしまうのだ。
(事実、過剰と言ってもいいだろう)
ここで残念に思うのが、だったら何故Premiumの下に廉価グレードを用意できなかったのか?ということだ。
下位から上位まで、一度にすべてのグレードを展開する必要は無いのだが、しかし一番注目を集める初期ラインナップにおいて、廉価グレードの果たす役割は重要だ。
その廉価グレードの重要性は当BLOGでも何度も指摘してきた。
消費者の興味を惹くため、また検討のテーブルに載せてもらうために、どれだけ魅力的な見せ球を用意するか。
少なくともクルーズコントロールやアロイホイールなどをオプション扱いとして、180万円台の設定が出来ていれば、トータルバランスで非常に競争力のある1台として話題を作ることが出来たと思う。
今のプジョーに必要なことは、影が薄くなっている輸入車の中で存在感を発揮することだ。
燃費、走行性能、スペック、価格。
いずれも高い次元でトータルバランスの優れる競合車であるVWのポロを意識した価格設定をしているようだが、燃費、スペックで劣る部分を価格でカバーするという方法論も、トータルバランスという観点からは重要だ。
そして、市場がプジョーに求めているのもこの部分だ。
つまり、
廉価グレード(MT) 178万
廉価グレード(AT) 188万
208 Allure 188万
208 Premium 198万
208 Cielo 218万
208 GT 228万
欧州での販売価格、為替予約のレートならびに日本への導入に対するエクストラコストを勘案しても、これぐらいは実現できたはずだ。
こうしたグレード展開にしておけば、スタートダッシュで大きな話題づくりをすることができ、さらに来年追加されるトップグレードのGTiを250万でリリースすれば、208シリーズは日本の輸入コンパクト車市場で抜群の存在感を発揮できるじゃないか。
ひとつハッキリさせておかなければならないのは、価格を大幅にアップさせてスタートから躓いた207の販売は、廉価グレード投入と値下げによって販売が回復したという事実がある。ここからプジョーは何も学ばなかったのだろうか?
何故これほどまでに208の価格にこだわるのか。
それは、プジョーのラインナップの中でエントリー車種となる208の価格設定が、そこから上のヒエラルキー(階層)全体に影響を及ぼすからだ。
208の上には308があり、3008、(来春に投入される)5008という亜流があって、トップグレードの508と言う構成になっている。
しかし、現在のプジョー車は全般的に性能が低い割に価格が高い。
割引キャンペーンなどでテコ入れするものの、標準価格だけを見られて検討のテーブルから外される事も多い。
しかし、日本の過剰なエコカー信仰に対するカウンターとして、走りの優れた輸入車に対する期待とニーズは高まりつつある。
恐らくこの高まりは最初で最後の機会だと思われる。
ここで本気にならないでどうする?
プジョーブランド全体を再構築するためには、ダイナミックな価格体系の見直しが重要だ。
そして、利幅は薄いが入口として最も重要なエントリー車種の価格がブランドイメージを決定付ける。
VWがUP!を150万円を切る価格で投入してきたのは、日本市場を本格的に攻略するために本気を出した証だ。
(とは言いつつ、原価も安いので利幅は十分確保しているが)
上記したように、今の日本市場は輸入車にとって大きなチャンスだ。
VWは動いた。
フォードもフォーカスの再導入を決めた。
ルノーも着々と準備を進めている。
このチャンスをモノにするために攻める姿勢(覚悟)を決められるか?
残念ながら、プジョーはこのチャンスに対して自ら戦いを降りたと感じた。
売れるものを無理せず売っていく。
そんな決断が今回の208の発表に見え隠れする。
消費者もバカではないので、その辺は敏感に感じ取っている。
ルノーの好調や、シトロエンの勢いに客は流れつつあり、フレンチ3の勢力図はプジョーダントツから3社拮抗していくようになるだろう。
PCJとしてはシトロエンが伸びてくれればトータルとして問題ないと考えているフシがあるが、プジョーブランドを立て直す決断が出来なかったことは、今後もジワジワと効いてくることになる。
来年の3気筒1.2Lエンジン刷新のタイミングでもう一度だけこの路線を修正するチャンスがある。
この際に商品のトータルバランスを改善できるか。
すでに興味は薄れつつあるが、うぉちは続けていこうかと思う。
・タッチ式ディスプレイの機能が中途半端(ナビが無いなど)
・最小回転半径5.4mと、Bセグメントの割りに取り回し難い
・1年後に商品力が大幅にアップすることが公にされている
こうしてみると、ネガティブ要素はそれほど多くない。
つまり、208は素性としては非常に良いクルマという事ができる。
ただし、少ないネガティブ要因のひとつひとつの影響が大きいというのが今回のプレス発表を見ての印象だ。
まず、全般的に価格が高い。
これは、タッチ式ディスプレイやクルーズコントロールを搭載するなど、プレミアム路線を強化させたことと関係があるだろうが、Bセグメントの大衆車にここまでの装備がいるだろうか?というのが個人的な感想だ。
とはいえ、207発表時のようにPremiumとは名ばかりの装備に比べれば、208はグレード名と装備内容の充実度はマッチしているようには思えるのだが。
しかしそれでも、売れ筋となるAT仕様のスタート価格が216万円~というのは、せっかくの商品力をアピールするにはインパクトが弱い。
プジョーは大衆車メーカーであり、国産車+αのお金を出せば手が届くというポジションを日本の消費者は求めている。
ここのニーズに対する答えを用意しておかなければ、せっかくの商品も消費者には響かない。
いいものを高く売るのは簡単だ。
しかしそれは、きちんとブランドや商品力が認知されている場合に限られる。
プジョーのように販売台数が減少して打つ手がない状況を一変させるには、商品に話題性を持たせることが重要だ。
たとえば、ディーゼル仕様。
たとえば、1.2Lターボ+Dual Clutch Transmission。
たとえば、燃費が25km/L。
これぐらいの話題性があるのならば、216万円という価格設定でも話題性を持たせることができたかもしれない。
残念ながら、208の初期導入ラインナップは207にも搭載された1.6L NAエンジンのキャリーオーバーで、なおかつ悪評高いAL4にせざるを得なかった。
燃費も競合車が20km/Lに届こうかという状況にもかかわらずJC08モードで13.4km/Lという残念な結果になっている。
つまり、快適装備を充実しても、クルマとしての根本部分に魅力が薄いため、過剰な印象を受けてしまうのだ。
(事実、過剰と言ってもいいだろう)
ここで残念に思うのが、だったら何故Premiumの下に廉価グレードを用意できなかったのか?ということだ。
下位から上位まで、一度にすべてのグレードを展開する必要は無いのだが、しかし一番注目を集める初期ラインナップにおいて、廉価グレードの果たす役割は重要だ。
その廉価グレードの重要性は当BLOGでも何度も指摘してきた。
消費者の興味を惹くため、また検討のテーブルに載せてもらうために、どれだけ魅力的な見せ球を用意するか。
少なくともクルーズコントロールやアロイホイールなどをオプション扱いとして、180万円台の設定が出来ていれば、トータルバランスで非常に競争力のある1台として話題を作ることが出来たと思う。
今のプジョーに必要なことは、影が薄くなっている輸入車の中で存在感を発揮することだ。
燃費、走行性能、スペック、価格。
いずれも高い次元でトータルバランスの優れる競合車であるVWのポロを意識した価格設定をしているようだが、燃費、スペックで劣る部分を価格でカバーするという方法論も、トータルバランスという観点からは重要だ。
そして、市場がプジョーに求めているのもこの部分だ。
つまり、
廉価グレード(MT) 178万
廉価グレード(AT) 188万
208 Allure 188万
208 Premium 198万
208 Cielo 218万
208 GT 228万
欧州での販売価格、為替予約のレートならびに日本への導入に対するエクストラコストを勘案しても、これぐらいは実現できたはずだ。
こうしたグレード展開にしておけば、スタートダッシュで大きな話題づくりをすることができ、さらに来年追加されるトップグレードのGTiを250万でリリースすれば、208シリーズは日本の輸入コンパクト車市場で抜群の存在感を発揮できるじゃないか。
ひとつハッキリさせておかなければならないのは、価格を大幅にアップさせてスタートから躓いた207の販売は、廉価グレード投入と値下げによって販売が回復したという事実がある。ここからプジョーは何も学ばなかったのだろうか?
何故これほどまでに208の価格にこだわるのか。
それは、プジョーのラインナップの中でエントリー車種となる208の価格設定が、そこから上のヒエラルキー(階層)全体に影響を及ぼすからだ。
208の上には308があり、3008、(来春に投入される)5008という亜流があって、トップグレードの508と言う構成になっている。
しかし、現在のプジョー車は全般的に性能が低い割に価格が高い。
割引キャンペーンなどでテコ入れするものの、標準価格だけを見られて検討のテーブルから外される事も多い。
しかし、日本の過剰なエコカー信仰に対するカウンターとして、走りの優れた輸入車に対する期待とニーズは高まりつつある。
恐らくこの高まりは最初で最後の機会だと思われる。
ここで本気にならないでどうする?
プジョーブランド全体を再構築するためには、ダイナミックな価格体系の見直しが重要だ。
そして、利幅は薄いが入口として最も重要なエントリー車種の価格がブランドイメージを決定付ける。
VWがUP!を150万円を切る価格で投入してきたのは、日本市場を本格的に攻略するために本気を出した証だ。
(とは言いつつ、原価も安いので利幅は十分確保しているが)
上記したように、今の日本市場は輸入車にとって大きなチャンスだ。
VWは動いた。
フォードもフォーカスの再導入を決めた。
ルノーも着々と準備を進めている。
このチャンスをモノにするために攻める姿勢(覚悟)を決められるか?
残念ながら、プジョーはこのチャンスに対して自ら戦いを降りたと感じた。
売れるものを無理せず売っていく。
そんな決断が今回の208の発表に見え隠れする。
消費者もバカではないので、その辺は敏感に感じ取っている。
ルノーの好調や、シトロエンの勢いに客は流れつつあり、フレンチ3の勢力図はプジョーダントツから3社拮抗していくようになるだろう。
PCJとしてはシトロエンが伸びてくれればトータルとして問題ないと考えているフシがあるが、プジョーブランドを立て直す決断が出来なかったことは、今後もジワジワと効いてくることになる。
来年の3気筒1.2Lエンジン刷新のタイミングでもう一度だけこの路線を修正するチャンスがある。
この際に商品のトータルバランスを改善できるか。
すでに興味は薄れつつあるが、うぉちは続けていこうかと思う。
この記事へのコメント
smtk
ようたか
個人的にはMTでもいいから廉価グレードを発売して欲しかったです。
プジョージャポンのFacebookページにも批判のコメントが多いですね。新車発表だというのに珍しいのではないでしょうか。
これで考えなかったらプジョーさんともおさらばですね。
IGARYU
いつも楽しく拝読しております。
次に乗り換えるプジョーを探し続けていますが、今回の208は見送り決定ですね。最悪でも6速ATにしてくれないと、候補になり得ません。
307SWろーらんぎゃろす8年目
2013年モデルに期待します。
dkura
怪しまれない程度に車を覗き込んでいるのですが,未だにレンタカーを含めラテン車でATは本当に皆無,1台も見つけられていません.フランス・イタリアの人にとってATは「ウェルキャブ仕様」みたいな,遠い存在のようです.
斎藤
4ATは古い。秋に導入される1.2LのRMTも万人受けされにくい。選択肢が少ないプジョーは、マニアの為の外車メーカーを脱してないですね。
救いは、自分の住んでいる、地元のディラーのサービスが他の外車メーカーのディラーに比べて、良い事だけです。
海鮮丼太郎
そんなわけで今更ですがレスしておきます。
>ようたかさん
状況は少し変わってきましたが、販売が好調という話はあまり聞きませんね。
プジョーとしてもソーシャルメディアの活用を進めたいようですが、コメントに対してレスを返さないとか、一方通行のやり方は相変わらずのようですね。
以前PCJの人に直接話を聞いた感じでは、国内戦略についてはPSA本社の意向がまだまだ強いらしく、上野新体制になってもあまり状況が好転してない印象を受けました。
さて、どうなりますやら。
>IGARYUさん
買い換えるとすれば、やはりネガティブな点が改善されてなければ意味が無いと考えるのは普通ですよね。
ダウンサイジングするとしても、競合と比べれ明泣き見劣りする部分があるのでは、積極的に選ぶ理由が見出せないのも当然だと思います。
他のエントリーに書いたとおり、シングルクラッチのEGCが初秋に導入されることになるようですが、こちらもクセがありすぎますから・・・
>307SWろーらんぎゃろす8年目さん
Styleの導入は少し遅れてというのが従来からの戦略だったわけですが、初期ラインナップが中途半端だと途中のカンフル剤として機能しない可能性がありますね。
なんにしても価格だよなぁ、とか思うわけです。
>dkuraさん
貴重なイタリアの情報ありがとうございます。
欧州でのAT比率が上がらないのは、必要ないからというシンプルな理由なんでしょうね。
とはいえ、中国など新興国でのATの重要性を考えると、今まで放置してきた影響があまりに大きいと思います。
次期308から搭載される新型トランスミッションに期待したいところですが・・・
ひょっとすると、そのユニットが208にも載る可能性がありますので。
>斎藤さん
マニアのために外車メーカーというポジションを狙うとしたら、それはそれでひとつの戦略としてアリだと思うのですが、今そのポジションにいるのは明らかにルノーですよね。
マニア向けを拡大させたいのなら、商品展開だけじゃなくて試乗イベント的なものを開催するなどして、マニアに向けてのアピールが必要だと思いますが、プジョーは伝統的にそういうことをやらないんですよねぇ・・・
でも、相性のいいディーラーとのお付き合いがあるのはいいことですね。
そういうところの安心感というのは、商品力とはまた違った部分で魅力になると思います。